第49話 オイラ、タツロー。今あなたの頭上にいるの。

「目標施設確認」

「うぃ、十分な距離を取ってドライブアウト」

「了解、最適な場所を設定します」


 ゼフィーナとリズミラの、派手にやるじゃねぇか、状態の主砲ブッパを確認してから、目標施設に感知されない距離でドライブアウトする。


「大分寂れてるんじゃねぇか、西部酒場」


 クランVSと呼ばれるいイベントで、真っ先に突っかかって来ては、素早く撃退されるというお約束をかます、お馴染みのお笑いクランという印象だが、デミウスが絡まなければ陽気なアンちゃんネーちゃんの集団だったし、この西部酒場にもお邪魔した事はある。


 モチーフというかイメージが、マカロニウェスタン映画のモノだから、古くさくてみすぼらしい、安っぽいっというか簡素な、という外見であるが、そこは宇宙を舞台にしたゲーム、サイバーパンクな印象はあったんだが……技術力の差かねぇ、かなり痛んでいる。


 ちょっと懐かしい気分になってしまったが、仕事を進めないとな。


「マヒロ、サーチ」

「イエスマイロード」

「シェルファ、データ送信ポイント算出。ジェネレーター関連にアクセス出来るなら、今の内に妨害」

「了解。マヒロのサーチに便乗します」

「どうぞ」


 これでよし。


 ま、相手が生産専門のクランだったら、もっと苦労するだろうけど、そこまでのシステムは積んでないだろう。こっちも準備を進めよう。


「火器管制、特殊ミサイルへ変更。レーザーは状況を見て」

「まずはマスドライバーを封じるのよね?」

「何発射ち込まれようともアルペジオは無傷だろうけどな、面倒くさいからとっとと封印しちまおう」

「イエッサー、キャプテン」


 んじゃまぁ、やってやるぜ!


 フットペダルを踏み込み、ジェネレーターの数値を都度調整しながら、施設の真上から突っ込む機動を飛ぶ。


「せめてジェネレーター妨害出来てからでも良かったのでは?」

「……あー、何で俺、突っ込んだんだ?」

「アンタが突っ込んだんでしょ! アンタが!」

「ルル、コレガ脳筋ニ至ッタ人間ノ末路ダゼ」

「のうきんこわい」

「脳みそ筋肉になるんですわん?」

「短慮にはなります。マイロードの場合は、天然自然に抜けてるだけなような気がするようなしないような、やっぱりするかなぁと」

「とと様、てんねんちゃん!」

「ええい! やあぁってやるぜぇっ!」


 施設の頭上に到達すると、あっちこっちからガッコンガッコン物騒な物が、にょきにょきと生えてくる。


「迎撃システム稼働」

「見りゃ分かる!」

「あと二分程度だったんですけどね」

「すんません!」


 シェルファがコンソールを激しく叩く音を聞きながら、吐き出されるレーザーやらミサイルやらを曲芸のように回避していく。テクニックを披露するまでもなく、機械的な弾幕なんぞ怖くもない。


「よし見えた。特殊凝固ミサイル行くわよー!」

「派手にぶちかましたれ」


 ファラが連続してミサイルを吐き出し、その全てが剥き出しで設置されているマスドライバーへ命中し、すぐにその姿を奇妙なオブジェクトへと変貌させた。


「マスドライバー無効化、完了」

「ナイスでーす」

「施設は無傷で取り戻すんでしょ?」

「ああ、ちょっと因縁ある人達の家だからね。あまり傷つけたくないんだ」

「じゃ、愛しい旦那様の操縦テクニックを満喫させてもらうわね?」

「ご期待に添えればよろしいんですけどね。おほほほほ」


 ガンガン飛んでくるレーザーをすり抜け、ミサイルを飛んでくるレーザーにぶつけて相殺し、レーザー砲台の可動域限界を予想して隙間を作ったり、いつもの戦い方からすれば地味な動きで避けまくる。


「お待たせしました。これで」


 シェルファがパチンとコンソールを叩けば、全ての攻撃がパタリと止まった。ジェネレーターを把握したようだ。


「さて、後は中の人なんだが」

「ガードボットを起動させます?」

「んー、そんな便利な装備、持ってるか?」

「調べます……無いですね」

「ですよねー」


 無理矢理接岸して乗り込む、っていう強行策もありっちゃありなんだが。どうしましょうかね?


