第66話 ブルーエターナルの一幕

 捕まえたチンピラ達を、ルナ・フェルムのお巡りさん、警備部の人達に引き渡した。彼らが行った犯罪行為、孤児院一帯での略奪行為などは生きていた監視装置の記録を、マヒロとファルコンが拾って来たので、それを証拠として提出したのできっちり処分を下されるだろう。犯罪奴隷落ちで過酷な開発惑星での強制重労働になるんだとか。果てしなく自業自得だよねぇ。


 もう一方、元ギルドメンバー達の処遇。ファラが宣言した通り、ロドム兄貴をボコスカした奴から記憶を、それをちゃんとした書式として落とし込んだ物を用意。それを手土産にルナ・フェルムのネットワークギルド支部へ全員引き渡した。いやぁ、支部のギルドマスターが物凄く素敵な笑顔でデータパレットを読んでいたのは、俺でも肝が冷える位に迫力あったわ。別れ際に言われた、命は有効に使用させていただく、って一言も怖かった。


 んで今、俺達はちょいささくれ立った気分をなだめる為に、マリオン所有のドッグ艦ブルーエターナルでグダグダしている最中だ。


 巡洋艦レベルの船体を持っている船だからね。それ相応に船内も大きいし、戦闘を目的としてない支援目的の船だから、積載する区画ユニットなんかもラグジュアリーな感じの物が多く、リラックスするならオールドシルバーよりもこっちかな、という事でお邪魔させてもらっている。


 まあ、オールドシルバーの簡易医療ユニットでは対応出来ないレベルの重傷者がいて、ブルーエターナルの本格的医療再生ポットが必要だった理由もあるんだけども。特にロドム兄貴の兄弟分の二人、レイジ君とアベル君は酷く、眼球損失に全部の歯が強制抜歯、両手両足の完全粉砕骨折と、あの状態でサイコパス野郎に抵抗してたってんだから大したものだよ。精神に後遺症が残らないよう、彼らには第四種の強化調整を施す必要もあるからね、ブルーエターナルを呼んで正解だったよ本当。


「あ、あの、ほ、本当に、あ、あの、だ、だ、だだ大丈夫なの、です、いえ、大丈夫でごじゃりますか?」

「ぷっ?!」

「ああぁぁぁぁぁっ!」

「いやいや、そんなガッチガチに緊張しなくても」

「旦那様、てかアンタ、この宇宙での王族、しかも旧い王族に認められた王ってのの権威ってのを、そろそろ理解したら?」

「いやぁ、だってファラそうだけど、ゼフィーナとかリズミラだってお姫様ってより、どっちかつーと武将じゃん? 将軍気質じゃん? どうにもなぁ?」

「……悪かったわね可愛げがなくて」

「いやいや、気楽って意味では最上よ? マイワイフ」


 顔を真っ赤に染めてあわあわ妙な踊りをしている目の前の少女ミィちゃん。憮然とした表情でそっぽを向き、俺に頭を撫でられて口を必死にムニムニしながら真一文字に結ぼうと努力している妻ファラ。その様子に対抗するよう頭を突き出して撫でろと要求してくる妻シェルファ。そして膝の上には、酷くお冠なご様子の娘ルルと、なんか酷く混沌とした絵面がそこにある。


「まぁ、うちはご覧の通り、アットホームな家族なんでな。俺が新興国の王だとか、嫁が妃であるだとか、そういうのはプライベートでは気にする必要がねぇよ?」

「そ、そうはいっちぇも……いっても、ファリアスの巫女様がいらっしゃるので、む、無理」

「だってさ巫女さん」

「あたしゃもう処女じゃねぇから巫女じゃねぇし」

「ぶふっ!?」

「お前なぁ、純真無垢な少女の前でオヤジみたいな事を」


 完全にふて腐れてしまった嫁に苦笑を浮かべていると、フランをベッタリ胸に張り付け、ちょっと困った表情を浮かべたロドム兄貴が、あの時に彼を応急処置したアプレンティスの少女、確か名前はレミィだったか、に案内されて向かってくる。


 フランちゃんはもうすっかりロドム君ラブで、どうやら守られていた時の事をうっすら聞いていたらしく、兄というよりかは男として絶対ゲットだぜ! という確固たる意志を感じる様子でベッタリ。レミィもちょっと気になっているのか、時間を見つけては他愛ない話をして笑ってる姿を良く見かける。いやぁ、青春だねぇ。


