地獄へ堕とす

「神様、本日も地球から多数の祈りが届いております。」


「そうか、わかった。」


ペンを置いて一旦仕事の手を休める。

その手をそのまま左肩に置き、自分で揉みほぐす。


そして、ため息をつきたくなるのをグッと堪えながら、天使から報告書を受け取る。


どれどれ、今日はどんな祈りが届いているんだ?


『罪をお許し下さい。』


『今日も食べ物をありがとうございます、、、』


『健やかな日々をありがとうございます、、、』


『今日も一日ありがとうございます、、、』


『どうか地獄に堕とさないで下さい、、、』


・・・・


・・・


・・


「地球の人間はなんとも理解し難いな。」


神様は下界を見下ろしながら困った表情を浮かべた。


地球は、終わりのない労働、際限のない欲望、計り知れない悪意で満たしてある。


地球こそが地獄なのだが、なんとも鈍感な奴らだ。

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