見つかったのは、何故?

次の日、私は何故か見つかった。


下駄箱のこれは、何なのでしょうか?


バサバサと何かが足元に落ちた。


「また、小花さんが見つかっちゃったね」


坂口君が、それを拾ってくれていた。


「教科書、これ使って」


「君は、どうするの?」


「僕は、買うから大丈夫だよ」


「坂口君」


何故、私は泣いているのでしょうか?


「大丈夫?こっち」


坂口君は、私を引っ張って行く。


「ごめんね。」


「小花さん、一年の時に戻っちゃった事が悲しい?」


「わからない」


「僕が、ずっと傍にいるから。小花さんのその世界を守ってあげるから」


坂口君は、私をギュッと抱き締めてくれる。


誰かに抱き締められたのは、小学校低学年以来だった。


私は、坂口君を好きじゃないのに腕を回してしまっていた。


ガラガラ…


「何してんだよ」


えっ?


私は、その声に離れようとしたけれど坂口君は私をさらに抱き締めた。


「ふざけんな、坂口」


花村君は、私と坂口君を引き離した。


「花村に、関係ないだろ。花村のせいで、小花さんは、またいじめられてるんだ。花村は、小花さんが好きなのかよ」


「好きなわけねーだろ。こんなツギハギだらけの服、着たやつ」


ズキンって、胸に鋭い痛みが走った。


「小花、ごめん」


さわるな。わ、わ、私の世界に勝手に入ってきて壊さないで」


涙が、滝のように流れ落ちた。


「小花さん、大丈夫、大丈夫だから」


坂口君は、私の背中をずっと撫でてくれる。


「ふ、ふざけんな。お前ら気持ち悪いんだよ」


ガタン


机を押し倒しながら、花村君は出ていった。


「ひっ、ぁぁああああ、ひっ」


「ゆっくり、息を吸って小花さん」


苦しくて死ぬ。


花村君の、羽根がはえはじめていたのに私は引きちぎった。


彼の近くにいる誰よりも、酷く引きちぎった。


「ぁぁああああ。」


「小花さん、大丈夫。大丈夫。僕が、守るから」


苦しくて、痛くて、死にそうな、一日が終わった。


私は、保健室で過ごした。


「小花の世界が壊れてしまったんだな」


管野先生は、私に声をかけた。


「先生、私はどうすればいい?」


「自分の気持ちに従うことだよ。坂口か花村か、選ぶのは小花の自由だよ。」


「花村君は、私を好きじゃない」


「さあ、どうだろうね」


先生は、私の頭を撫でてくれた。


その日は、苦しみを抱えて過ごし休み時間には、坂口君がやってきた。

そして、私は家に帰った。


お腹がすかなくて眠った。


次の日も、私は保健室で過ごした。


花村君に、会う事はなかった。


坂口君は、保健室にやってきた。


「これ、何とか繋げたけど全部なかったから…」


バラバラにされた教科書を繋げてくれたらしい。


「後、これ机の上にあった。」


「ジャージが…またビリビリだね。せっかく坂口君が縫ってくれたのに」


「靴下、履いてくれてるんだね?」


「あっ、うん。ピッタリだったよ」


「よかった。」


坂口君は、ポケットから裁縫道具を取り出してジャージを縫い始める。


一年生の時から変わらない。


坂口君は、ずっとこうして縫ってくれる。


それなのに、私は坂口君を好きだって思えなくてごめんね。


「糸が足りなくなったから。家で直してくる」


「ありがとう」


「ううん」


坂口君は、教室に帰った。


私の一日は、終わった。


家に帰っても、やっぱり、お腹はすかなかった。


胸がポッカリ空いたみたいだった。



そして、次の日。


教室に戻った私は、花村紫音はなむらしおんが、事故に合った事を聞いたのだった。


放課後、私は、花村紫音はなむらしおんの机に座った。


ガサガサと机の中をあさった。


たくさんの教科書が残ってる。


バサッ…


教科書を引っ張り出そうとした時に、小さなノートが落ちた。


ペラペラと捲る。


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