「タ、タツロー兄ちゃん。い、院長おばあちゃん、み、見つかった?」

「まだ見つからない。ただなぁ、どうも捕まったって感じよりかは、捕まったように見せかけて自分から隠れた、って感じがするんだわ」

「……お、おで達、み、見捨て――」

「大丈夫、それは絶対にありませんよ」

「ぐふっ?!」


 俺の言い方が悪く、変な勘違いをさせてしまいそうになって、スマートにシェルファがフォローしてくれたが、その瞬間に凄く絶妙な角度と速度で脇っ腹に肘鉄が打ち込まれた。ねーちゃん、いいもん持ってるじゃねぇか。


「院長さんも予想外だったのでしょう。憶測が入りますが、第三層の扉が開いてしまったのも、それで変な奴らが沸き出したのも、彼女にとって予想外だったはずです」

「……ん? ちょい待ち。第三層を院長のおばあちゃんが開いた?」

「ええ」

「聞いてないよ?!」

「今言いましたから」


 どうしよう、何だかシェルファちゃんが変な方向にクールキャラになっていく。出会った当初の君は、こう、もっと初々しい感じだったじゃないか?


「タツローが抜けてるっていうのを理解したら、どうしても締める部分は締めないといけないんです。ファラはムードメーカーですし、ゼフィーナは真面目、リズミラは天然、となると私位しか担えない部分でして。正直、貧乏くじ引いたと思ってます」

「だから、俺の考えを読まないで?!」

「とても可愛いですよ? ダーリン」


 どうしよう、頭上を埋め尽くす魅力的な美尻が、時間経過する毎に増加していく気がしてならない。


「話を戻しますが、マヒロとファルコンのお陰で、あの一帯の監視装置をサルベージできました。その兼ね合いで、色々な情報をゲット出来まして、それが院長による第三層の扉解放。もっと言うなら、彼女、ミツコシヤのおばあちゃんの血縁ではないかと疑ってます」

「はぁ?!」

「あまりに外見がそっくりなんです。彼女が飴のおばあちゃんの娘だと言っても納得しちゃうレベルで」

「……おいおい」


 義理の息子の話じゃ、殺されたって言ってたよなぁ。あー、そっち方面の確認はしてないなぁ。そっちの確認もするべきだなこりゃぁ。


「最後に残された映像を見る限りでは、こちらから下手な介入をするより、安全な場所にいると思われますから、ロドム君は心配しなくて大丈夫ですよ」

「ほ、本当?」

「ええ、貴方の宇宙一の兄と同じ位、信じてくれて大丈夫ですよ」

「そ、そうか……そうなんだ……よ、良かったぁ」


 ポロポロ大粒の涙を流し喜ぶロドム兄貴。その兄貴の涙をせっせと拭いてるレミィ。背中をポンポン叩いてなだめるフラン。うーん、ブゥルゥースゥメェールゥ。


「あ、あの。それでは、あ、あたし達は、そ、その、も、戻った方が?」

「ガキが遠慮してんじゃないわよ。そこはもっと図々しく、こっちの面倒見ろ、大人の責任だろ、位言いなさい」

「ファラ……言い方ってものがありますでしょうに」

「安心していいよ。院長が見つかるまで、つーか、彼女がきっと色々と知ってるんだろうから是非にだけど、ここに居てもらうよ。それに是非、ロドム兄貴とレイジ君アベル君はスカウトしたい」


 俺の言葉にロドム兄貴はポカンとした表情を浮かべ、ミィちゃんは不思議そうな顔をする。


 ふっふっふっふっ、アフガンハウンドのちゃんねーには悪いが、こっちの孤児院の子達は凄い。結構、高度な教育を受けているのか、アプレンティスの子達には劣るけれど、しっかり教育すれば将来大化けする事間違いない人材だ。ま、飢え死にされても困るから、食料の件はどうにかするけど。


「とりあえず、情報を集めよう。なんか、それを怠ると、色々大変な事になりそうだしな」

「ええ、そうですね。気をつけて慎重に立ち回りましょう」


 今後の方針をさっくりと決定し、その後はルルを構い倒したり、嫁さん達といちゃこらしたりして過ごすのであった。


 うーん、天国。

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