2022年5月9日
なんとか生き残った。
その日1日を終えた感想はそれだった。
出勤してから連休前の仕事を思い出しながら作業を始める。大丈夫。長い連休の後で大きなトラブルは引き起こしてなかったので安心する。
職場の人たちは突然僕が坊主にしたことを不思議に思い、理由を聞いてくれた。
彼女と最後の旅行に行った時のお土産を渡しながら理由を話す。
上司は理解を示してくれ、いっそのこと気持ちの整理のために一日休むのも手だとも言ってくれていた。
僕はそのことに感謝しながら、仕事をすることで忘れようと決めた。
彼女がいない中での仕事は久しぶりのことだった。社会人になってから1人でいた時間よりも2人でいた時間の方が長かったからだ。
1年前の同じ日は1人でいるのが当たり前でなんとも思わなかったのに。
あの時と同じに戻っただけだ。
けれど、ネットフリックスや他のメールが届くたびにポケットに入れていたスマホが通知を鳴らす。
来るはずのない元彼女からLINEじゃないかと、僕は思わず画面を確認する。
僕は一日中仕事に集中できずにいた。
そんな状態で簡単な作業をリハビリのようにこなし、定時が過ぎ帰宅する。
帰った部屋はどこかいつもよりも寂しげに思えた。
彼女がいたから仕事を頑張れたのだ。いつか自分の仕事を話せることができれば話したいと思っていた。
それで喜んでくれる顔が見たかった。
けれど、今はもういない。
喪失感だけが残っている。
それでもその傷は少しずつ和らいできている。これまで一ヶ月もすればどんな不安も後悔も薄らいできた。
今回もそうなってくれるはずだ。
僕はテレビをつけっぱなしにして眠りについた。
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