次の日、俺はいつもより早くバイトへ向かった。昨日閃いた話を早く佐竹にしたかったからだ。真昼の日差しは今日も厳しい。汗だくになりながら店に着いた。バックヤードへ行き、店長に挨拶した。そして汗を拭き、手早く着替えた。今日の勤務は一昨日と同じメンツだ。バックヤードから出ると、佐竹は飯山と話をしていたが、俺に気づくと声をかけてきた。

「砂川くん、昨日話してた常連のことで話があるんだけど、今日も大丈夫?」

「もちろん大丈夫だよ。そのことでさ、俺も話があるんだ。昨日と同じところだよね?」

 少し食い気味に佐竹に返答した。少し驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔を浮かべて、大丈夫だよ、と答えた。その後ろで飯山が何か言いたげな顔をしていた。

 今日のバイト一昨日と同じような一日だった。いつも通り十五時になると客足は増えて、佐竹と飯山がオーダーを取り、俺と店長が注文されたコーヒーやフードを作る。いつものスタイルだ。そうして注文を捌いていると、十六時になり、客足も落ち着いていた。飯山は今日も十六時が終わりの時間のため、タイムカードを切ると着替えるため店の外へ行った。そのまま帰るものだと思っていたが、店に戻ってきて佐竹に近づくと一言二言話すと帰っていった。シフトのことで相談でもしているのだろうか。そして十七時を過ぎた時、例の常連男性が現れた。

 彼は一昨日と同じように奥のテーブルに座った。そしてやはりコーヒーを二杯頼んだ。俺はコーヒーを淹れるとそのまま彼の元へ持っていった。確認したいことがあるからだ。常連の男性はいつも通り鞄を隣の椅子に置き、中からノートとハンカチを取り出していた。そのハンカチはグレーと紺のチェック柄で、アイロンをしっかりとかけておりピシっと折り畳まれていた。彼は大柄な男がコーヒーを運んできたことに少し驚いていた。俺はカウンターに戻ると常連の男性を観察した。彼はコーヒーの香りを嗅いでいた。そして鼻にハンカチを当てるともう片方のカップを持ち上げ、コーヒーの香りを嗅いでいた。その姿を見て俺は昨日閃いたことが正しいことを確信した。

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