ショートショート道場 5分オチ道

花 もぐら

宇宙人との交流

その正体不明の飛行物体は、真っ昼間にやってきた。


「おい!あれは何だ??」


「もしや、UFOなのか!?」


多くの人々が目撃し、驚嘆と不安が入り混じった声を上げた。

そんなことはお構いなしに飛行物体は下降を始めた。というよりはコントロールを失って落下した。


「危ない!落ちるぞ!」


「なんてこった。大変な事になってしまった。」


休日でゴッタ返していた都会の人々はパニックに陥った。

飛行物体はなんとか姿勢を立て直そうとしているように見えたが、その甲斐なくやがてビル群に突っ込んだ。


一刻もしないうちに国王、防衛大臣、研究者などの要人が現地に駆けつけた。


「いやはや、困った事になった。私が国王に在任のうちにこんな事が起こるとは。さて防衛大臣よ、この場合の対応プランを教えてくれ。」


「申し訳ございません。このような事態は全くの想定外でございます。ただ恐らくは侵略に来たわけではないでしょう。恐らくは故障で不時着したものと思います。救助して恩を売っておくべきでしょう。」


「そうだな、直ちに救助にとりかかってくれ。」


たちまち救助チームが編成され作業に取り掛かった。


「まずは中の様子を確認します。ちょうど窓のようなものがあります。」


と、恐る恐る覗き込んでみた。


「あ!宇宙人が横たわっています!意識が無いようでピクリともしません」


さらに身を乗り出してじっくりと観察する。


「宇宙人は我々にとてもよく似た外見です。尻尾があるのを除けば人間とほぼ同じ外見です。」


「あとは、、見たこともない果物が見えます。プランターで食料を栽培している様子です。 あ!豚のような生き物も飼っているようです!」


と興奮気味に伝えた。


「よかった。どうやら我々と共通点が多いようだ。意思疎通がとれるかもしれない。そのまま救助を進めてくれ。」


救助チームは続いて内部への侵入にかかった。思いのほか入り口は簡単に開けることができた。

そのままの流れで倒れている宇宙人に近づいていく。どうやら宇宙人は1人のようだ。

体に触れてみると、薄っすらとうめき声をあげた。意識はないものの生きてはいるようだ。


ただちに世界最高の医療チームが編成され現場に駆けつけた。幸いにも人間とそっくりの身体の構造だったため、みるみるうちに血色は良くなり、意識を取り戻した。


「大丈夫ですか?」


と聞いてみたが困惑している様子だ。言語が違うのだから無理もない。

医療チームの代表は本部に向かって


「意識は回復しましたが、体力がだいぶ低下しているようです。栄養を摂って休養が必要です。」


と通信した。

ただちにコックと栄養管理士が現場に駆けつけた。最高の栄養食、消化を考慮した料理が用意された。


「どうぞ、お召し上がりください。」


しかし、一向に口をつける様子がない。


「やはり、地球の食べ物はうけつけないのかもしれない。よし、この宇宙船にある食料で調理しよう」


すぐさま宇宙船にあった果物と豚らしき生物で料理が準備された。

しかし、それでも一向に口をつける様子がない。


「さあ困ったな。どうしたものか。」


と次の瞬間、宇宙船の通信機から声が聞こえてきた。


「こちらズーバー星人です。こちらの声は届いていますか?」


一同は驚きつつも、1番そばにいた男が応答する。


「こちら地球人です。お仲間が不時着されまして救助していたところです。こちらの言語が話せるのですね。」


「自動翻訳機を使用しています。仲間を救助いただいてありがとうございます。

もうすぐそちらに到着しますので、それまで仲間をお願いいたします。」


「了解しました。お任せください。」


「ありがとうございます。後ほどお礼もさせていただきます。」


と通信は終了した。

そこから半日もしないうちに、同じ形をした宇宙船が上空に現れた。


「これで万事解決だ。ズーバー星人との友好も築けることだろう。」


宇宙船はゆっくりと着陸し扉が開いた。

しかし、その扉から出てきたのは豚のような生物だった。


「どうもお待たせしました。我々の仲間を救助いただいてありがとうございます。」


と自動翻訳機をつけた豚がしゃべった。

その横には、首輪をつけた人型の生物をペットとして従えている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る