第7話 世間は狭い

笑いすぎた親友は涙をぬぐいながら聞いてきた。

「で、どうするの?


慎重なあんたがアプリまで使って

出会った相手なんでしょ?


結婚は勢いよ」


「……だよね。にしても笑いすぎでしょ」

まだまだ爆笑したいようで口がふよふよしている。

「アハハ。だってそんなに深刻になってたのか

と思うと笑えてきて。

焦るのもわかるけど相談してくれたら、独身男子一緒に探したよ」


「だって淋しいんだもん……フラれたし」


「同級生でも独身ってもう思いつかないくらいだし。

まさか危険いっぱいのアプリで探す

なんて面白くって」


「おい、失礼だぞ。

いつまでも腹抱えてるなんて」


「淋しいのもわかるし、不安なものわかるけどまずは周りに相談しなさい。真剣に出会い求めている人だけではないのよ。

多恵の性格的に結婚相談所に行くのかなって思ってたよ。


超モテないわけでもないのに」


高校から多恵は告白を何度かされていた。

まっったくモテないわけではないのだ。


「水巻、結婚に定番の雑誌買ってやるからな。

プロポーズ早くしろ」

フォローのつもりだろうが、

親友の旦那さんだって半笑いである。


「ああ。……お前だってずっと

笑いこらえてるだろうが。

モテた男は余裕があっていいよな」

「やっぱりこの人、学生の時からモテたのね」

「いまでも……ですか」

「そう。この人ったらいろいろな人に社交辞令いうものだから女の人からにらまれることが多いのよ。迷惑極まりないわ」

親友の旦那様は確かに長身でかっこいいと思う。嫉妬も多かろう。

しかしはんなりと笑顔で言えるのを見る限り、うまくライバルをいなしているようだ。

笑いのツボが浅いという共通点はもともとなのか似てきているのかは謎である。


似たもの夫婦でうらやましい限りだ。


「そうですね。

なんやかんや多恵さんってモテそうなので


他の男に取られる前に入籍したいところですね」


水巻さんは平然と言うが、彼は気づいているのだろうか?


その言葉は婚約したものが言うセリフであることに。


付き合う云々でもたついているカップルの話ではない気が


するのは気のせいではないだろう。


「よっと。さて、

私らは赤子を迎える準備があるので

これで失礼しますね」


親友夫婦はあっさりと帰ってしまった。


「この後も

少しも付き合ってもらえますか?」

「ええ」


「ディナー行きましょう」


「え? そんな高級な場所へは……」

「大丈夫ですよ。

そんなに格式ばったところへは行きません。

フランクに行ける行きつけのお店があるんです」


それならば一安心。

赤くなりっぱなしの頬を隠しながら承諾した。

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