二
忙しい時間が過ぎて、時計は十七時半を指していた。十六時半頃まで客で賑わっていたが、今はもう店内に客はいなくなっていた。もうすぐ夕食の時間の為、家に帰っているのだろう。すると店の扉が開き一人の男性が現れた。その男性は長い髪を後頭部の低い位置で団子にまとめていた。金縁に丸いグレー系のレンズのサングラスを掛け、幾何学模様の開襟シャツを着ていた。
「やあ、悟くん。お疲れ様。店長は裏にいるかい?」
「オーナー、お疲れ様です。裏にいますよ」
了解、と言ってその男性はバックヤードに入った。この男性はこの店のオーナーの吉田慎太郎だ。店長の三田村茂とは大学時代からの付き合いらしい。三田村がバイトしていたカフェの常連客の一人が吉田だったそうだ。お互いコーヒーが好きと言う点で意気投合したらしい。仲良くなった二人は次第に自分達の店を持ちたいと思うようになった。そのため、吉田は経営の勉強を始め、三田村はコーヒーについてより学び、有名店で修行をした。そうしてついに二人はこの店をオープンした。また吉田は経営の才能に恵まれていたようで、この店以外にもカフェの経営を手掛けている。
今日吉田が店を訪ねたのは、秋の新メニューについて話があるそうだ。バイトくんにはまだ秘密だけどね、と白い歯を見せながら吉田は言った。店長の指示で今日は早く店を閉めた。
「今日は早く終わったね。ラッキーだ」
店を出た時、佐竹はそう言って笑顔を見せた。俺はそうだな、と返事をした。確かに早く帰れて嬉しい。でもどこか寂しいような名残惜しいような、そんな気持ちになった。
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