九
次の日の正午頃、佐竹から急に連絡があった。話をしたいことがある為、ショッピングモールに来てほしいとのことだ。俺は急いで準備をすると、ショッピングモールへ向かった。
佐竹と合流すると、昨日と同じようにフードコートへ向かった。佐竹は早く話をしたいという様子だった。恐らく榊原から話を聞いたのだろう。前を歩く佐竹のポニーテールが大きく揺れていた。
フードコートのテーブルで向かい合うように座ると、佐竹が口を開いた。
「砂川くん。私ね、澪ちゃんから色々聞いたよ。須藤くんと出かけるんだって。知ってた?」
「ああ、昨日友也から直接聞いたよ」
「そうなんだ。どこまで知ってるの?」
「二人で今度出かけるって話まで聞いてるよ、アイスの店に行くんだってな。それと、あの日友也の様子がおかしかった理由は聞いたよ」
「そうなんだ。どんな理由なの?」
「それはな。須藤は高校に入学してから親戚の和菓子屋でバイトをしてた。その店のお客さんである榊原さんのことが名前も知らないけど気になっていた。そんなある日その思い人である榊原さんと突然出会った。しかも名前も知ってしまって驚いた。だからあの日困ってしまった。だから落ち着かなくて、あんなに様子がおかしくなってしまった、ということらしい」
なるほどね、と佐竹は呟いた。そして今度は自分が榊原から聞いた話をした。
「澪ちゃん、も高校に入学した頃から須藤くんのこと知ってたんだって。よくお母さんと行く和菓子屋さんがあるんだけどね。四月頃に店へ行くと同い年くらいの店員さんがいたの。その人が須藤くんだね。澪ちゃん、お母さんが先生しているから市の茶道サークルにも行くらしいけど、そこでも須藤くんを見かけたの。それで名前もわからないけど、感じの良い人だなって気になってたみたい」
「向こうもそう思っていたのか?」
「そうだよ。澪ちゃん、すごく須藤くんのこと好いてるみたい。あの日『今日は大丈夫そうですね』って言ってたでしょ。あれも須藤くんのこと心配して言ったんだって。前に須藤くんが配達に来てくれた時があったの。その時の須藤くん、汗だくでしんどそうだったらしいの。熱中症になるんじゃないかって。こんなに毎日暑かったもんね。会う度に心配に思ってたんだって。でも、ばったり会ったあの日は涼しかったでしょ。須藤くんを見ても汗だくって訳でもなかったから、つい大丈夫そうって言ったんだって」
「なるほど、そうだったのか」
これであの時の須藤の様子がおかしかったこと、榊原の謎の呟きの理由がわかった。佐竹もこれで解決だね、と言った。
「何だかスッキリしたらお腹空いちゃった。何か食べようよ」
そう言って佐竹は席を立ち、アイスククリーム店の方へ向かおうとした。振り返って俺の方を見ると「一緒に行こ?」と言った。
二人でアイスクリームを食べた後、ショッピングモールを歩いて回った。佐竹はご機嫌そうに見えた。夕方になり解散することになった。佐竹は歩いて帰るらしい。またね、と手を振る彼女を見送った時、ふとこれはデートではないか、と思った。そして俺は飯山が以前言っていたことを思い出していた。
「案外両思いだったりしてね」
じゃ、また次のシフトで 裕理 @favo_ured
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