2022年5月7日

目が覚めたのは、眠りについてから5時間後のことだった。窓際のカーテンの隙間からほんのりと光がさしている。

ようやく眠れたが、まだボーっとしている。

身体も重たく二度寝しようと決めた。

けれど、目を閉じると楽しかったころの二人の思い出が走馬灯のように蘇ってくる。

三度目のデートで告白した瞬間。付き合ってから2ヶ月目でやっとの思いで手を握ったこと。

3ヶ月記念のクリスマスではクルーズ船に乗ってビュッフェを食べて、半年記念には嵐山を観光し旅館にも泊まった。

もう戻ることはないのだと思うと嗚咽が止まらなくなった。

洗面台に置いた歯ブラシ。彼女のために用意した食器類。

朝になればおはようのLINEが届くのが当たり前だったが、今はもう来ることはない。

考えを止めようとしてもできることがなかった。僕は抵抗することも出来ず、身を任せるしかなかった。

時間が来ればしなければならないことがある。

僕は10時になり、土曜日のいつものルーティンを開始する。

ゲーム制作。本業の他に制作活動を行なっていた。専門学校時代の友人たちとリモートで繋がっていた。

プログラミングをしている間は少しは他のことを考えられた。

それから僕は服を買いに行く。

これまで我慢していたことを会えてしようと思ったのだ。

付き合ってから自分のためにお金を使うことはほとんどなかった。喜んでもらえることにお金を使いたかったからだ。

でも、もう使う相手がいないのだから我慢する必要がなかった。

ついでに欲しかった本も買う。

その日一日は考える時間がないように常に何かをしていた。家に帰ったら友人たちとゲームをし数時間がたつ。

心の底から楽しいとは言えなかったが、それでも少し気分が落ち着き始めた。

前の日は何も食べることが出来なかったが、ほんの少しだけ固形物を口にすることもできた。

大丈夫。少しづつだが立ち直れるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る