2022年5月8日

長かった10連休のゴールデンウィークも最後の日になった。今年のゴールデンウィークは悪い意味で忘れられないものとなっている。

最後の日だからと僕は何かしようと考える。

したいことをしよう。

何がしたかったかを考える。

髪を切りたいと思った。そうすることで気分を強制的に変えたいと思った。

どうせなら好きな髪型にしよう。

憧れていたが勇気がなくて出来なかった髪型にする。

若い頃のユアン・マクレガーのような坊主に。

坊主にするのは小学生のころ以来だった。

そう決めたら僕は早速、理容室に赴く。運が良かったのか待たずに散髪することができた。思い切りバリカンで剃ってもらう。

坊主にした理由を店員さんが訊いてきたので、僕は洗いざらい話した。

すでに5回以上は人に話していた内容を。

もう感情が大きく動かずに話すことができた。わかりやすく伝えるのもお手のものだった。

大丈夫。事実を受け入れている証拠だ。

そうしているうちに散髪が終わり、僕はカラオケへと向かう。

感情を大きく発散させたかった。

何を歌おうか。幸か不幸か思い出の曲というものはなかった。

何を歌っても相手を思うことはない。

けれど、どんな曲を歌っても涙が出てくる。

思い出がなくても歌詞から相手を連想してしまっていたのだ。

僕はカラオケボックスの中で1人で泣いていた。

フリーで入っていたが、1時間もせずに退店し自宅に戻る。

次は映画を見ることにした。元々映画は好きだったが彼女がいた時はあまり見ていなかった。

だから、久しぶりに見ようとした。

好きなアメコミ原作の映画でずっと見たかったものだったが、映像がテレビに流れるだけでちっとも頭に入ってこなかった。

1人でいると何も楽しいことがない。

それはもう彼女に対しての未練というよりもただの喪失感だった。

以前にも体験したことのある喪失感。

2年前、就活をしていた時のことだ。第一志望のゲーム会社の最終面接まで進んだ後で落ちてしまったこと。

それと似たような感情だ。

今は別のゲーム会社に就職し、その環境にもそれなりに満足している。

今回もきっと同じようになるだろう。

そこに至るまでは時間が多少なりともかかったけれど。

そうして、僕はゴールデンウィークの最後の一日が終わった。

次の日から仕事。僕は生き延びることはできるだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る