第51話 お前に足りたいもの(中略)そして何よりも! 人が足りない!
無限に、そう無限にどこまでもやってくるんだ。ふ、とんでもねぇ、この恐れを知らない俺が震えているぜ。何て強力なプレッシャーを出しやがる! もしかしたら、俺はこのままここで朽ち果てるかもしれない。く、仲間達との再開を果たさず、こんな場所で無様に消えちまうのか……ちくしょう……
「遊んでないで仕事しろ。こっちも忙しいんだから」
「アッハイ、スイマセン」
ずんずんと積み上がっていく書類書類書類。物理的に見たくないからデータに圧縮して一括しね? と言ったら、絶対に処理しきれなくなって破綻するからダメ、と言われてしまい、この絶望的な戦いに身を投じているんだが。
「メイドに騙されて、国なんか作るんじゃなかった……」
「これはこっちも想定外ですの! なんですの?! このふざけた仕事しくさった野郎どもはっ!」
ライジグス誕生!
良かったね!
問題起こした馬鹿、アリアンちゃん帝国へ連行! これでスッキリ!
よーし! とりあえず国としての体制を整えて色々やらないとね!
デロデロデロデーロン、公社が貯めまくっていた色々な負の遺産が現れた! ← 今ここ。
「本国でも、ここまでの書類仕事は記憶にないなぁ」
「それはそうですよー。全部、わ・た・く・しが処理してましたしー」
「……シェ、シェルファ、そっちの書類を取ってもらえるか?」
「はーい、どうぞ」
国王自ら、お妃様総動員、見習いとかいってられっかーでシスターズボーイズ総動員。これで既に五徹してるのに、減るどころか増えるというバグ。いい加減、あたたかいフートンで眠りたいんだが……
「これはあれですね。先に人を増やさないと解決できませんよ? マイロード」
「んあ? どういう事よ?」
一緒に仕事をしていたマヒロが、小首を傾げてそんな事を言い出す。
「これ、マイロードが所有しているコロニーとステーションの公社の不正分が、自動で追加されてます」
「っ?! はあっ?!」
「現在進行形で行われている不正がこっちへ回ってきています」
そりゃ終わんねぇよ……何て賽の河原状態か。
「人を増やして、一気にコロニーとステーションを解放、こっちの所有である事を主張して、そもそもの元凶を断ち切らないとダメ、って事だったんですね」
「本国にある公社本部を潰してきていいかな? なあにわたしとプラチナギャレクティカ改めクイーン・メイヴの力があれば、何、圧縮破壊砲一発で粉々さ」
「なーに爽やかな顔で物騒な事言ってるんですかー。却下です却下ー」
「アンタの気持ちは分かるわよ。アタシだってそうしたもの。アタシの旗艦はまだ調整中だけどさ」
「公社滅ぼすついでに帝国もイッとく? って体で語るのをまずやめい」
全員がほの暗い、結構ヤバイ目付きで言ってるから、こう、本気度がヤバイ。気持ちは分かるが、それ以上イケナイ。
「となると、足りてないのは」
「武官はどうとでもなる。いや、武官の方が本来育成のコストがエグイんだが、何しろ旦那様の強化調整さえ施せば、時間加速でなんとでも出来てしまうからな」
「となると文官ですねー。それも政治向きと経済向きー、欲を出せば作戦系統なども任せられるような優秀な人が欲しいですねー」
そんなんどっから連れてくるんだ。俺はこっちの世界の常識無いから、パッとここで人を募ろうとか言えんからな。
結局は嫁達に聞くしかないんだわな、これが。
「スカウトするってなると? どこがいいんだ?」
「そうですねー。神聖国は却下ですしー」
「そうなん?」
「あー、確実に信者が来るな」
「信者?」
なんでもリズミラとファラの祖先って人達が、とても人格者の良い指導者だったらしく、当時圧政に苦しんでいた神聖国の民衆を逃がす手引きであったり、開拓地の整備であったり、国家運営の資金の援助であったり、かなり手助けしたらしい。なので、リズミラの存在が知られている以上、彼女の血統を崇拝する信者のような人間が沸き出るとか。
