第28話 どうも、タツローです。この度、国家運営する事になりそうです。敬具
「ヘタレですの」
「やっかましいわ。こっちだって活動の土台がふわっふわしてる状態で、あんな他人の人生決める決断なんかできっかっての!」
とりあえず、少佐からの提案は持ち帰りという事で、護衛依頼の報酬とギルドへの実績を貰って帰ってきた。
クランハウスでも良かったのだが、あまり自分の船を放置するのも戦闘系ギルドメンバーとしてどうなん? という事で、船に戻ってきんだけど、やっぱり普通にいるガラティア。
最後に見た時と寸分違わない姿だったのには安心したが、相変わらずこちらを駄目人間認定してイジルのは止めていただきたい。
「はーいルル様、あーんしてくださいですの、あーんですの」
「あー」
「はい、いっぱい噛んでいっぱい食べますのー」
「うー」
現在食事中。自動調理機があるのに、わざわざ食品をどこからともなく調達し、ほとんど使われることのないキッチンスペースにてちゃっちゃっと料理をした駄目メイドは、ルルを後ろ抱きにして嬉しそうに世話をしている。
「美味いのがムカつく」
「お褒めいただき恐悦至極ですの」
「あー」
「はいはい、あーんですの」
ルルも甘やかしてくれる相手と分かるのか、ちょっと微妙な表情ではあるが、大人しく食べてくれている。
俺は俺で、ちょっと行儀は悪いが、飯をつつきながらデータパレットに目を通していた。これはガラティアが予想する、俺がクランコロニーを掌握したとして、周辺がどのように動くかが書かれている。
「なんだこの、田舎貴族の下克上って?」
「そのままの意味ですの。このままタツロー様が一人で立ち回ろうとすれば、必ず古代文明の恩恵を掠め取ろうとする馬鹿貴族が沸き出しますの」
「つまり、俺への下克上って事? んなアホな」
「もう認めてくださいですの。あの末っ子は古代文明の、あなた様の船を使って国を興したのですの」
「いや、それはその時の大公爵とやらが――」
「同じ事ですの。この宇宙で古代文明の力を所有する存在は、すなわち王権を持つのと同意という事ですの。他の星間国家でも古代文明の遺産を持つ事がそもそもの国の始まりというのがほとんどですの」
あー、こいつには絶対口では勝てない。
しっかしなぁ……どうして自分達の所有物を返して貰うだけなのに、こんなに大事になってんだろうか? 解せぬ。
「簡単ナ話ダゼ?」
「ん?」
「大量殺戮兵器ヲ大量ニ所有シテイル個人ヲ放置スルト思ウカ?」
ポンポツの例えに、遺憾ながら凄く納得してしまった。
「つまりは鈴をつけとけば、少しは安心だって感じか」
「ンニャ、色々ナシガラミ付ケトキャ、暴力ノ使用方向ヲアル程度コントロール出来ルンダゼ」
なるほどなぁ。良く物語とかで、王族が同盟関係を維持するために、嫁入り婿入りさせたりしたりするのと同じって感じか。力がこっちへ向かない努力なぁ。
「そう言う訳で、すっぱり覚悟を決めて諦めて下さいですの」
「簡単に言うよ、まったく」
でっかいため息を吐き出す俺に、ポンポツがやれやれと肩を竦める。
「ドッチニシロ選択肢ハ最初カラ決マッテタンダゼ?」
「どうして?」
「敵対シテ、助ケルッテ自分デ決メタンダゼ」
ポンポツのCな指が向けられた先に、幸せそうに食事をするお嬢様の姿が。
「自分ノ尻ハ自分デ拭クモンダゼ」
ぐうの音も出ねぇ。ちくしょー!
「はあああぁぁぁぁぁ」
そうだな、決断って意味じゃもうしてるんですな俺って。凄い、ノリと勢いだったような気が微レ存。
「うにゅ?」
ルルの顔を見れば、モグモグしながら不思議そうに首を傾げる。そうさな、もうあれですな、どうっちにしろ医療ポットにいる女性たちも助けるんだし、こりゃあもう腹決めるしかねぇかねぇ。はあ、辛い。
「具体的には? 案があるんだろ陰険メイドめ」
「お褒めいただき恐悦至極ですの。まず『エペレ・リザ』を丸々引き込みますの。彼女たちは皇帝は尊敬していますが、帝国その物には忠誠を誓っていませんの。彼女たちにとって自分達の個を認めて貰える国家はまさしく夢の国ですの」
「まぁ、さっきの話を聞いた限りではそうだよなぁ」
「彼女たちにはしばらくクランエリア、秘匿エリアで助けた少女たちの訓練をしてもらいますの」
「ん? なんで?」
「人手が足りませんの。使える物は何でも使いますの」
「あー、でも助けた恩は売ってるが、こっちにつくのか? 帰る場所があるだろ?」
「帰る場所なんてありませんの」
「ワッツ?」
「違法とは言え、ルル様にねーねと呼ばれている女性以外、家族に売られてますの」
「うーわーヘビィじゃねぇかぁ」
帝国では奴隷が認められている。正式にはほぼ借金奴隷の位置付けになるのだが、イリーガルな存在として違法な奴隷商も存在し、この宇宙大航海してるような世界なのに口減らしが存在したりして、そんな違法に売り飛ばされた存在は、大抵ろくな終わり方をしない。
「まあ、多くがコロニー公社と結託し、違法で多額の過剰税金を徴収する、という方法で罠にはめているようですの」
「あー本当に帝国駄目じゃねぇかよ」
「中心部はまともですの」
「中心部だけはまとも、だろ?」
「座布団持ッテキテー、ダゼ」
「やかましい」
寄港する時に対応されたおっさんの顔を思い出してしまい、微妙にイラッとする。つまりは、あの手の人間が他にも大量に存在しているって事か……
「なるほど、手加減無用って事を言いたいんだな?」
「はいですの。アビィとファルコンに命じてクランコロニーに関わっている公社の不正情報は収集完了してますの。効果的に使うには時間が必要ですの。それまでの間にタツロー様は初心者講習とか受けるといいですの」
「ん? 参加する必要あるん?」
「ネットワークギルドはかつての商業クラン『儲かりまっかー?』を母体にしているバリバリの古代文明の遺産持ちですの。好んで敵対する必要性はありませんの」
「……またなんてエゲツないクランの遺産を使ってやがる」
お客の銭で染めた財布、金の亡者と人は言う。クランの中で金の亡者が甦る。奴らが集める金の宇宙に、無敵と謳われた地獄の
我がクランの非常識デミウスですら、こいつらに関わるのを全力で回避する程度にはヤバイ奴らである。そんなんが所有してたゲーム時代のテクノロジーとか、想像したくねえ。
「じゃあ、ギルドから連絡が来るまでは、しばらくのんびりしてられるって事か」
「ははは、ぬかしよりますの。そんな訳ありませんの」
「は?」
「倉庫でホコリ被ってる艦船の整備をしてくださいですの。正規の軍人が仲間になるんですの。半端な仕事は許しませんの」
「一人で?」
「サポート装置使えばいいですの」
「Oh……」
こうして俺のスケジュールと将来設計が、ガンガン突き進むようにして決まっていくのであった。
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