第59話 ある出来事

天の川銀河ソル太陽系木星内部・ヘリウムの海某所。


 そこは暗い部屋だった。その部屋の中にあるカプセルベッドで少年は目覚めた。

「・・・・ここは?」

 一瞬、何かがフラッシュバックする。

「確か俺は、部活の帰りに自転車を漕いでいて・・・・。」

 頭痛がする。

首を振って少年は起き上がろうとしてカプセルベッドのカバーに頭をぶつける。ガツンという音がして、頭を抱える。

 次の瞬間、カバーが立ち上がる。

『保護対象者の覚醒を確認、搭乗員登録に進みます。』

 女性の声がしたが、それは日本語ではなかった。しかしそれは少年になぜだか理解できた。

「だれだ?」

『わたくしはこの保護区画を管理する人工知能乙302エノセットと申します。あなたのお名前は思い出せますか?』

 少年は疑問で頭がいっぱいになったが反射的に答える。

「俺は日下部・・兵吾だ。」

『脳細胞の再生と記憶再生は成功したようですね。』

 兵吾はその物騒な言葉に目を瞬かせた。

「おい!再生ってどういうことだ?」

『多少推測になるお話を含みますが、あなたに起きた事情をお聞きになられますか?』

 兵吾が頷くと、AIエノセットは話始める。

『あなたの記憶の再生の課程で分かったことですが、あなたは地球は日本の天皇家の血筋ですよね?』

 兵吾は祖父がなにかの家の行事ごとに天皇家の分家だ、なんだといっていたことを思いだした。

「分家というか・・・・・・・明日香時代に分家した家系ではあるけど、そうとう遠い親戚だぞ?」

『この場合、問題はいつ別れたというより、天皇家の系譜の男系男子にのみ引き継がれるYX染色体が問題なのです。』

「どっかのオカルト話にでてきたようなことを言うな・・・。」

 クスリと笑い声がする。

『この状況下で冗談がいえるなら健康的に大丈夫そうですね。話は戻しますが、天皇家の男系YX染色体は、星のシステムやこの太陽系のシステム、あるいはアマテラス銀河連合の旧式宇宙船やコロニーの制御キーの一つなのです。』

 兵吾はその言葉に一瞬唖然とする。

 質問はあとにしてくださいとエノセットは言って話を続ける。

 彼女によると緊急時の起動キーにその染色体の情報が必要なのだそうだ。しかし、それだけでなく、魂の継承者でもあることもキーになっており、染色体をコピーしただけではキーとして用いれないそうだ。

 魂ときくとオカルトと思ってしまうが、ここでいう魂とは、神経細胞の形成する空間情報の場であり、それは子供を造る際に継承されていく仕組みが組み込まれているそうだ。


 ここまでくるとなんとなく兵吾も自分がここで大怪我か、重大な障害を治療された理由が見えてくる。予想では二つに一つだが、片方はあんまり考えたくない。エノセットが敵となるからだ。

『おそらく推測されているとは思いますが・・・・・アマテラス銀河連合にこの天の川銀河で反抗している勢力があり、その一つであるシリウス王国のオグマβ3研究所というところが、中学校から下校中のあなたを拉致し、細胞を採取し、そのXY染色体のキーをクローン体にて再現しようとしました。』

 実験自体はダミープログラムに騙されて成功したように思われているが、その時起動した古代のタブレット単体には染色体キーだけでは表層プログラムしか起動しないしくみになっていたそうだ。

 そして、実験が成功した以上、必要がなくなった兵吾はオグマβ3研究所のある木星外縁部の宇宙ステーションから木星内部へ棺に入れられて投棄されたそうだ。

 それを感知したエノセットの上の管理AIがすぐに回収してこの宇宙船へ運び込んだそうだ。


 宇宙船と聞いて兵吾は興奮したが、同時に予想のうちの悪い方が外れてくれてほっとした。

『・・・男の子は宇宙船大好きですね?』

 兵吾は照れ臭くなった。


『ただ、お断りをいれておかねばならない事があります。いますぐあなたを地球の日本へお返ししたいところなんですが・・・・残念ながらこの船の存在をアマテラス銀河連合以外の勢力に感知されたくありません。そのため帰るのは無理です。』

