第12話 野外訓練 その1

「来週末、野外訓練を行う事にした」


 いつもの訓練のあと、ハカセがそんな事を言い出した。


「野外か……ふふふ。外で変身……開放感が……ふふふ」

「コオ?大丈夫?」

「え?ああ、大丈夫大丈夫」


 しかし、コオの顔は緩みっぱなしだ。しかも、ちょっと、エッチい……。

 おっと、そんな事より確認しなきゃ。


「あの、それ、捕まったりしません?」

「大丈夫だ。訓練場所は私有地の山だ。関係者以外入ってこない」

「それはつまりバレなきゃいいって考えですよね?見つかったらまずいんですよね?全然大丈夫じゃないですよね?」

「そんな事より酒は出るんだろうな!」

「いやいや、ドラ、そんな事で済まさないで!」


 しかし、ハカセは私達の質問をスルー。


「だだし、ラディは研究所で別メニューをこなしてもらう。ラディは知っての通り病弱で外出許可が出なかったこともあるが、彼女の装備であるロングバスターライフルは強力すぎるからな。流石に私有地であってもぶっ放すのはまずい」

「ご迷惑をおかけしてすみません」


 車椅子からペコリとラディが頭を下げる。


「あのっ、私もバスターライフルありますので……」

「あなたにはセイバーもあるでしょう」


 すかさず司令官が私をまるで親の敵を見るような目で言った。


 ほんと、私だけ態度が違いますねっ!


「あのっ」

「……まだあるのですか?」


 だからなんで私だけそんなに態度が違うのよっ!

 

「私、妹がいるので泊まりとかは無理なんですけど……」

「大丈夫だ。日帰りだ」

「そ、そうですか」

「本当は泊まりも考えていたんだが、ラディが一人だけ仲間外れみたいで寂しがるからな」

「ハカセっ、それは言わない約束ですっ」

 

 ……あー、ラディのねえ。そうなんだー。

 まあ、日帰りだから文句はないけどー。



 で、当日の朝。

 私達は魔法少女研究所に集合だった。そこからハカセの運転する車で目的地へ移動することになっていた。

 私とコオが待っているとハカセがドラを乗せてやって来た。

 どうやらドラの家まで迎えに行ったようだ。

 

 ドアを開けると酒臭かった。

 そう、ドラはすでに出来上がっていた。


「って、ハカセっ!また無理矢理連れて来たんですか?」

「失敬だな。そんな訳ないだろう。ちゃんと説得して快諾してもらったぞ」


 そう言ったハカセはどこか誇らしげだった。


 ……怪しい。


「ほらっ、いいから早く乗れ」

「はいはい」

「了解っ」


 助手席にコオ、後部座席に出来上がったドラと私を乗せて出発した。

 休憩を一度挟んで正午前にどこかの山に到着した。

 ちなみにドラは途中で眠りこけて到着するまで熟睡していた。



「……ここはどこ?」


 酔いが覚めたドラが不安げな表情で辺りを見渡す。

 

「ハカセ!やっぱり無理矢理連れて来たんじゃないですか!」

「失敬だな。酔って記憶が飛んでるだけだ。なんの問題もない」

「大ありでしょう!」

「ちゃんと快諾した証拠もある」

「証拠?」


 私が胡散臭そうな目でハカセを見たからか、「失敬だな」と言いながらスマホをいじり証拠の音声を再生する。

 

『野外訓練について来てくれるかなー?』

『いいろもー!』


 ロレツが回っていないが、確かにドラの声だった。


「って、これ、ドラを酔わせて言わせてるじゃないですか!」

「うむ?だからどうした?ドラはこう見えて立派な大人だぞ。自分の発言には責任を取らないとな」

「いや、だから酔わせて言わせた事なんて無効でしょう!」

「そんな事言われてもな。もう来てるしな」


 ハカセが膨れっ面で反論する。

 って、子供か!

 いや、その歳で魔法少女魔法少女って言ってるぐらいだから精神年齢は間違いなく子供ね!


 私にドラがペコリと頭を下げた。


「ありがとう、ラック。でもハカセの言う通りです」

「え?それでいいのドラ?」

「ええ。確かにあたしは大人。魔法少女の中でも最年長だから」


 と真剣な表情で言うが、見た目が中学生なのでいまいち説得力がなかった。

 

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