今を生きる
「やっと到着したぞ。ここが目的の惑星だな。」
「窒素・酸素を主成分とする気体で覆われています。地表面の7割が水で覆われています。」
「よし、少し近づいて様子を見よう。」
宇宙船は静かに大気圏に侵入し、すぐさま雲の合間に姿を隠す。
「生命体を確認しました。あの二足歩行の生物がこの惑星の支配種と思われます。」
「よろしい。この生命体の危機を救うために我々はやってきたのだ。」
2体の宇宙人を乗せた宇宙船は、ひっそりと地表に降り立った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ここで番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします。政府は先ほど宇宙人の来訪を公表しました。」
宇宙船の到来から程なく、その事実は世界に向けて公開された。もちろん地球中が大騒ぎになったわけだが、それは決して恐怖からではなく、期待によるものだった。
「宇宙人はとても友好的とのことです。人類の危機を救うために地球にやって来たとの情報です。」
アナウンサーが淡々と原稿を読み上げる。
「あ、ここで追加情報です。宇宙人からのメッセージが届きました!」
地球上の全人類がニュースに釘付けで、アナウンサーの発する言葉を待った。
『地球人の皆様。我々は地球人との友好を築くためにやって来ました。』
『友好の印に、まずは我々の技術を提供しましょう』
世界中から歓喜の声があがる。
地球より遥かに進んだ技術を持っていることは疑いようも無い。
『我々が提供する技術は未来予知です。我々の技術を持ってすれば地球人に訪れる未来の危機を正確に予測する事が出来るのです』
歓喜の渦はさらに強くなる。宇宙人の言うことが本当であれば、実に有益であろう。
『では早速、我々の装置による未来予測結果をお伝えします。落ち着いて聞いてください』
皆は息をのむ
『まず、環境破壊が進行します。このままでは生命活動が困難となります。』
『次に、資源問題が深刻になります。エネルギー源、食料問題により地球人の生態系が維持できなくなります』
『最後に、地球人の間で争いが深刻となり、自ら破滅の道を進む可能性があります。』
世界中から落胆の声があがる。そんな事は宇宙人に言われるまでもなく知っている。人々の期待したものでは無かった。
かくして、宇宙人は地球人との友好を築くことなく帰路に着くことになった。
宇宙船からは宇宙人のボヤき声が聞こえる。
『しかし、地球人はとても不思議な生物だ。こいつらは未来の破滅を既に知っていたのだ。知っていながら全員が平気でいるとは』
『とてもじゃないが、こんな生物とは友好は築けないな』
ショートショート道場 5分オチ道 花 もぐら @hanamo-gera
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