第四話

大丈夫だいじょうぶだったね」

かべがぬるぬるで…気持きもわるかったよぉ…」

「おれはくらくてもすこえるんだ!」

「そうなんだ、すごいね!」

「それでな、おれちゃったんだ!」

なにを?」

 みょう真剣しんけんかお坂神さかがみくん。

 ぼくと木元きもとくんはいきをのんだ。

「あの洞窟どうくつ天井てんじょうにな、びっしりといていたくろかげを!」

「ギャーッ!」

 耳元みみもと大声おおごえげたのは木元きもとくん。

「わあっ!」

 木元きもとくんの大声おおごえおどろいて、ぼくまでさけんじゃった。

「あれは多分たぶんとりかなんかだ!」

洞窟どうくつなかだから…コウモリかなぁ…」


 洞窟どうくつけたさきは、四方しほう断崖だんがいかこまれた広場ひろばになっていた。

 雑草ざっそうしげり、周囲しゅういいわにはこけがびっしりとえている。

 だけど放題ほうだいというほどでもなく、おおくのひと頻繁ひんぱんった形跡けいせきもある。


「あそこ…焚火たきびあとかなぁ…」

 木元きもとくんがゆびさしたさきには、おおきめのいしんでつくったかまどがある。

 近付ちかづいてみると、あた一帯いったいには枯木かれきえカスや、ものとお菓子かしはいっていたビニールぶくろ手持ても花火はなび残骸ざんがいなどがころがっている。


きたないなあ~」

「こんなに綺麗きれい場所ばしょなのにな!」

だれがこんな…片付かたづけもしないで…」

 ひとしきり文句もんくってから、この綺麗きれいかわでも水遊みずあそびをたのしんだ。

 水深すいしんあさく、水温すいおん下流かりゅうよりもさらひくい。

 とっても気持きもちがかった。

 かわいていた水着みずぎは、途中とちゅうれてしまったので、もはやおかまいなしだ。

 みずをかけい、いしした沢蟹さわがにさがし、アユやヤマメをいかけた。


「ねぇ…あのいわひかってるよね…」

「おれもおもってた!」

 木元きもとくんの言葉ことばに、坂神さかがみくんも相槌あいづちった。

 だれかがらかしっぱなしにしているかまどのちかく、だけどがけ裏側うらがわになっていてかわなかからじゃないとからない位置いち

 周囲しゅういがけの、くろっぽい岩盤がんばんとはことなる、しろ緑色みどりいろじった巨大きょだいいわがそびえっていた。


綺麗きれいだねぇ…」

こけかとおもったら、こういういろなんだ~」

部屋へやかざりたいな!」

「こんなおおきなものってかえれないよぅ…」

 してもいてもびくともしない。


「ねえ、て!」

 ぼくは清流せいりゅうなかに、おないろいしがあるのを発見はっけんした。

 ひろげると、その拳大こぶしだいいしは、ずっしりとおもい。

 ながあいだ水流すいりゅうによってみがげられた、まんまる白緑しろみどりいし

 れた表面ひょうめん太陽たいようひかり反射はんしゃして、キラキラとかがやいていた。


戦利品せんりひんだ!」

「これならってかえれるね」

基地きちかざろうぜ!」

 はまだたかい。

 二時にじ三時さんじだろうか。

 ほかにもおなじものはないかとあたりを見回みまわしたけど、これひとつだけしかなかった。

 これ以上いじょう探索たんさくあきらめて、ぼくたちはかえることにした。


 まさか、このいし事件じけんのきっかけになるなんて、想像そうぞうもしていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る