003
一言で言えば、白。
右も左も上も下も、白。真っ白。
僕は今、そんな空間の中にいる。
大型ダンプに撥ね飛ばされた後に、こんな真っ白な空間にいるってなったら、もうあれしかないよね?
この後、神様的な感じの方が現れて、能力を一つ授けてくれる的なね?
で、剣と魔法の世界に異世界転生するみたいな?
まあ、異世界転生あるあるのテンプレートですよね?
いやあ、参ったなあ、この僕が異世界デビューしちゃうとか。まじかあ、正直ワクワクしてきた。
ワクワクしすぎて思わず立ち上がった瞬間、僕の右足にむぎゅっとした感触。思わず飛び跳ねた。
「ウヒャ、なんか踏んだ」
そこには、僕が助けられなかった女の子が横たわっていた。
テンションが上がりすぎていて、周りが全く見えていなかったみたいだ。
この女の子はやっぱり僕の同級生だ。ってかこの子、おんなじクラスの不動さんだ。声がめっちゃ可愛いショートカットの女の子ってくらい事しか、この子のこと知らないんだけれど。
僕はこの子を助けることができなかった。その上思いっきり踏んづけちゃったよ。とりあえずちゃんと謝らなきゃ。
「ごめん、痛かったしょ?大丈夫?」
「……………………」
「もしもーし?」
「……………………」
返事がない、ただの屍のようだ。
おいおいまじかよ、ピクリともしないよこの子。思いっきり踏んづけた上に、声かけしても無反応とか、まじかよ。
あれ? この子さ一見ただ、寝ているように見えるけれどさ、息してなくね?
ガチの屍じゃん……ってそういえば僕も息してなかったわ。そりゃもう死んでるんだもん呼吸なんか必要ないよね。
え? じゃあこの子、踏まれて、声かけられてるのに寝続けてるの?
それはそれでやばいよ、この子。
「もしもーし、朝ですよー?」
「………………………………」
おいおい、全然起きる気配がないんですけど。
「ククク、凄いのう、その子。よっぽど眠たいのか、もしくは起きるのすらめんどくさいのか。クフフ」
突然、笑いを含んだ呆れごえと共に僕と彼女以外の見知らぬ人物が現れた。
その人物ぱっと見は、幼い子供のようでもあり、健康的な成人のようでもあり、よぼよぼなお年寄りのようにも見る。
性別は男性のようにも見えるし、女性のようにも見える。
つまり何が言いたいのかと言うと、どうやら僕のちっぽけな脳じゃこの人物をちゃんと認識することすらできないと言う事だ。
「あなたは、誰ですか?」
突然現れた得体の知れない人物に、僕は恐る恐る声をかけてみた。
「プフフフフ、おっとすまんすまん。我はのう、人の子らからは神と呼ばれるような存在じゃよ」
「か、神様って……あの神様?」
「あの神様がどの神様なのかはわからぬが、おそらくその神様じゃ」
ウヒャ、神様きたあ!!
思わず飛び跳ねちゃったよ。
大型ダンプに跳ね飛ばされて、死んだ先の空間で神様に出会うテンプレきたあ!!
「さて、何やらワクワクしているようじゃが、少しお主らのこれからの事を説明するとしよう。なのでスヤスヤ熟睡している所を起こすのはかわいそうじゃが、これから先の話しはそこの寝坊助にとっても大事な話しだからのう。お主、そこの寝坊助を起こしてやるのじゃ」
なんで僕が?とは思うけれど、今は神様の話しの方が気になるので僕は、熟睡している不動さんを起こすべく不動さんに再び声をかけてみる。
「不動さん!!ちょっといつまで寝てるの??起きて!!」
うんともすんとも言わない、ただのry
やっぱり全然起きる気配が無い。寝ている女の子に触れるのはまずいとは思うが、今は緊急事態だし仕方ないよね?ちょっと手が滑って変なところに触れちゃったとしても問題ないよね?いや勿論そんな事しないけれどさ、しないよ?
とりあえず僕は、横になっている彼女の肩をゆすってみた。
「不動さーん?起きて、起きて」
ドゴンッ!「グハっ!!」
やっぱり起きないな、なんて思った瞬間僕の顔面に衝撃が走り、吹っ飛ばされていた。
何が起きたのかなんてわからなかったし。何もみえなかった。残ってるのは右頬の痛みだけ。
けれど犯人ならわかっている、この女しかいない、覚えてろよ。そんなふうに思いながら僕の意識は遠くなっていった。神様の笑い声だけが響いていた。
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