002


 人間、生命の危機に瀕している時に世界がスローモーションになるのって本当だったんだね。

 

 自分に迫ってくる大型ダンプを見ながら、こんな事を考える余裕があるんだもん。


 まあ、いくら世界がスローモーションになったとしても。僕自身が素早く動ける訳ではないので、大型ダンプにクラクションを鳴らされたところでね。


 ドゴッッt


 はい、この通り。


 おかしいな、こんなはずじゃなかったのにな。


 


 そもそも僕が何故、この大型ダンプに跳ね飛ばされる事になったかと言うとさ。


 ほら、小説とかドラマとかで良くある話しあるよね?

 

 道路に飛び出した子供とか、恋人とか、まあ誰でも良いんだけれどさ。その人を助ける為に身代わりになるってやつ。


 僕もさそんなの物語の中だけだと思ってたよ? ほんとほんと。


 けれどね、びっくりするかもしれないけれどさ。身体って勝手に動くんだね。


 目の前に女の子がいて、その子に向かって大型ダンプが突っ込んでいくのが見えてさ。


 ここで僕の出番だよ。まあ、実際のところは何にも考えず勝手に身体が動いてたんだけどさ。


 痛いのは嫌だし、死ぬのなんてもっと嫌なんだけれどさ。身体が勝手に動いちゃったんだもん、しょうがないよね。


 なんとか女の子の腕を捕まえて、思いっきり後ろに引っ張る。


 その反動で僕と女の子の位置が入れ替わり、女の子は奇跡的に助かる的な予定だったんだけどな……


 やっぱり物語のようには上手くいかないね。僕が非力なのか、この女の子がおm……ゲフンゲフン、あれなのかはわからないけれど、ビクともしない。ここで今更なんだけどさ、この女の子が僕の同級生だと言うことに気付いたんだけどさ。まあその時には冒頭の状況さ。


 

 おかしいな、こんなはずじゃなかったのにな。


 

 あれ? ひょっとして、僕って無駄死に??

 

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