七
ドーナツ店に入り、佐竹はアイスティーを、俺はアイスコーヒーを頼んだ。席を探したが、テーブルは全て埋まっていた。そのため、壁付けのカウンターテーブルに並んで座った。俺の右隣に座った佐竹はアイスティーを一口飲むと、早速本題へ入っていった。
「あの二人ってもしかして昔からの知り合いだったりするのかな。例えば幼馴染とか。それで久しぶりに会って驚いたって感じかな」
「それは有り得そうだな。でもその程度の関係ならばあんなことはならないだろう。むしろ久しぶりに会えて喜ぶはずだ。幼馴染なら紹介するんじゃないかな」
「それもそうだね。でも久しぶりに会ってしまったからこそ、動揺してしまったって考えられない? 例えば二人は幼馴染だったけど、須藤くんが原因で喧嘩別れをしてしまったの。それで謝ることもできないまま離れ離れになってしまった。それから数年経ったある日、偶然再会をしたみたいな。どうかな?」
「喧嘩別れをした、というのはありそうだ。でも、須藤はM市生まれM市育ちなんだ。転校や引っ越しをしたことはないと言っていた。もし榊原さんがそういう経験をしているならその考えはあってると思うけど」
「澪ちゃんもずっとM市に住んでるはず。これもハズレだね。」
佐竹の考えは大きく外れていないと思う。あの二人は知り合いなのだ。それも顔見知り程度ではないだろう。佐竹の言う通り幼馴染なのかもしれない。
あの日の会話を思い返していると、あることに引っかかった。
「なあ。なんで榊原さんは『今日は大丈夫そう』って言ったんだ?」
「それは……。なんでだろう」
「『今日は』って言い方をする時って昨日や一昨日とか、とにかく最近何かあった時だよな。何年も前から会っていない人間に対してはそんな言い回しをすることは無いはずだ。つまり須藤が『大丈夫そう』ではない日が最近あった。その日に榊原さんと会っていた。ということは、榊原さんと友也は最近顔を合わせていることになる。それも何回もだ。少なくとも二回以上は会っている。そうでないとそんな声をかけることはない」
「そうだね。となると、こうなるね。二人は幼馴染かどうかはわからないけど、とにかく近しい関係にある。時々何かの理由で会っている。それで最近『大丈夫ではない』何かが須藤くんにあった。そのことを澪ちゃんは覚えていた。須藤くんと偶然会ったあの日についそのことについて尋ねてしまった。こんな感じになるのかな」
佐竹は考えをまとめるようにゆっくりと話した。俺は同意の意を込めて頷いた。
その後もうすぐ始まる学校のことを話し始めた。にこやかに話す佐竹の顔を見て、これからも佐竹とこのような時間を過ごしたいと思った。
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