第1話

 ――なぜこうなったのか。告白でも始まるのではと思わされる空気の教室にて。二人ですごろくをしている現状。僕は今日一日のことを思い出していた。


 「ね、ねぇ、今日時間ある?放課後、ここにさ、来てほしんだけど」

と震えるような声で言いながら、紙を渡される。

 「・・・いいよ。ここに行けばいいんだね」

 「う、うん」

その後は、手を小さく振り、「それじゃあ」と言って小走りに去って行った彼女。それが今朝の出来事。


 この約束をしてから何があるのか今日一日中ドキドキした。だって、そうじゃん!呼び出されたんだよ。放課後に!空き教室に!女子に!

 ・・・でも、期待しすぎは良くない。全く別の用の可能性もある。落ち着け、落ち着け。勘違いは良くない。うん。よく聞くではないか、恋愛イベントと思ったら、全く違う用事だったって。


 手紙をくれたのは、長い付き合いの友達である。・・・・幼馴染に近いのかな。僕は、彼女について、一緒にいると楽しいし、心地よいと思っている。

 ・・・・要は自分が気になっているのである。中身だけでなく外見も可愛い!今朝に会った時も照れていて可愛かった。手紙をもらった時は嬉しくて悶えそうであった。まぁ、そんなことをしたら、不審者なので何とか心の中で収めたが。


 彼女は、小柄でショートボブのかわいらしい女の子である。性格はどちらかというと照れ屋で、内弁慶なところがある。今日会ったところも家の近くの公園で人も少なかった。だからこそ、思い切り渡せたのかもしれない。

 他にも、楽しいことを考えるのが得意で明るく良い子でもある。優しいとかたくさん誉め言葉が出てしまう。

 うーん、べたぼれだな。顔には出さないようにしているし、態度にも出ていないはず。・・・・これで出てたら、恥ずかしいな。

 

 授業が終わり、約束の時間がくる。僕は約束通り教室の前に来ていた。緊張してきた。「ふーーー」と一つ深呼吸を入れる。少し、落ち着いたところでドアに手をかける。

 そして、覚悟を決めて教室のドアを開ける。彼女はもう教室の中で待っていた。

 夕日が入り込み、心地よい風でカーテンが揺れていた。後ろの方には片づけられた机と椅子が綺麗に並べられており、部屋の中央付近には、そこの前からとったのであろうと思われる机といすのセットが二つ置いてある。彼女は窓の方に立っており、日があたり綺麗だった。

 彼女はこちらに気づいたみたいで、口を開いた。

 「今日は、き、来てくれてありがとう」

挨拶を簡単に交わした後に、沈黙が流れる。しばらく経ち、彼女は本題にはいろうと口を開ける。

 「今日は、今日はね」

と真剣になにかを伝えようと彼女は口を動かし小さく体を揺らしている。でも、続きは聞こえなかった。口をぱくぱくとしている。目は真剣でなにかを訴えているような強さが伺える。

 「だ、大丈夫。ちゃ、ちゃんと聞くよ。ゆっくりで、自分のペースで大丈夫」

 こちらも緊張が解けてないようだ。

 僕の発言を聞いて彼女は一旦目をつぶり、深く深呼吸をする。彼女の方も緊張しているようだ。ということは重要な何かを伝えようとしていることが予想できる。もしかして、あるのか?・・・邪推はいけない。純粋に聞きたい。彼女の口から。一体どんな内容だったとしても。

 何回かしたところで落ち着いたのか話を続けようとする。

 「ふー。・・・・今日はね、伝えたいことがあって」

 「うん」

 「・・・えーと、ね!」

 「うん」

 もう一度彼女は深く深呼吸をすると、教室に響く声で言った。

 「わ、私とすごろくをしてほしいの!!!!!!」

 「うん」

 勢いで返事をしてしまう。ん?なんて?聞き間違い?

 「え?」

 「すごろくをしてほしいの!」

とはっきりと聞こえる声で言った。

 聞き間違いじゃなかったーーー。え、どうして?????

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る