殺し屋だった彼女とランク試験・Ⅰ
翌日の朝。
さて、今日も図書館で1日調べものかな。
昨日と同じ道を辿り図書館へ向かっていた僕に、突然後ろから声が掛けられる。
「一昨日の姉ちゃん!何処か行くなら案内しようか、安くしとくよ」
振り返るとそこにいたのは、一昨日宿屋への案内を頼んだ少年だ
名前は確か、タンジだったよね。
「どうも、タンジ少年。今日は図書館で調べものをするつもりだから、道案内は必要ないかな」
そう断ると、タンジ少年は大袈裟にがっくりと肩を落とした。
「そっかー、残念。どっかにこの街来たばかりの旅人とかいないかなぁ。ん、あれ?そういや姉ちゃん、一昨日ギルドに登録したんじゃないの?今日はランク試験だろ」
「ランク試験?あぁ、なんかギルドでそんなこと言われたかも……」
「姉ちゃん忘れてたのかよ!もうすぐ始まる時間だから、急いだ方が良いぞ」
うーん、話聞いた限り、正直ランク試験受けなくても良いんだけど…損することはないだろうし、図書館の方も急ぎって訳じゃないか。
「そうか、ありがとう。いやぁ助かったよ、完全に忘れてたからね」
そう言って銅貨を1枚投げる。
「おっ?金を取る気はなかったんだけど、貰えるってなら貰っとくぜ。まいど!」
「そういや、名前も教えてなかったね。僕はフウ。何かあったらこれからもよろしく頼むよ」
「おう、試験頑張れよフウの姉ちゃん!」
ランク試験かぁ。確か戦闘能力を確かめるって言ってたけど…銃は…うん使わないでおこう。
この世界の技術水準を見る限り、銃なんて持ってる人は僕以外にいないだろうし。あれは奥の手だ。
となると、ナイフでの戦闘だね。僕は、狙撃の方が得意なんだけどなぁ。
「あっ、フウさん。ランク試験の受付ですね。参加して下さって嬉しいです。ギルドはいつでも人手不足なので、戦い慣れている方には、討伐依頼などを早く受けて頂きたいんです」
その口調は、まるで僕が試験でランクを上げるだろうと確信しているようだった。
「見るだけで、相手が戦い慣れてるか分かるのかい?」
「毎日冒険者の方々を見てますからね。試験が行われるのは奥の訓練場です。フウさん以外の方はもう揃っていますから、すぐに始まりますよ」
毎日見てるからと言って、そこまで分かるようになるもんなのかね。ま、良いか。
さぁさぁと急かすように、笑顔の受付嬢に訓練場へと案内される。
「ギルドマスター、最後の方が来ました」
「おう、じゃあ少し早いが始めるか」
訓練場にはギルドマスターと呼ばれた中年くらいの男性と、不機嫌そうな顔をしたまだ若い青年が1人。そして試験を受けるであろう、新人冒険者8人がいた。ふと、その中の1人が目に止まる。
なんか、あの少年見た事ある気がするなぁ。何処で見たんだっけ?
「今月の初期ランク試験受験者は9人だな。試験の内容は簡単だ。俺の隣にいるこいつと戦ってもらう。こいつは17歳でCランクになった天才だ。まぁ若干性格には難があるが…胸を借りるつもりで戦うと良い」
自分達と対して変わらない、人によっては年下のその青年がCランクだと聞いて、集まった新人冒険者達は驚き困惑を隠せないようだ。
「審判はギルドマスターの俺が行う。戦闘継続が厳しいと判断したら終了だ。勝ち負けだけじゃなく、戦い方や立ち回りを見てランクは決める。じゃあ試験を始める。戦いたい奴から前に出てこい」
「結局、そのガキを倒したら問答無用でDランクスタートってことだよな?なら早いもん勝ちだ、俺からやらせて貰うぜギルドマスター」
自信ありげな男が1人、そう宣言して前に出る。それを目の端で見ながらも、僕はまだ少年のことについて考えていた。
何処かで…あっ、あの時盗賊達を倒してた、転生者らしき少年だ!服が変わるだけで分からなくなるもんだなぁ。
まさか、こんなところでまた見ることになるとは、奇遇なこともあるものだね。
そんなことを考えているうちに、勝つと宣言して威勢よく前に出た男は、一瞬で試験官の青年に打ちのめされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます