八
翌日はアルバイトが休みだったため、家でダラダラと過ごしていた。仕方なく夏休みの宿題に手をつけた。宿題の量はあまりにも多く、どう考えてもこの一ヶ月半程の期間で終わるはずがないと思ってしまう。
俺が通っているM高校は進学校として知られている。進学校は校則が厳しいイメージがあるが、M高校は自由な校風が特徴だ。制服はもちろんあるが、入学式や卒業式といった行事の時のみに着用すれば良いと言いう決まりになっている。そのため、私服での通学が可能なのだ。一部の男子生徒は毎日違う服だが、ほとんどの男子生徒はジャージやトレーナーといったラフな服装で登校している。一方で女子は制服のような服装で登校している。なんちゃって制服というものらしい。好きな格好で登校できるため、M高校は女子に人気があるらしい。
音楽を聴きながら適当に宿題を片付けていると、電話がかかってきた。確認してみると同じクラスの須藤友也からだった。
「よう、元気にしているか?」
「クーラーをガンガンにかけた涼しい部屋にいてもう寒くて寒くて死にそうだよ」
「なんだよそれ。こっちはこの暑さの中部活やってるのに。」
「部活って、お前は軽音部だろ? 室内じゃないか。クーラー効いてるだろ」
「まあ、それはそうだけどさ。そういや今日はバイトないの?」
「今日はないよ。明日はあるけどさ。それでいきなり電話かけてきて何のようだ?」
「ああ、どうせ暇してるんだろうなって思ってさ。俺も部活が終わって暇なんだよ。」
「なるほど。今どこにいるんだ。」
「H電鉄のU駅にいるよ。楽器店に行こうって思ってさ。そうだ、こっち来いよ。一緒に昼飯食おうぜ」
「いいよ、ちょっと待っててくれ」
須藤はOKと言って電話を切った。須藤は入学した時に俺の前の席に座っていたことがきっかけで知り合った。明るい性格をした、毎日違う服を着ているタイプの男だ。クラスメイトの話ではとてもおしゃれらしい。しかも垂れ目が印象的な、甘い顔立ちをしている。気さくな性格をしているため、男女問わず声をかけられている。須藤も俺とは別の世界の住人だと思っていたが、どうしたものか馬が合いよくつるむようになったのだ。こうやって夏休みでも二人でふらふらと出かけている。U駅に行くにはM駅が最寄駅のため、自転車に乗って向かった。
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