13
どんな相手であれ、死神同士で狩ってはならないはずだが、迷いなくそうしようとした。わざとなのかそれとも──。
それにしても、相手が大人であるからか、その力に圧倒され、押されそうになっていた。
受け止めている柄の部分が軋む音がする。
こちらも力ずくで押さえようと無意識に食いしばっている歯が痛んでくる。
どうすりゃあ、いいんだ。
このまま押し合いしていても確実にこちらが負けるし、さっさと勝負を決めないとクロサキがどこかに、あの顔以上に酷いことをされるかもしれない。
あまりにも可哀想すぎる。
未だによく分からない相手だが、性分からなのか放っておけない。
「おらぁぁああ!!」
ほんの一瞬だったが気が緩んだ隙を狙って押しやると怯み、押されていくのが目に見え、やれると斜めに薙ぐ。
が、相手の鎌がその勢いで手から離れるかと思ったが、予想に反して離れることはなく、逆に素早く持ち直した相手にヒュウガの方が大鎌を離すこととなってしまった。
「あっ」
気づいた時には、自身の後ろの方へと飛ばされてしまった。
間合いにはあるものの、少し目を離した隙に狩られるかもしれないと思い、目が離せずに、睨みつけることしか出来なかった。
瞬時に頭が真っ白になる。大鎌が無ければ何も対抗する手段がない。
相手に狩られるしか、なにも。
相手がすぐさま躊躇することなく、振り下ろされる。
生前もこうやって得体の知れない相手に喧嘩を売ったから、罪を犯したのかもしれない。
その罪を死神となってでも犯してしまった。
どうしようもないな、オレは。
自嘲気味に小さく笑って、その死神としての生涯に幕を閉じようと、瞼を閉じた。
「──────」
自分からなかなかの距離があるはずだ。それなのに、寝言で初めて聞いたあの少年の声が聞こえた。
声が聞こえたぐらいで何を言ったかは定かではない。
思わず、目を開けた。──が。
「·····どういう、ことなんだ」
息を呑んだ。
たしかに目の前の相手が思いきり自分に向かって、今にも大鎌を振り下ろそうとするのが目と鼻の先で見えた。のだが、何をしたって動かなかった。
ふとクロサキのことを引きずっている方も急いで見やったが、同様に一歩足を踏みしめた状態のまま、一向に動きはしなかった。
目をぱちくりして、しばらく呆然と見ていたヒュウガであったが、思いきり首を横に振った。
「·····いつまでもこうしている場合じゃねーな」
後方へやられた大鎌を拾って、消し去った後、微動だにしないクロサキの雑に縛られた縄を時間かけて解いた後、改めて呼び起こそうとした。
間近で見ると、腫れた顔の痛ましさが余計に目に見えて、自然と眉が垂れ下がっていた。
どうしてここまでしてクロサキを連れて行こうとしたのか。
──この世界に災いを齎す髪を宿している
──ぞんざいな扱いなのは当たり前だ
刃をぶつけ合った相手の言葉がよぎる。
クロサキの身体中を痛めつけたのはさきほどの人達なのだろうか。他の死神とは違う髪色であるから、こんなにも酷い扱いするのは当たり前なのか。
今の自分には分からない。何もかも分からないが、一つ言えることは。
「おかしすぎるだろ」
たまたまこの髪色を持って産まれただけなのだろう。この世界に災いを齎すというのは、とってつけた言いわけにすぎない。
ヒュウガから見たら、この少年はただの少年だ。なんにでもない。
なんにでも··········。
ヒュウガは意識を失っているクロサキを背負って、よたつきながらも、家路へと着いた。
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