第13話 野外訓練 その2
まあ、本人が納得してるならいいか、と思っているとコオが私の肩をツンツン突いてきた。
「なあ、ラック」
「どうしたの?」
「変身だけどさ、最長の五分に設定しようぜっ」
コオが満面の笑みで言った。
はい、コオ露出狂確定!
前から思ってたけど。
「嫌よ」
「大丈夫。誰も見てないんだぜ。大自然の中で素っ裸。絶対気持ちいいぜ!こんな開放感味わえるチャンスは滅多にないぞ!時間いっぱい味わなくちゃ勿体無い!」
こ、これは私の想像を超えた露出狂だった。
やっぱり、普段ミニスカートでノーパンとかしてそう。
怖くて聞かないけど。
「コオ、誰も見てないって言うけど、あそこにカメラ構えてる変態がいるわよ?」
と、ハカセを指差す。
「ハカセがいるのはいつもの事だろ」
「そ、それはそうだけど」
「外で堂々と裸体をさらけ出しての変身!ううっ、考えただけでも体熱くなるよなっ!?」
「私を変態仲間に引き込もうとするのはやめて!」
「こういうのを一石二鳥って言うんだよなっ!」
「絶対違うから!」
あっ、変身で思い出したわ!
「ハカセ!」
「ん?」
目を離した隙にドラにビールを渡していたハカセがこっちを見る。
気づけば既に空き缶が二つも転がっていた。
このバカセ、またもやりやがったわね!
「どうしたラック?」
ハカセは私のガンつけをものともせず平然とした表情で尋ねる。
私はため息をつきながら尋ねる。
「……以前、変身の時に正体を隠すために仮面か何か被って顔隠すとか言ってませんでした?あれはどうなったんです?」
そう、魔法少女ギアの設定を見てもそんなものは見当たらないのだ。
「ああ、それか。ちょっと問題が発生してな。実装できる段階になったら連絡する。だが、安心しろ。それ以外は完璧だ!」
「完璧じゃないですよ!野外訓練に間に合わないなら延期すべきじゃないですか!?」
「ここに来てそれを言うのか?」
「う……」
確かに。なんで私はもっと早く気づかなかったのかしら……。
「ラック。顔隠したら意味ないだろ」
コオが不満顔で言った。
「なんの意味よ!なんの!私は銃刀法違反もわいせつ物陳列罪でも捕まりたくないからね!」
「大丈夫だ。君達なら芸術として認められる!いやっ認めて見せる!」
バカセがどこか誇らしげな顔で言った。
「頼もしいぜ!これで安心だな!」
とコオ。
「んわけないでしょ!」
と文句を言ってる中で、
「ひゃっはー!外で飲む酒は格別だぜーっ!」
ドラが野盗とかが叫びそうな奇声を上げた。
……ダメだこりゃ。
「そういえば司令官は来てないんですね」
「うむ。彼女は別件で動いてもらっている」
「そうなんですか」
「そうだ。司令官の事で思い出した」
「はい?」
「前回話せばよかったんだが、説教で忘れていた」
「は、はあ」
「ラック、あれはよくない」
「あれ、とは?」
「司令官不要とか人の職を奪おうとしただろう」
「言いがかりです!そんな事考えてませんから!深読みし過ぎです!」
「そうか?」
「そうです」
「ならいいんだがな。君達はどうも相性が悪いようだから心配しているんだ。会えばすぐ喧嘩腰になるだろ」
「私はなってません!向こうが喧嘩を売ってくるんですっ!」
「そうかあ?」
「そうですっ」
「じゃあ、まあそう言う事にしとくか」
ハカセは私の言い分に納得できなかったようだけどそれ以上は言ってこなかった。
さて、山の中にぽつんと建っていた小屋で昼食を終えた。
昼食は冷凍パックを解凍しただけのもので、全然期待してなかったけどすごく美味しかった。
なんでも有名店のシェフに特別に作らせたものだったらしい。
店で食べたら万札が飛ぶかもしれない。
ああ、妹にも食べさせてあげたかった。
……残ったらお持ち帰りできないかな?
ダメもとで聞いたらOKだった!
ちょっとやる気が出てきたわ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます