『白い腕』⑦




○小畑希望、三日目(前)




 衝撃だった。今日は、彼女には冷蔵庫にいてもらっていた。写真部の部会の日だったので、持ち歩いているのは、危険だと考えたのだ。


 その彼女が、腐っていた。


 腐敗の定義は知らないけれど、これは明らかに腐っていた。まだ、外から見ただけではっきりとした変化が見られる程ではなかった。でも、触ってみると、明らかに昨日より感触が柔らかかった。


 ぶよぶよしていた。


 さらに強く握れば、かさぶたが中の圧力に耐え切れず、破れてぐじゅぐじゅした中身が、そこからぼとぼととこぼれ落ちる気がした。さらに悪い想像が頭をよぎる。握った部分の皮が破れだし、その間から臭い腐肉が出てくる気もしたし、毛穴から汁状となって出てくる気もした。


 視覚以上に、嗅覚以上に触覚に訴えてきた。固体というより、ゼリーに近い。


「これは……、しんどかね」


 辛かった。僕は、ただただ辛かった。


 触るに堪えない彼女のことも、自分が彼女を捨てるしかないということが、薄々わかっていることも。



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