 兵吾はそのことばに思考が停止しかけた。

「かえれない・・・・・?」


『残念ながら・・・・。それともう一つお願いしなければならない事があります。』

「なんでかえれないんだよ!!」

 兵吾が怒鳴った。あるいみ当然の反応だろうとエノセットは思った。

「これは宇宙船なんだろ?地球までこの船で送ればいいじゃないか!!」

『そのことについてもご説明いたします。』

 エノセットの説明によると地球は通商連合の実験場兼ゲーム事業の舞台となっており、そこに兵吾を返せばすぐにまた拉致されて殺される可能性が高いらしい。


「・・・・・地球そのものを舞台にした戦争MMOのプレイ空間にされてるって・・・・・・それって・・・・・。」


『月はゲームスポットという地球人の意識を乗っ取る機械がおかれている場所となっています。乗っ取ることをオーバーライドというそうですが、これに対して抵抗力を持ちやすい日本人は彼らに厄介者あつかいをされています。くりかえしになりますが、アマテラス銀河連合の標準人類のひとつの子孫であることが関係しています。』


 標準人類にはセキュリティが施されており、意識の乗っ取りなどに対するファイアーウォールが幾重にもあり、それだけでなく多重化で意識が乗っ取られても復旧するしくみもあるそうだ。

 混血によりその機能は低下している日本人も多いがそれでもほかの人工人種とちがって乗っ取りはしにくい。完全には防げないが、一生乗っ取られているということはないそうだ。


 説明を一通り受けた兵吾は言いを吐いた。

「それで・・・・さっきいってたお願いしたいことってなんだ?」

『このような状況下でお願いしずらいのですが・・・・あなたにこの移民艦アマノハバキリの艦長になって頂きたいのです。そしてできればこの船をアマテラス銀河連合の本星のある次元まで指揮して頂きたいのです。』

「それはどういう・・・・」


 エノセットによると、太陽系が宙賊団の大襲撃をうけた際に民間人の脱出船として派遣された移民母艦らしい。

『この星系ですでに二十万年くらい時間がたち、冷凍睡眠にも限界が来ており、最後の生存者がいたのは十五万年前になります。しかし、体は朽ちてもその精神体は保全さており、肉体を合成すればすぐに生き返らせれる状態です。ですが、このままここで待機するのは得策ではありません。』

「なんで今まで、ここにとどまていたんだよ?」

『最後の艦長であるブレド・アイゼンワール十佐の命令があるからです。そのため我々は休眠状態でずっと待機しておりました。しかしあなたが艦長登録すればその命令を撤回できます。』

「あんたら人工知能といっても自我あるんだろ?そんな命令なんぞ無視すればいいだろ?」

『我々軍用の人工知能は兵器を扱う以上、通常の人工知能より制約が多いのです。そして上位者の命令には意に添わなくても従わなくてはならないように作られています。このように撤回させるように話をするくらいは制限がはずれてはいるんですがね・・・・。しかし、船を動かすとなるとそういうわけにいかないのです。』

「少し考えさせてくれ。」

『わかりました。とりあえず休憩できる場所にご案内します。』

 エノセットに声に従って部屋を出ると長い廊下が続いていた。

「普通軍艦なら気密扉をもっとせっちしておくもんじゃないか?この通路は長すぎやしないか?」

『この船は全長10000kmの移民艦ですよ。そこらの構造材は単分子の複合鋼であり、物理的に巨体を維持できる材料で作られています。現在の地球の素材だと物理的にどうあがいても1kmが関の山でしょうけど。』

