第五章 ナロンギデアと地球

第55話 地球滅亡への序曲

 ここは地球は日本の石川県にある某所にある高級レストランだ。このレストランでは日本の上級市民と通称される知識階級の人々がよく会食にきていた。

 そんな中、セツ・サダ・セレナ・グレンデルドの複製体である複製体四号は日本での支援者である森家の重臣と会食をしていた。

 ただ、今回の会食は少々問題があった。それというのも複製体四号は隣りの県の小学校教員をしつつ、複製体四号が宇宙で学んだ教育法に管理主義を導入して、教室内にエスケープゴートを故意につくり、それを不満のはけ口にすることで教室統治を簡易化するという仕組みを研究授業として文部省に申請し、何度か研究発表会を開いていたが、その教室の一つだった小学校で自殺者がでたことだ。

 エスケープゴートにされていた男子児童がいじめを苦に自殺したのだ。

 そのことをもみ消すために文部省や警察庁などに顔がきく森家の関係者に接触をはかっていた。

「・・・・・伺った件は了承しましたが、たびたびこう自殺者がでるようでは先生の研究授業の有効性に疑問符がつきましょう。」

 森家の使いがいうように、自殺者がでたのはこれが初ではないのだ。森家としては教育系の家として教育の場の統治が合理的に行なえれば別にどんな手法でも構わないというスタンスだ。

 運営を行う以上、必ずエスケープゴート役は生じてくる。それを恣意的にコントロールして指名してしまうことで安定性をえるなら構わないというわけだ。しかしこれはイジメを公認するようなもので一般市民には聞かせれない事柄だ。

 そのうえ、複製体四号が森家とは別に共産主義のジョカの国家の支援を受けていることも森家では把握はしていた。

 彼女が自衛隊小松基地の滑走路の不法占拠をおこなって自衛隊反対の運動を部下の教員たちに行わせたことも把握していた。


 森家といっても日本各地にあるが、石川県の森家は国産主義を掲げ、なるべく生活に必要なものは自国で生産すべきだという保守系議員の派閥でもある。それは複製体四号が裏で主宰している

ニッポン共産主義ネットワーク国際コミュニティ、略してNiconicoとは相いれない。代理人の柴田としてはローマ字表記にするならニッポンではなくジャパンを使うべきかと思うのだが、複製体四号はニッポンと使うことにこだわっている様子だった。

 複製体四号が都合よく資金源に森家をつかっていることはこの森家の代理人をしている柴田にもわかっていたが、森家の上の方はその危機的な状況にたいする認識があまりなされていない。

 柴田としては正直左翼教員の複製体四号との付き合いなんぞ、切り捨ててしまいたいが、森家の数人が複製体四号の手管で、小学校高学年の女子児童に手を出させられて弱みを握られてしまっている。

 そのうえその美人局は、森家の政敵を葬り去るのにも利用されていて、ある意味ぐるぐるの関係になっている。もちろん森家の上層部は潔癖なのでそのようなことはないが、中間以下がそれに利用されてしまっていて、ただの代理人にすぎない柴田はどうしようもなかった。

 数年前に日本の首相がセクハラで退陣した件にも複製体四号の関与があった。柴田としては隣県の小学校をこれ以上共産主義の洗脳教育の場や美人局の場にさせたくはなかったが、どうしようもない。

 さらに問題は、複製体四号が共産主義のジョカの国家の共産党軍である人民解放軍の命令で日本各地で工作活動をしていることだ。これでは森家はいつの時点かで、Niconicoのやっている悪事のすべての汚名を着せられてつぶされるのが目に見えている。

 上級市民はすべからく殲滅するというのが人民解放軍の方針だからだ。すでに占領先のチベット、ウイグル、ネパールでの虐殺行為は目に余るほどだ。


 日本がジョカの国に侵略されるのも時間の問題だ。とくにマスコミへの浸透が酷く、まともな報道がなされていない。

 ここで自殺者がでたということでできれば責任追及を行いたいというのは森家の上層部の意向だが、あくまでできればである。

 代理人として柴田は胃が痛い交渉を複製体四号としていた。森家の当主は人民解放軍の日本侵攻に森家が利用されることを苦々しく考えているのは確かだが、なかなか一族の人間を切り捨てるという判断が下せずにいた。





 天の川銀河中央星クラヌス管理官ビル執行官執務室。

「こいつは酷いな。」

 イサは報告書を読んで息を吐いた。

「銀河標準人類の子孫である日本人がジョカの因子に排外されつつあるなぁ。」

「また、ナロンギデア・・・地球の件ですか。」

「そうなんだけどさ、中心にいるの複製体らしいんだよね。日本国民の対アメリカ感情を悪化させて、アメリカ合衆国民にも日本人に対する感情を悪化させて、同盟関係にひびをいれまくってる。太平洋戦争時もふくめるとこの大規模情報工作は二回目だね。

 ジョカの国のやることはえげつない。日本国内でジョカの悪口を言っただけで、冤罪を着せられて逮捕・訴追されている件がかなり増えてきている。言論統制まで他国に仕掛けているともいえるね。」

「それはまた救いがないね。」

「おまけにこの森家という文教族議員の家系は、革命を起こしたときに悪いことすべてした元凶としてでっち上げて処刑する準備までされてる。森家は確かに利用はされていたけど・・・悪事をやっていたのこの複製四号とその組織なのにだ。」

「セツ・サダ・セレナ・グレンデルトはどこまでも祟りますね。」

「まったくだ。」

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