『白い腕』完
○希望と彼女(その後)
某掲示板の怖い噂に、あるコピペが貼ってあった。有名とまではいえないが、地元の学生からはよく知られたものだ。実際に、彼らの大学でも時折話題に上った。
内容と落ちは陳腐だが、事件はニュースで流れたため、興味本位の人々を煽った。コピペでは死んだことになっているトラック運転手も死体発見者も、生きている。
あれから一年後。
山口雄大は志田恵理と別れて写真部も辞めていた。小畑希望と関わらなくなった彼は、楽しく男友達とつるんで、時々気まぐれに女と寝ては、自己嫌悪で後悔している。
コピペでは彼らを殺したとされている腕も、当然転々と飛び回っていない。
彼女は、いつも彼と一緒だ。
「ほら。君のことが書いとるよ」
「・・・・・・」
「恥ずかしか?」
「・・・・・・」
「恥ずかしがることはなかさ。この事故の女性と君とは違うっちゃけん。彼女は前の君の持ち主にすぎんやろ」
「・・・・・・」
「人間は見た目で決まるっちゃなか。精神で決まるとさ。君と彼女は別人ばい。」
「・・・・・・」
「確かにそやね。かわいそか事件やった。でも、君とおいばめぐり合わせてくれたとは彼女やね。今はただ、悼もうで」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「……さぁ、買い物行くばい。今日の夕飯はカレーです」
「・・・・・・」
彼女は、触れられると『カキ』と音を出して応えた。
小畑希望が出した結論。
小畑希望曰く、「彼女は、肉が削げても美しかった」
希望は、彼女を見守り続ける。
「・・・・・・・・・・・・」
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