ぼくたちの長かった戦いの日

第六話

　三（さん）、四十分（よんじゅっぷん）マンガを読（よ）んでいると、木元（きもと）くんから連絡（れんらく）があった。

「ママに怒（おこ）られちゃった…今日（きょう）はもう外（そと）に出（で）られないよぉ…」

「そっか。じゃあ、ぼくが基地（ちき）で坂神（さかがみ）くんの帰（かえ）りを待（ま）つよ」

「うん…任（まか）せた…」

　もしかしたら、坂神（さかがみ）くんはもう戻（もど）っているかも知（し）れない。

　基地（きち）へと急（いそ）いだ。

「まだいないか～。坂神（さかがみ）くん、大丈夫（だいじょうぶ）かな？」

　みんなで持（も）ち寄（よ）ったマンガ雑誌（ざっし）をペラペラめくって時間（じかん）を潰（つぶ）そうとしたけど、坂神（さかがみ）くんがどうなったのか気（き）になって集中（しゅうちゅう）できなかった。

　坂神（さかがみ）くんなら大丈夫（だいじょうぶ）だと思（おも）うけど、もしかして山下一味（やましたいちみ）に捕（つか）まっちゃったのかな？

　山下（やました）に殴（なぐ）られたり、いじめられていなければいいけど。

　探（さが）しに行（い）くべきだろうか？

「戦利品（せんりひん）は無事（ぶじ）、基地（きち）に持（も）って帰（かえ）って来（こ）れたし」

　そう呟（つぶや）いて、テーブルの上（うえ）の戦利品（せんりひん）をひと撫（な）でしようとした、その時（とき）。

「無（な）い！」

　おかしい。

　確（たし）かに、ここに置（お）いてあったはずだ！

　テーブルの下（した）、周（まわ）り。

　基地中（きちじゅう）をくまなく探（さが）し回（まわ）る。

　だけど、いくら探（さが）しても、あの綺麗（きれい）に磨（みが）き上（あ）げられた白緑色（しろみどりいろ）に光（ひか）る石（いし）は、どこにも無（な）かった。

「これじゃ、坂神（さかがみ）くんに会（あ）わせる顔（かお）がないよ」

　ぼくたちと戦利品（せんりひん）を、身（み）を挺（てい）して守（まも）ってくれた坂神（さかがみ）くんに申（もう）し訳（わけ）ない。

　とてつもない焦燥感（しょうそうかん）が、腹（はら）の底（そこ）から湧（わ）き上（あ）がってくる。

「ど、どうしよう？」

　何（なん）としても見付（みつ）けなくちゃ！

　だけど石（いし）が一人（ひとり）で歩（ある）いてどこかへ行（い）くなんて有（あ）り得（え）ない。

　もしかして、誰（だれ）かに盗（ぬす）まれちゃったんだろうか？

「一体（いったい）誰（だれ）が？」

　基地（きち）を知（し）っているのは、世界（せかい）に三人（さんにん）だけしかいない。

　ぼくと、木元（きもと）くんと、坂神（さかがみ）くんだ。

「だけど…」

　あの二人（ふたり）が、ぼくたちの共有財産（きょうゆうざいさん）を独占（どくせん）しようとするかな？

「もしかして！」

　坂神（さかがみ）くんが山下一味（やましたいちみ）に拷問（ごうもん）を受（う）けて、基地（きち）の場所（ばしょ）を喋（しゃべ）っちゃったんだろうか？

　謎（なぞ）は深（ふか）まるばかりだった。