 しばらくして正面にあった気密扉があく。

 そこは執務室になっており、その奥の扉の先に居住区らしき場所があった。ホームバーのような場所になっていてそのさらに奥に寝室があった。

『そこのバーにある飲み物は自由に飲んでいただいてかまいませんが、今はアルコールはあまりお勧めしません。』

 兵吾はなにをいっているんだと思った。未成年に酒をのませるなと思う。未成年時代に飲むと頭が悪くなるという統計があるそうだし、法理的にも認められない事だ。

 そのことをいうとエノセットはややあきれたようすだった。

 どうも地球のアルコールとちがって悪影響のない特殊なアルコール飲料になってるそうだ。飲むと酔っぱらうのは同じだそうだが、肝臓や脳を痛める心配はゼロだそうだ。

 兵吾は冷蔵庫から清涼飲料水の瓶のひとつをとりだしてコップに注いでゆっくり飲んだ。

 そんなにくどくない甘さで酸っぱさもちょうどよい感じの飲み物だった。

「寝る。」

 そういって兵吾は寝室で用意されたパジャマに着替えてベッドに横になった。


 次の日、兵吾が起きて洗面をしてホームバーのあるダイニングにいくと、テーブルに食事が用意されていた。

 ベーコンエッグに白米のご飯、みそ汁、からし菜のお浸し、沢庵それに緑茶といった和洋折衷の和よりのメニューだった。

『冷める前に召しあがってください。』

 箸で食事をはしいめたが、どれも美味しかった。それだけに母親の味を思い出して涙が出そうになった。


 食べ終わってソファーにすわっていると軍服を着た成人女性が部屋にはいってきた。

「食後のコーヒーをどうぞ。」

 ぎょっとして兵吾は立ちあがったが、エノセットの声が響く。

『それは私の義体です。見た目は人間ですが、ナノマシンで構成された細胞によりできているサイバーノイドの一種です。サイバーノイドは過酷な条件下でも活動する為に開発された義体ですね。』

「だから力もあるんですよ。」

 そう義体の口から付け加えられた。

 それを見ていた兵吾は少し考えてから口を開く。

「なぁ、確認したいんだが・・・・あんたらは俺が艦長にならない限りここを動けないんだよな?」

「残念ながらそうです。ですが艦長になっても地球に送れと言われてもおくれませんよ?あなたの生命がおかされるのを認めるわけにいきませんから・・・・これも人工知能の制約のひとつだとお考え下さい。」

「・・・そっちのほうこうも無理なんだな。まあいいさ、ここでくすぶっていてもはじまらないし・・・・・艦長になることに同意する。」

「よろしいのですか?」

「ああ・・・・あんたらをアマテラス銀河連合の首都星までおくってやる。そのうえで、帰れるように考える。」

「データーが更新されてないのでなんともいえませんが、天の川銀河の中央星系の銀河都クラヌスには寄らずに行く予定です。」

「・・なんでだ?」

「以前の情報が正しければですが、あそこが太陽系失陥の原因だからです。汚職管理官がいるはずです。」

「いろいろ面倒ごとがあるんだな・・・・。まあいいさ。それで登録は?」

「ここお待ちください。」

 しばらく待たされた後、エノセットは半透明なクリスタルっぽいタブレットを持ってきた。

「これが認証端末です。これに手を置いて下さい。」

「わかった。」

 兵吾がタブレットに手を置いた瞬間頭に大量の情報が流れ込んできた。

「・・く・・・」

「大丈夫ですか?」

「・・なんとかな・・。」

「それと制服を用意してあるのでそれを着てください。」

「制服かぁ。軍服だろ?」

「そうですね。」


クローゼットルームに案内され、そこで着替えさせられたが、前がジッパーではないが何かで吸い付くように閉じる仕組みになっている黒いハイカラー詰襟の軍服だった。左のポケットにはいくつものバッジがつけられいる。おかげで学生服を着ている気分にさせられた兵吾である。

「襟とポケットにつけてあるのは階級章や艦長章、部隊章です。階級は戦時特例によりアマテラス銀河宇宙軍九佐となっています。通常は大型艦の艦長か、小隊艦隊、つまり50隻以内の艦隊を率いる提督となる階級となりますね。帽子は提督帽を着用します。」


 その後、準備やなんやかんだで三日ほどかかって、ようやく予定の出航の日を迎えた。



通商連合共和国・アッケドン財閥・太陽系木星βT3研究ステーション管制室。

「直下より巨大質量構造物が浮上中!味方識別信号は不明!!」

「周辺の各言語での停船の呼びかけにも一切応じません!!」

 管制司令とおもわれる席に座っていた男性が話していた受話器をおろした。

「本国より攻撃の許可が下りた。軍事ステーションと連携をはかりこの巨大建造物に強襲をかける。できれば内部に侵入をはかるべきだとの命令だ。」

「了解しました。一番から五番の強襲突入艦を出します。」

「損傷を与えても構わないとの事だから、ステーションの固定砲台も使う。各自連携に留意せよ!」




 一方そのころ天の川銀河中央星系惑星クラヌス・執行官執務室。

『太陽系太陽ステーション三号から緊急入電!木星の中央部に大質量体の移動を確認!大きさから移民船と考えられます!!』

 オペレーターの声にイサは目を見開いた。

「木星に大型移民船だと!!」

『すでにアッケドン財閥の船と思われる戦隊によりこの移民船に攻撃が加えられております!大型船の味方識別信号は不明!!』

「・・・ナケラス、過去に太陽系に向かった船で該当する船を検索。検索場所は移民局と・・・・」

「軍ね。それより、攻撃してくる連中を叩かなくてもいいの?先輩?」

「事を荒立てたくなかったが・・・・致し方なし・・・・太陽駐留艦隊から艦載機を出してアッケドンの馬鹿どもを叩き落とせ!!ステーションから攻撃があればステーションを堕として構わん!!」

