第53話 資格試験

 シロ・アマナギはいまかつてないほど充実した生活を送っている。かつては親に捨てられたストリートチルドレンだった。それをワイオンに拾われ、採掘オペレーター補助に育てられた。

 そして運命が流転し、今は姓名持ちの、それなりの家の一員となっている。そして今はいくつもの宇宙を管理・領有しているアマテラス銀河連合国立管理官学校に通い、キャリアを積んでいる。

 資格を取っていくというのは今まで感じたことのない快感だ。管理官学校の課程では管理官だけでなく、付随していくつかの資格もとることができる。

 今回のテストでシロは一級宇宙船操船免許を取得した。これで船さえあれば自由に宇宙を航行できる。もっとも規則がいろいろあって当初思っていたほど自由には航行できないことも知ったが。

 一級宇宙船操船免許は十五キロメートル以内の大きさの宇宙船を操船することが可能になる免許だ。これには移動型小型コロニーも含まれる。

 それ以上の大型船になると初段免許以上が必要になる。個人で大型船をもっているひともままいるが、たいていの個人仕様の宇宙船なら一級免許でことたりるのである。

 シロがいま住んでいるグループ寮に帰ると、クラッカーが鳴った。

「シロ君!免許取得おめでとう!!」

 そういって妻のフェンラールやその部下のピーリン達が拍手をしてくれた。

「ふふふ・・・これでプリウム一世改め、ランカスター号のサブパイロットはシロ君に任せれるね!!」

 フェンラールがそういってシロと肩をくんできた。

 ケーキが用意されており、シロは自分がこんな幸せであるなんて夢のようだと思った。



「シロ君はねちゃったか。」

 シロの寝ているベッドに腰かけてシロのほほをフェンラールはつついている。

「あら、お嬢様は残念そうですね?」

「もうお嬢様じゃないんだけど?」

「私的にお嬢様を奥様とよぶのは妙に抵抗感があるのですよね?」

 昔からの付き合いの腹心はにべもない一言だ。

「くぅ・・・・それなら頑張って子供つくっちゃうか!」

「シリウスの後継者ですか?」

「いやいや・・・そんなものは背負わせれない。それはそうと、イサさんからサラも転生処理が終わったって聞いたよ。」

「おや・・・マザーシステムがですか。」

「サラもこっちに合流する気らしい。必死に今勉強中だとか?」

「うむむ・・・これは腹心の座が危ないのでしょうか?」

 フェンラールがピーリンのこめかみを指で軽く押す。

「何いってるんだか。どうせイサさんの地獄の講習を今受けてるところでしょ。ピーリンはいつまでも私の腹心だよ。」

 その言葉にピーリンは一礼する。そのあとおどけて言う。

「私も相手を探したいところですね~~。お嬢様も身を固められたことですし~~。」

「・・それは相手をみつけろと暗に言ってるなぁ?」

「シリウスの作法なら・・・・ですけどね。いまは関係ないですけどね。」

「それは八段目クリアしてからにしよう。そのほうが選択肢が多いし。」

「行き遅れになるのは嫌なのですけど?」

「最悪転生すれば若返れる。素体の遺伝子調整にお金かかるみたいだけど・・・。」

「それくらいの費用はだせますけどね・・・。親からもらった血統が途切れるというのはすこしばかり感傷がはいりますね。」

「あ~~まあね。自然交配で生き残ってるシリウス人は私らだけだろうしね。」

「あのクローン連中と似たことになることには抵抗がありますね。」

「こっちはちゃんと自分の遺伝子が残るからいいと思うけど?」

「まあ、そうですね。それはいいとしても、完全にデザインヒューマンにする気にはなれませんね。」

「こっちのひとにすると肉体は服みたいな感覚だよね?」

「そんな感じですね。」

「私も価値観の差に愕然としたけどね。」

「宇宙をあたらしくつくってまで植民する人口拡大を行っている原動力なのかもしれませんね。」

「さて明日は全員で法学の進級試験だ。全員合格はかたいだろうけど、頑張っていこう!!」

「かしこまりました。わたしもあと少ししたら寝ますね。御用があれば遠慮なく。」

「ピーリンもお休み。」

「お休みなさい。お嬢様。」

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