殺し屋だった彼女と魔物討伐
陽も傾き始めた夕暮れ時、集落内では未だ魔物との戦闘が続いていた。
トロールを含め、近くの洞窟にも集められていた残りの魔物達が、戦闘の音を聞きつけ集落に雪崩れ込んできたのだ。
まぁ、魔物の数は順調に減ってきてるし、もう少しでここにいる魔物は殲滅出来そうだね。厄介だったトロールも、もう3体を残すだけみたいだし。一方で僕達冒険者はまだ誰1人戦線離脱してない。
そう、今のところ冒険者達は圧倒的優位である。しかしその間には、20体のトロールが現れたその時を上回る鋭い緊張感が漂っていた。
未だ姿を見せない、ロットドラゴンが原因だろうね。昔、依頼で傭兵として扮装地帯に赴いた時を思い出す、死地に立っているような空気の張り詰め方をしてるよ。
冒険者のランクは"同ランクに区分される魔物を2体以上相手取った際に安定して討伐できる事"を主な基準として決定されるらしい。例えばAランクの中で下位の魔物を、Bランクでも上位の実力を持つ冒険者が討伐することはあるそうだ。
けれど、Sランクの魔物となればまた、話は違う。今まで討伐されたSランクの魔物は、それこそ規格外の実力を持つSランク冒険者か、Aランク冒険者を複数のBランク冒険者が援護して何とか討伐したという記録しかない、と本に書いてあった。
ドラゴンか。でかい羽が生えた硬いトカゲのイメージがあるけど、ナイフは通らないかな。まぁ、ゾンビらしいけど。実際に遭遇したら銃も使う必要があるかもね。
でもなぁ、これから殺す
流石は高ランク冒険者というべきか、そんな中でも魔物の討伐は滞ることなく淡々と進んでゆく。魔物の討伐もほとんど済み、さすがにSランクの魔物はもう来ないのではないかと、空気が少し緩みかけたその時だった。
「ヴォォォォォ」
低くしゃがれた声をあげて、竜の亡骸が空を飛んで行く。
なるほど、あれが。鳴き声を聞いていると背中に悪寒が走る。人としての本能が、本能的にあれを受け付けない感じかな。全くおぞましい。
それは、紛れもなくお伽噺に出て来る竜だった。所々に骨が見えており、纏っているのが腐肉であるという点を除けば。
確かにアンデットとは言うけど、本当にドラゴンというより竜の形をしただけのゾンビだね。強さも、感覚的には吸血魔族よりも厄介そう。Sランクってのはこのレベルかぁ。
というかあの感じ、ナイフどころか銃が効くかも怪しくないかい?っと、なんか降って来た!危ない危ない。
ロットドラゴンは赤紫色の液体をボタボタと降らしながら、僕と冒険者達の頭上を通り過ぎて行く。
うわぁ、液体が降ったところの草が変色してるよ。なんか変な煙も出てきてるし。うぇ、臭いきっつ……
「うわぁぁぁ、俺の腕が!」「痛てぇっ、背中が焼けるようだ」「クソッ、毒だっ」
魔物との戦いで液体を避けきれずに浴びた数人の冒険者達が、苦痛の声をあげた。
「ロットドラゴンの腐食毒だ!毒を食らった奴は集まってすぐに洗い流せっ、煙も毒性があるから吸い込むなよ!」
へぇ、これも毒なのか。
「おい、あのクソドラゴン、街の方に向かってないか?」
「マズイ、街には吸血魔族相手のもう片割れもいるらしい。Aランクの
なるほど、僕達に見向きもしないと思ったら狙いはグレイの街か。女吸血魔族が死ぬ前に何らかの命令を残したのか、はたまた違う理由があるのか。仕事でもないのにあんな怪物と戦うのは、正直ごめんだけど…街には一度戻っておきたい。暗殺依頼の報酬もまだ貰ってないしね。
僕は駆け抜け様に、Dランクの獣型魔物であるレッドウルフ5体を手早く片付ける。
さ、あと少し、気張ってこうか。
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