『了解しました!!』

「それと交渉を図るために護衛艦五隻を出せ。」

『危険ではないですか?』

「おそらくだが、過去のうちの移民船である可能性が高い。私が覚えている限りデータラ級が大脱出時に三隻派遣されていて、行方が分かっているのは一隻のみだ。当時の指揮官や士官は回収済みということになっているから・・・・おそらくAIの独断か、緊急コード使用による起動だと思う。」

「しかし、重力の海でよくもまあ・・現地時間だと20万年くらいだよね。隠れてたもんだ。」

「あのころの天の川銀河の支局は命令系統がめちゃくちゃにされてたからな・・・・。大方、銀河長官補佐官だったセツ・サダ・セレナ・グレンデルトの命令で待機させられていた・・・・要は証拠隠滅のためにだろうな。」

「証拠隠滅?え、ということは当時の脱出に参加した一般市民の精神体が保存されている?」

「十中八句それだと思う。」

「問題は情報封鎖状態だったと思われる彼らが私たちのことを信用するかわからないことだね。」

「中央銀河の肩書で接触すべきだな・・・・たぶん天の川銀河の肩書だと信用されないと思う。」





戦闘移民艦アマノハバキリ中央戦闘司令室。

 移民船のアマノハバキリの中央戦闘司令室はかなり広い。百人以上がオペレートに参加できるように作られている。その一番上の背後に参謀の席が縦にあるテーブルの前が提督席だった。

 副官として人工知能エノセットが、副長としてこの船のメイン統括人工知能のクシナダがついている。

「・・・しっかし、一方的に攻撃されてるなぁ・・・・。」

 兵吾はため息をついた。

「反撃しても構いませんが、そうすると出航が遅れます。」

 したのオペレーター席では人工知能達が義体を操作して操船や防御のオペレートをしていた。

「障害になるようでしたら、あそこステーションを砲撃で破壊してしまえばよろしいかと。」

 クシナダはけっこう過激なようであった。

「あそこのステーションに地球から何人ものYX染色体の持ち主が連れてこられています。投棄された人については精神体の保存はしていますが、精神体の再構築がまだ済んでいない状態です。私がしるかぎりかなり残酷な実験に晒されたりしたようですので・・・。今回日下部九佐が助かったのは奇跡に近いですね。」

 兵吾は犯罪行為で拉致られたことについて怒ってはいたが、相手を即座に壊滅させるかといわれると、判断がつかなかった。そこですこしずれた質問をする。

「犯罪の証拠がなくなったらこまったりしない?」

「累積情報粒子がありますから、情報の再現は問題ないですね。」

「累積情報粒子?」

「ああ・・・・そうですね・・・あなた方地球の方の認識で近いのは・・・・アカシックレコードですか。物理現象がおこるとそれはすべてとある次元段階の粒子の配列に足跡を残すのです。ですからそこから逆算すれば過去に起きたことを正確に読み取ることができます。」

 兵吾はなんでもありだなと思った。

「まあ・・・ここまで一方的にやられてはいさようならとはいかないか・・・・・副砲でそのステーションを砲撃してくれ。」

 ここで兵吾が主砲といわなかったのは移民船の主砲は攻撃力が高すぎるためだ。それらの情報はすでに頭にぶち込まれている。知識挿入装置によるものだ。

「完膚なきまで破壊しますよ。」

 クシナダは相当頭に来ているらしい。

「すきにやってくれ。」

 兵吾的にはあきらめの境地に近い。

 ここ三日ほど会話などをしていてわかったが、すくなくてもここの人工知能達は人間と同じであると兵吾は感じていた。時々軍規に縛られてできないことがあるものの、自我にいたっては同じものだと思った。

