第16話 野外訓練 その5
「そうだっコオ!時間!時間!」
「……」
しかし、コオはふう、と意味もなく深呼吸したり、首回したり、肩回したりと明らかに不自然な動きをし、私の声が聞こえない振りをする。
って、まさか……あなた……。
「コオ!急いで変身を解いて!時間切れるわよっ!」
「……え?あ、ああ。うっかりしてたぜ。……って、あっ」
コオはどこか棒読みでそう言った瞬間、一矢纏わぬ姿になった。
「手遅れだった」
てへっ、と頭をかく。
絶対わざとでしょうが!この露出狂!痴女!
コオは頬を上気させながら小屋への道を歩く。
「ねえ、寒いでしょ。風邪引くわよ。上着かすわよ」
「大丈夫大丈夫。ボクは今、全身で自然を感じているんだっ」
私には他にも感じてるように見えるけど、口にはしない。
「コオ、本当に大丈夫ですか?」
ドラはコオの姿をまるで自分の事であるかのように顔を真っ赤にしてチラチラ見ながら言った。
「大丈夫大丈夫」
本当に見てる方が恥ずかしいんだけど、コオは全く動じない。
いや、そんな私達の姿を見て更に興奮してるような……。
「でも、流石に裸足は痛いな」
コオが足の裏についた小石を払う。
「コオ、靴ならあるぞ」
ハカセがカメラを回しながら、リュックをおろし、中から靴を取り出した。
「ハカセっ気が効くな!……ピッタシだぜっ」
「いやっちょっと待って!なんで靴持ち歩いてるのよ!?」
「「こんなこともあろうかと!」」
ハカセとコオが見事にハモってハイタッチ。
って、あなた達、何やってんの?
特にコオ、よく恥ずかしくないわね!!
「それじゃあハカセ、服は?服の予備は?」
「ない」
私の問いにハカセは即答した。
その言葉を聞いてドラがほっと安堵のため息をする。
もし、変身に失敗していたら自分も山を裸で歩き回る事になっていたと思ったのだろう。
ドラがぎゅっと私の手を掴んだ。
「ラックには感謝しかありませんっ」
「い、いいのよ。同じ魔法少女なんだから」
って、それよりっ、
「ハカセ!図ったわね!絶対これ計画通りでしょ!」
「そんなわけあるか」
そう言ってハカセはリュックから更にサイズの違う靴を二つ取り出す。
「靴が二つ余った」
間違いなく、私とドラ用だ!
「この男は……じゃあ、せめてその白衣をコオに貸して上げてよ」
「断る」
「お構いなく」
二人が私の提案を拒否。
「って、ハカセ、コオが風邪引いてもいいの?」
「お構いなく」
「コオはちょっと黙ってて!どうなのハカセ!」
ハカセがふう、とため息をついた。
「ラック」
「な、何よっ?」
「俺から白衣を取ったら博士に見えないだろう」
「白衣着ててもAVカメラマンにしか見えてないわよっ!」
「失敬な!」
ハカセは本気で怒ったようだ。
何故なら、
「ラック、あんまり騒がしいと……妹へのお土産がなくなるぞ」
などと私を脅したのだ!
なんて卑怯な!
私は即言い返してやったわ!
「ごめんなさい!私が悪かったです!!」
魔法少女はこうあるべきだ 鳥頭さんぽ @fumian
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