高校生だった彼、勇者に選ばれる
真っ白な場所で目を覚ました。記憶が曖昧だけど、確か高校の帰りに乗用車が歩道に突っ込んで来て…俺はどうしたんだっけ?
「あなたは車に轢かれる寸前だった少女を助け、代わりにその命を失ったのです」
そうか、俺は死んだのか。まだやりたいことも、たくさんあったんだけどな……
まぁ悲しむ家族もいないし、その女の子が助かったなら良いか。
「はい、そして私が輪廻の輪に吸収されるはずだったあなたの魂をここに連れてきました」
そうか、輪廻の輪にね…?ってあんた誰だ?!
「いや遅くないですか?なんか普通に会話が通じるから、この展開はもう理解してるんだと思ったのですが!」
いや展開って何?というかなんで、声に出してないのに話が通じてるんだ?!
「ゴホンッ、では私が最初から丁寧に説明しましょう。まず私はあなた達が神と呼ぶ存在です。この世界の管理をしています。そして話が出来てるのは、私が人の剥き出しの思考をよむことが出来るからです。それに魂の状態のあなたでは喋ることは出来ませんよ」
魂?神様?…なんとなく話が読めてきたぞ。これ、最近よく聞く異世界転生ってやつだろ。そういう作品、読んだことがあるぞ。
というか今、俺思考剥き出しなの?そもそも思考剥き出しって何?!
「急に冷静になりましたね。まぁ分かって頂けたなら幸いです。早速ですが、あなたには地球とは異なる世界、『フレム』で勇者になって頂きます」
あ、思考云々の話はガン無視ですか、そうですか。
勇者かぁ…なら転生の理由は大方、魔王をたおせってとこだろう?
「良く分かっていますね、話が早くて助かります。呼び方は違いますが、現在フレムには厄災と呼ばれる、あなたの言うところの魔王のような個体が8体います。あなたにはそのうち、人類と敵対している3体を倒して頂きたいのです」
ちょっと待って、魔王って8体もいるの?!というか1体倒してはい終わり、ハッピーエンドちゃんちゃん、じゃないのかよ!
「魔王ではなく厄災です。ご安心下さい、今回転生する勇者はあなただけではありません。全部で5人の勇者がフレムに存在する人類の国のどこかに転生します」
そうか、5人転生するのか、なら安心だ。とはならないよね?!8体いるんだろ、魔王、じゃなくて厄災!
「いえ敵対してるのは3体ですから……」
今人類と敵対してなくとも、これからする可能性もあるんだろ。それに他の勇者としっかり連携がとれるかも分からない。RPGゲームでパーティー組む、みたいな簡単な話じゃないんだから……
「ッチ、こいつ良く現実を理解してますね」
おい、舌打ち聞こえてるぞ。というかこいつって言いやがったな。
「うるさいですねぇ、文句ばっかり。だいたい、勇者召喚って疲れるんですよ…神なんて言っても私、中間管理職みたいなもんですし?この転生だって上からやれって言われただけだで、大したことは知らないんですよ。他にも色々仕事あって忙しいんだから、転生の説明くらい天使にやらせとけってんです」
い、いきなり口が悪くなったな。神様も神様で大変なのは分かった。まぁそれはそれとして俺に愚痴られてもどうにも出来ないから、とりあえずその勇者に関してもう少し詳しく話し合いをですね。
「まぁ他の勇者との合流はこちらで各国に神託を下すので問題ありません。厄災に対しての戦力は、フレムの方で整えて下さい。勇者の看板があれば、仲間はすぐに集まるでしょう。さてそろそろ時間ですので、転生を開始します」
なっ、ちょっと待てまだ聞きたいことあるから!あ、ヤバい意識が……
「あっ、召喚位置の固定するの忘れてました。ヤバい、これ何処に召喚されるか分からないし、関係ない人間も召喚に巻き込まれるかも……」
薄れ行く意識の中、そんな言葉が聞こえた。
…この自称神、次あったら絶対殴る。
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