第14話 野外訓練 その3
食後の休憩を取った後、私達は小屋を後にする。
そしてこれからの野外訓練について尋ねる事にした。
ここまでハカセから説明が全くないからねっ。
「それで野外訓練て何するんですか?現地についたら教えてるって言ってましたけどまだ聞いてませんよ」
「討伐だ」
「討伐だって!?」
その言葉にコオが大きく反応した。
「何を討伐するんだハカセ?」
コオが目を輝かせながらハカセに尋ね、大した事なさそうに言った。
「うむ。熊だ。熊を放った」
「……へ?」
このバカセは今何と言った?
「女子は大好きだろ熊」
バカセは笑顔で信じられない事を言った。
「それはぬいぐるみとかデフォルメされたモノでしょ!ねえ、コオ!」
「……熊か。懐かしいな」
いや、何本当に懐かしそうな顔してるの?
そういえば剣術得意だったし、あなた昔何やってたのっ!?
私の反応が予想外だったようでハカセが困ったような顔をする。
「ダメだったか?喜ぶと思ったんだが」
「本物はダメに決まってるでしょ!本気で言ってるなら医者行って頭の中診てもらいなさい!」
「ははは。安心しろ。俺は医者の免許はないが、そこらのヘボ医者より知識も技術もあるぞ」
この金持ちボンボンが!いや、ボンボンなのかは知らないけど……って、ちょっと待って。
「ハカセ、今技術あるっていいました?」
「ああ。俺は昔、ブラックジャックに憧れ……」
「OK!もう結構!」
ハカセはまだ言足りなさそうな顔をしていたが、顔が真面目になった。
「……熊の動きが思ったより速いな」
ハカセがカメラ持った手とは反対側の手でスマホをタップしながら言う。
どうやらドローンか何かで熊の動きを監視していたようだった。
「麓まで下りたら大変な事になるぞ。下の村には知らせてないからな」
「ちょっ、ちょちょっとっー!」
私が慌てる中、
「ひゃっはー!昼飯は熊鍋だなっ!」
ドラがどっかのゴロツキみたいな奇声を発するとすっごい危ない足取りで山を下り始めた。
「ちょっとドラ!そんな酔っ払って危ないわよ!てかさっき昼飯食べたでしょ!」
転けそうになったドラを支える。
「それに熊鍋って、誰が調理するのよ。私は解体なんてできないわよ」
「セイバーがあるじゃないか」
すぐそばにやって来たコオがそう言った。
「そういう意味じゃないわよ!」
「よっしゃいっちょやったるぜ!!」
ドラがそう叫ぶと変身の呪文を唱える。
続けてコオが、
「わくわくするぜっ!」
と変身呪文を唱える。
そして私が変身しようとした時だった。
「きゃー、やだっもうっーなんでこんなところでっ!!」
ドラが顔を真っ赤にしてその場にしゃがみ込む。
一方、コオはというと、
「あっ!!しまった!変身時間五分に設定してたぜ!!」
「あなた達は何やってるのよっ!!」
とりあえず、コオはどうしようもないからドラのほうをなんとかしないと。
「しっかりしてドラ!こんなところで変身失敗したら全裸よ!あのハカセのことだから絶対着替え用意してないわよ!あなたはここから全裸で帰る気!?」
「い、いやですうー!」
「そうでしょう!さあ、早く変身ポーズをとって!」
「ううっ……」
ドラはこの時、初めて一回で変身を成功させたのだった。
それを見届けて私が変身した。
私とドラが先行する事にした。
振り返ると全裸のコオが後から追って来ていた。
なんか嬉しそうに見えるけど気のせいにする。
しかし、魔法少女となった私達に追いつけるはずはなく、どんどん離されていく。
そしてコオの姿は見えなくなった。
「あのっ、ラック。あたし喧嘩もした事ないんだけど、それが熊って無理ですぅ」
「私だってないわよっ!でもこの魔法少女ギアは確かよ!バカセの脳はイカれてるけど、このスーツだけは頑丈だから!」
「……ラック、査定マイナス十」
いつのまにか隣を並走していたハカセがそんな事を呟いた。
「じょ、上司の悪口ぐらい普通じゃないのっ?ってか、ハカセはなんで私達のスピードについて来れるのよ!?」
そう、私達はギアの力を借りて生身では到底出せないスピードで走っているのだ。
ちなみに素顔を晒しているが、バリアに守られているため、風はまったく受けない。
「君達に追いつけなきゃ大事なデータが取れないだろう」
と、ハカセは当然という顔で私の求めた回答とは違う事を言った。
「そんな事より近いぞ」
ハカセの言葉を聞き、身を引き締めた。
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