貸し切りの店で……

 水巻さんに連れていかれたのはハンバーガーショップ。


 10席もない小さなお店。


 照明がすこし暗く設定されていて、

 ムードある雰囲気になっていた。


 一番奥の席に案内された。


「ここは小学校の友達の経営している店なんです。

 小さい場所ですけど無理言って


 貸し切りにしてもらったんです」


 白い紙袋が席に隠すように置いてあって、


 彼は何やらガサゴソと探し物をしている。

「えーっと」


 ……聞いていた年齢通りなら3歳上のはずなのだ。


 女性なれしていないことが面白くもあり、


 可愛らしくもある。


「こんな僕ですが、結婚してください」


 彼が差し出したのは婚約指輪ではなく

 バラの花束。


 何十本あるのだろうか。


 百本近くの赤い熱意の証。


 出会って話をしてメールして。


 1か月ちょっとしかたっていない。


 でも家族の話もした。

 仕事の話も、性格上の話も、恋愛も。


 そして親友にも会わせてもらった。


「はい。お願いします」

 こんな私でよかったら。


 急なプロポーズゆえにすぐに入籍とならない。

「まずはあなたの両親と合わせてください」

「もちろん」

二人で話し合った末、出会った記念日に入籍したいと意見があった。

同じ県内に住む二人だが、市が違うために少々手間がかかる。

「役所周りは任せてくださいね」

多恵の言葉に「心強いな」と笑う彼。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る