五
「お前のことだからてっきり誘いに乗るものだと思ってたよ。それにしても大丈夫そうって何かあったのか?」
ショッピングモールの一階にあるチェーンのカフェで俺は須藤に尋ねた。須藤は宿題を写していたが、顔を上げて俺を一瞥するとすぐに元に戻して言った。
「知らないよ。それより早く宿題をやってしまおうぜ。時間もないしさ」
須藤はテーブルの上にある宿題の問題集を指で叩いた。さっきの出来事は話題に出すな、と言っているようだった。
二人で黙々と宿題を写す作業を続けていた。没頭しているうちに先ほどの須藤の落ち着きのない様子のことを忘れていた。須藤の言う通り、時間があまりないのだ。須藤の話では借りていられるのは今日を含めて三日間とのことらしい。とにかく作業を先へ進めなければならない。幸いバイトも明後日までシフトが入っていない。そのため、明日と明後日もこのショッピングモールに集まって宿題を写す作業をすることを約束した。その後、店員に白い目で見られながら暗くなるまで宿題を写し続けた。
流石に店に居辛くなったので解散することにした。須藤と別れて自転車で家路に着いた。ふと、今日のことを思い返した。こうしてバイトとは関係ない場所で佐竹に会えるとは思っていなかった。できれば一緒に行きたかったな、と思う自分に気づき思わず苦笑した。
次の日もその次の日も須藤とショッピングモールのフードコートで宿題を写す作業を続けた。ふと気になり、佐竹達と偶然会った日のことを聞いてみたが、須藤ははぐらかした。またその時が来たら話すよ、と言ってそれ以上話題にすることはなかった。
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