「お」

「あら」

「我慢出来なかったのね」

「言い方!」


 施設のドッキングベイの隔壁が開き、そこから船が二隻飛び出してきた。


「共和国の標準戦闘艦、ガアフドレルですね」


 妙にゴテゴテしい、船体のバランスはどうなってんの? それ? と突っ込みたくなるような、ベースとなる船体にやたらめったら武装をくっつけた、どっからどう見ても『ぼくがかんがえたさいきょうのふね』状態である。


「あれまともな戦闘出来んの?」

「ジェネレーターがそもそも必要出力出せないんじゃないかと」

「まともに動けないんじゃない?」

「せんとうりょく、たったの五、ごみめ」

「……娘ちゃん? 君はどっからそういう台詞を仕入れてくるんだい?」

「なんのことでしょー」

「はぁ、まあ、いいんだけどね」


 どうするんだろうかと、様子をうかがっていると、二隻は同時に抱えてたミサイルを全て全力ブッパしてきた。


「おお! そう来たか!」

「でも無駄だけどね」


 ファラが素早く軽レーザーを選択し、飛んでくるミサイルを全て簡単に迎撃していく。その間に敵船はミサイルポットを全て破棄、身軽な状態になって、こちらを挟むような形で連携してくる。


「なるほどな。初手の全力攻撃で行ければラッキー。無理なら実力でって感じか」


 警戒すべき武装もなさそうだ。なら、もう様子見は良いだろう。


「落とす」

「了解。火器管制いつでも行けるわ」

「こちらも大丈夫です」

「サポート、フォロー問題ありません」

「うぃ、やるぞ」


 こちらを中心として、必ず二隻で挟む形で移動する敵船へ、フットペダルを思いっきり踏み込んで、急加速で片方に突っ込む。


「ふはははは、どこへ行こうというのだね」

「さんぷんかんまうの?」

「だからどっからそういう知識をっ!」


 相手の尻を追いかけるが、なかなかどうして緩急を付けて上手い具合にこちらを翻弄する。これ、さっきの股間ビルドアップ野郎だろうか? これが俺一人の船だったら有効な操舵だけど、残念こっちはソロじゃねえんだわ。


「ほいっと」


 ファラが軽い感じで偏差射撃をぶちこみ、まるで吸い込まれるよう、レーザーがコックピットを直撃、その一撃でなんたらいう船が爆発四散した。


「もう片方、逃げます」

「おいおい」


 死ぬ事、滅びる事が救いだってカルト宗教の信者が、生き残る為の行動を是とするのかよ。


「ま、逃がさんがな」


 逃げる事のみに集中してるのか、ほぼ一直線に共和国方面へ飛ぶ敵船。そんなものは簡単に射ち落とせる。すぐに尻にぴったりくっついて、ファラの一発で爆発四散さようならだ。


「ふー、施設を精密スキャン。一応周辺宙域も同時にな」

「了解しました。マヒロ、周辺宙域をお願いします」

「了解」


 ふぅ、これで終息かな。ゼフィーナ達も残党処理に入ったようだし、これでしばらくは共和国も動けんだろう。教団は……ちょっと読めないなぁ。


「施設内生命反応無し。怪しいトラップのような物や、不振な爆発物も確認できません」

「周辺宙域に生命反応ありません」

「よし。アビィ、出番」

『まぁってましたぁですのん!』


 アビィに施設のAIを掌握してもらって、こっちの管理に書き換えれば、もうこの施設を使う事は出来なくなる。その後は、プラチナギャラクティカに曳航してもらって持ち帰り、修繕したりして有効活用させてもらおう。


「マカロニさんも、小悪党に使われるより、大悪党に使われた方が喜ぶでしょ」


 こうして短いようで長かった戦いが終わり、やっとこさクランホームコロニーを取り戻せたのだった。


 問題は山積みだけどなっ!

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