閑話 変人と変態とマッドを足して十倍
SIO、『スペースインフィニティオーケストラ』にはクラン、同じ趣味趣向の人間が集まるという機能がある。
ゲームによってはギルドであるとか、そういう呼ばれ方をするシステムである。
有名なクランだと、生産に特化した『ダグザの大釜』だとか、近接接近戦大好きな『
中でもトップクランと呼ばれる三つ、『遊戯人の宴』と『ブレイバー』と『
別の意味でも別格ではあったが……
勇者ハーレム『ブレイバー』、モフモフ至上主義者狂信集団『大口真神』、そして混ぜるな危険マジやめれ『遊戯人の宴』だ。
今日も今日とて『遊戯人の宴』の混ぜるな危険は絶好調で混ざっていた。
「やっぱりこれじゃろ?」
筆頭変態TOTOおじいちゃんが見せる、どういう仕組みか不明な、触れる立体映像ホロパレットをじゃーんと仲間に見せる。
「気持ち悪いぞ糞ジジィ」
筆頭マッド残念イケおじリオ・テイカースが、うんざりした表情でバッサリ切り捨てる。
「こうだろ?」
自分が持つホロパレットをじゃーんと仲間に見せる。
「ドングリの背比べ、五十歩百歩、目くそ鼻くそって知ってっか?」
筆頭変人地味印象なのにどうして? スパート・ヘイトが鼻で笑い、自分の持っているホロパレットをどやぁと見せる。
「ワシ最強じゃろ!」
「俺様最強だろうがよ!」
「ほざけ変態ども! 自分最強だ!」
ホロパレットをぶつけ合いながら、バチバチと視線で火花を散らす三人。
「ふーん、趣味に傾向しすぎて機能が機能してない。デザイン重視でそもそも必要な要素を満たしていない。自分好みで他人が使用する事を考慮してない。全部使えないなこれ」
ひょひょひょいっとパレットを取り上げ、ざっくり斜め読みしたどこにでもいるようなモブっぽい白衣の青年が、ダメだこりゃとばかりにパレットを投げ捨てた。
プロフェッサー。文句無しに生産職のトップオブトップであり、全ての生産職が目標としライバルと見る人物だ。
「何度も言ってるけどね? 君ら穿ちすぎなんだ。そこが特色って言えば特色なんだけどね。ちゃあんと使う人の事を考慮しなければ、誰も相手してくれなくなるよ?」
めっと注意して颯爽と立ち去っていったが、残された全ての人物の心の内は一つである。
『お前が言うな』と。
確かに彼の作り出す生産物は使用者に寄り添った素晴らしい物が多い。ただ、使用者の意図しない場所で大暴れする事を除けば、だが。
例えば、効率の良いレーザー兵器を製作し、依頼主の要望をきっちり叶えた素晴らしい物を製造してくれたとする。しかし、彼は笑顔で要らぬ機能を付けたりする『あ、敵に取られたらやばいから、自爆機能つけといたねー』とか。
変人と変態とマッドを混ぜて十倍に濃縮したような生産職人、それがプロフェッサーことタツローである。
「うぃーおまいら、タツロー知らにぃ? あいつ、おれっちのレイガンに変形機能付けて使いにくいったらにぃのよ」
そこへ登場したデミウスがレイガンをブラブラ振りながら歩いてきた。
「何故にレイガンに変形機構?」
「んあー? 格好良いからだ! キリッと言ってたがにぃ。実際使ったら使えない使えないちゅうのん。あいつ、おれっちだと使い勝手とか考えないからにゃあ。参った参ったにぃ」
『おいプロフェッサー、お前、言ってることとやってることが違うじゃねぇか?!』とこの瞬間全員の心が一つになった。
「よーし、やっぱりワシが一番じゃ! これで人格形成をするのじゃ!」
「お前ふざけんな糞ジジィ! こっちに決まってんだろ!」
「まあ待て、こっちで進めるべきだ。こっちが良い!」
気を取り直して、おネイさんキャラ、清楚なビッチキャラ、爆乳ロリキャラ三つのどれが良いか議論を再開する変態どもに、周囲の視線が冷ややかだ。
「ぬーむ、職人にまともな人間はいにぃなぁ、にゃははは、業がふけぇいふけぇい」
何気に深いバッチリマッチする台詞を吐きながら立ち去るデミウスに、特大のブーメランが飛ぶ幻影を見るクラメンたちであった。
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