「そういうのはいらんなぁ」
「ですよねー。わたくしも困りますー」
「となれば一択になるわね」
「どこよ?」
「バザム通商同盟国ですね」
マヒロが気を利かせて地図を表示してくれた。俺らのアルペジオの光点が点滅し、そっから通商同盟国を矢印で教えてくれる。
「おお、これってもしかしなくとも
どこのゲームでも居る、検証大好きって奴らが集まったクラン、『セラエノ大図書館』って人々が作った超大型サーバータイプデータ集積装置兼クランホームが、確か地図で指し示した場所にあったはず。
「バザム通商同盟国は、別名、叡智の都とも呼ばれていて、有名無名の学術施設が乱立しています。ですが、あそこは商人こそ権力の中心ですから、結構な知恵者があぶれて管を巻いている、なんて事もあるとか」
「あのクランの影響かねぇ」
なるほど、バザムか。
「良し、ちょうどお呼ばれしてたし、ちょっくら行くか」
「はあぁっ?! 国王自らスカウトすんの?!」
「ばっかお前、この国に外交官なんて高級な人材がいるとでも思ってるのかっ?!」
「……あ」
「こちとら勢いとノリで国勃興したポンコツ国王様だぞ、人がいないってんなら俺がやるっきゃねぇでしょが」
「そうですね。そうなんですよね」
その外交官ちっくな人材も、ついでにゲット出来りゃいいんだけど。とりま、文官を頑張ってゲットせねば。
「アビィ、ミツコシヤさんにあちらのお偉さんへ、近々お邪魔しますって伝言頼んでもらえるか?」
『お安いご用よん。すぐにおばあちゃんに連絡するわん』
あの飴のお店、ミツコシヤって名前で、なんでMITSUKOSHI? と聞いたら、何でも古い商会は日本っぽい屋号を使うんだとか、エチゴとかダイコクとか。場所が場所だけに、かの神話生物クランの影がちらほら見えますな。
「それで国王様? お一人でいらっしゃる?」
ファラが妙にネットリした口調で聞いてくる。いや、なんか周囲の嫁達の視線が全体的にネットリしてんだが……何で?
「ルルは確定だろ? そうなるとポンポツとファルコンも必要だ。ゼフィーナとリズミラはアルペジオの警護をしてもらう必要があるから留守番。一応、ホワイトブリムも残して。となればいつものメンツになるんじゃね?」
特に何も考えず、思ったままを口に出せば、勝ち誇ったファラと安堵した様子のシェルファ、明らかに落ち込んだゼフィーナ、リズミラ、ガラティア他メイド達。だから、何よ?
「マイロード。さすがに結婚してからも鈍感なのはいかがなものかと?」
「何が?」
「……本気で不思議がってるのが凄いですね、マイロード」
「ええっと?」
「それがマイロードらしさ、という事に繋がるのでしょうが、もう少し乙女心を理解すると良いかもしれません」
だから何よ? なんか俺が悪い的な流れを感じる。あれ、これって俺が悪なのか? おう、オラすげーヤバイ気を感じるぞ!
「さてはて、ちょっとルルちゃんの様子でも見に行くかな」
戦略的撤退! しかし逃げられなかった!
「旦那様、ちょっとよろしい?」
「少し、そうですねー少し、こちらの事も知ってもらう良い機会かもしれませんねー」
「ちょいとおまいさんら、落ち着きなさいって、そんなに力を入れなくても、もう逃げませんって、痛いってギチギチ鳴ってるから」
あんだかんだと説教されたり、なんか愚痴を聞かされたりしたのだが、冷静に考えてみれば、俺ら五徹してたんだよね。そりゃ、変なテンションにもなるよね。
「だから冷静に、冷静になるんだ。もう皆で寝よう! そこから冷静な話し合いをだな」
結局、この日、六徹目が決定するのであった。とほほ。
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