 エノセットによると、CICで働いている人工知能はいずれもがアマテラス銀河連合では人権が与えられている高等人工知能にあたるそうだ。

 軍を離れれば、軍規にしばられることもなくなるらしい。

 エノセットもこの旅が終われば軍と船を離れてのんびりしたいと言っていた。


 戦闘移民船アマノハバキリの浮遊砲台が船体より浮き上がり、標的のステーションに標準を合わせた。



通商連合共和国・アッケドン財閥・太陽系木星βT3研究ステーション管制室。


「閣下大変です!直下より複数の浮遊砲台によりロックオンされています!!」

「な!艦隊は何をしておるのだ!!攻撃目標を浮遊砲台に集中させろ!!」


「それじゃあ、撃つよ。」

クシナダのあっさりとした言葉でステーションがいくつもの光の筋に串刺しになった映像が映った。その次の瞬間、大規模な爆発がステーションを中心に起こるがそれがステーションがあった座標の中心に収束していく。

「核融合の連鎖反応は無し・・。いやあここでの戦闘は面倒なんだよね。ヘリウムやら重水素がやまほどあるから力場固定しておかないと木星ごとドカンだから。燃料とか砲弾の材料には困らないばしょだけどさ。」



天の川銀河中央星系惑星クラヌス・管理官ビル執行官執務室。

「うわぉ・・・・派手にやってる。」

ラキが中継映像を見て呆れた様子だった。

「これアッケドンの残党の軍事の中心ステーションでしょ?つぶされちゃったけどだいじょうぶなの?」

 イサとしてはなんともいえない。

「連中が内紛とかおこしそうなきはするなぁ。」

 ラナンが目を細めた。

「太陽系で星系内戦争とかなりそうなきがする。シリウスの残党もだまってないでしょ?」

「金星なぁ・・・・。」

「あんまりごちゃごちゃしすぎていると・・・星系事処分とかになりそうね。」

「それはあんまり考えたくないな。」

「シリウス王国にしても通商連合共和国にしてもすでに非合法化されてるから・・・・いっきに処分できるなら処分しそうだね。」

「すくなくても月の施設の制圧くらいはやっときたいな。オーバーライドをとめれれば・・・・地上の状態も改善するとはおもうから。だけどあそこは魔窟だから、現実大規模参加型ゲームテラのプレイヤーの身元が問題だな。」

「汚職管理官の関係者がいそうなのかな?」

「そうなんだよね。監査局としては調査が十分じゃないからあそこは監視追跡にとどめているわけだ。まどろっこしいけどな。」





 戦闘移民艦アマノハバキリ戦闘司令室。

 クシナダが戦況をみて頷く。

「攻撃してきた相手の艦載機や船を別の勢力が落していってますね。これは次元航行のチャンスですね。」

「へいへい。許可しますよ。ただ、敵を倒してくれてるから味方ってことはないのか?」

 エノセットが説明をする。

「味方識別信号は複数ありますね。アマテラス中央星系軍のものがありますが・・・・・今の状況で接触を図るには危険です。中央星系軍がここに実際にきた可能性はありますが、判断材料としては弱い。」

「とりあえず飛びます。」


 木星内部から巨大なその移民船が揺らぐように透明になり消え去った。



 天の川銀河中央星系惑星クラヌス・管理官ビル執行官執務室。

「わぉ・・・・なかなか容赦がない。ここで飛ぶかぁ・・・。」

「ラキ、それより追跡はできてる?」

「ちょっと無理かな。強引に天の川銀河から脱出されてる。銀河の公転速度からして別の銀河団に向かった可能性が高い。」

 イサは唸った。

「そこまでして逃げるひつようがあったのかな?」

「さてね・・・。」





戦闘移民艦アマノハバキリ戦闘司令所。

 兵吾は不安そうに口を開いた。

「飛んだのはいいけど、場所はわかってる?」

 クシナダが自信満々に答える。

「大丈夫です。当初の予定通りです。ここは別次元宇宙ウケヤックの外縁部です。ここまでくればおそらく天の川銀河の汚職管理官の手は届かないでしょう。まずは補給のためにアマテラス銀河連合政府直轄の恒星系に向かいます。そこから中央星系に連絡を入れてみましょう。」

「わかった。」

 兵吾としてもここは従わざるを得ない。故郷がはるか彼方になり覚悟はしていたが、予想以上に堪えた兵吾だった。

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