第20話 致命の一撃

 強い敵と戦いながら、試行錯誤を繰り返したおかげか。戦闘系の熟練度が大幅に増加していた。

 この様子なら、一度きりでも望んだ力に手が届く。


 ステータスを閉じて、奥へと足を向けた。

 ダンジョンを進みながら、リザードマンと戦う。


 初めは、リザードマンの懐に入り込むのも難しかった。

 神咲のバフがなくなったせいだ。


 身体能力が落ちたことで、これまでのような戦い方が出来ないのだ。

 それでも、明日斗はうまく動きを最適化して、リザードマンに迫る。


 攻撃も、敏捷が鈍化したせいか、うまく隙間に刺さらない。

 それでも根気強く試行錯誤を繰り返しながら、明日斗は鱗の隙間を狙い続けた。


 何十度、攻撃を繰り出したか。

 明日斗はやっとリザードマンを倒した。


>>初級短剣術Lv3→4(89%→0%)


「はあ……はあ……」


 後ろを振り返ると、新たな気配が近づいてくる。

 前に倒した個体がリポップしたのだ。

 呼吸を整える暇もない。


 新手と戦い、苦戦しつつも上手く短剣を操り、これを倒す。


>>初級短剣術Lv4(0%→11%)


 リポップした敵と戦闘に入り、倒してはまた、リポップした敵と戦う。

 次第に、呼吸を整える時間が生まれた。

 リザードマンを倒す速度が上がったのだ。


>>初級短剣術Lv4(11%→35%)


 戦闘後、小休止を入れても敵がリポップしなくなったところで、明日斗は奥へと進み始めた。


 遭遇する敵と戦い、攻撃を躱し、鱗の隙間を突く。

 いま、明日斗の頭の中にあるのはただ、効率よく敵を倒すことだけだった。


 神咲の死も、夢見の滴も、ハウンドドッグも、一片たりとも浮かばない。


(もっと、もっと!)


 明日斗は、どこまでも強くなりたかった。

 もう二度と、自分のせいで誰かの命が失われないように。

 どこまでも強くなって、弱いくせに傲っていた自分を、完全否定するのだ。


 明日斗が持っている武器は、Dランクの魔物を相手にするには圧倒的に性能が足りていなかった。


 軽い攻撃ではダメージが与えられない。

 相手を倒すには、一撃必殺が求められた。


 もし良い武器があれば、これほど明日斗は苦戦しなかっただろう。

 しかし奇しくもその境遇が、天性を開花させた。


>>新たな偉業を達成しました


・天性アサシンの持ち主が、格上の魔物百体を一撃で倒す(100/100体)

 報酬1:致命の一撃

 報酬2:感覚+10


 そのポップアップを見て、明日斗は足を止めた。


 インベントリを確認すると、新たにスキルスクロールが出現していた。


「致命の一撃?」

「なんだ、どうした?」

「ん、ああ。偉業達成で致命の一撃ってスキルが貰えたんだ」

「そりゃすげぇ。致命の一撃は、ショップにも売ってねぇから、めちゃくちゃレアスキルだぜ!」

「そうなのか」

「一体、どういう条件だったんだ?」

「アサシンが格上の魔物百体を一撃で倒す」

「…………それ、お前以外に達成出来る奴いるのか?」

「知らん」


 早速使って、効果をチェックする。


○致命の一撃(SR)

 説明:命を刈り取る一撃を繰り出す。クリティカルヒットが発生しやすくなる。不意打ちを行えば、クリティカル発生率が倍増する。※アサシン専用


 専用スキルを入手したのはこれが初めてだ。

 共通スキルとは違い、専用スキルは指定された天性の持ち主にしか使えないが、その分性能が格段に良いと言われている。


 今回のスキルは、アサシン専用だけあって、アサシンらしいものだった。

 一撃で倒すことに専念していなければ、入手出来なかっただろう。


 スキルの取得ついでに、ステータスを確認する。



○名前:結希 明日斗(23)

 レベル:25→33 天性:アサシン

 ランク:E→D SP:5→45

 所持G:7→145

○身体能力

 筋力:33 体力:25 魔力:4

 精神:4 敏捷:60 感覚:32→42

○スキル

 ・初級短剣術Lv4→中級短剣術Lv1(35%→1%)

 ・致命の一撃Lv1(0%)NEW

 ・回避Lv3→4(64%→74%)

 ・跳躍Lv3(31%→94%)

 ・記憶再生Lv2(42%→87%)

 ・看破の魔眼Lv1(60%→98%)

 ・リターンLv1(31%)



 いよいよ、中級ハンターと呼ばれるDランクに足を踏み入れた。

 おまけに、これまで積み重なった偉業達成ボーナスは、SP39ポイント――約レベル8アップ分に相当する。

 それを加味すると、実質Cランク相当のステータスになる。


 これで以前のように、最弱ハンターと笑われることは二度とないだろう。


 熟練度もかなり増加している。

 短剣術に至っては、レベル5に到達したことで、中級スキルにアップグレードしていた。


「中級は……たしか、ショップだと十万ゴールドだったか」


 絶対に入手出来ないこともないが、育てる方が圧倒的に安く済むため、わざわざ中級スキルを購入するものはいない。

 いるとすれば、パワーレベリングで中身がスカスカになったハンターくらいなものだろう。それでも、ゴールドが足りずに購入出来ない者がほとんどだが。



○名前:結希 明日斗(23)

 レベル:33 天性:アサシン

 ランク:D SP:45→0

 所持G:145

○身体能力

 筋力:33→48 体力:25→35 魔力:4

 精神:4 敏捷:60→80 感覚:42

○スキル

 ・中級短剣術Lv1(1%)

 ・致命の一撃Lv1(0%)

 ・回避Lv3→4(74%)

 ・跳躍Lv3(94%)

 ・記憶再生Lv2(87%)

 ・看破の魔眼Lv1(98%)

 ・リターンLv1(31%)



 ステータスを振り終えたところで、明日斗は自らの下に迫る気配を感知した。

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