第48話 過ぎていく日々

 第十管理官学校に入学してからしばらくたち、フェンラール達が新しい学校の生活に慣れてきたころ、ちょっとした事件がおきた。

 それというのはフェンラールを既婚者だとは知らない同級生に、執拗に関係を迫られるという出来事だった。

 フェンラールはすでに夫がいるのでとけんもほろろに断っていたが、フェンラールと一緒にいたシロに、離婚しろとまで言う始末。

 相手の同級生はカイエ・クマノクスビという現在のアラテラス銀河連合の中でも銘家の出らしく、やたら気取ったところがある青年だった。年のころは十八やそこらで若い。

 授業中でもなにかとシロと張り合って、成績を自慢したりしてくる。

 正直、フェンラールからするとウザったいだけの相手でしかない。最初からアプローチの仕方を間違っているとしか言いようがない。

 そのうちにこのカイエの伯母とかいう人物が、下校時に待ち構えていて、結婚を迫ろうとしてくる。

 あまりに酷いので、たまりかねてフェンラールがイサに連絡すると、話を聞いてかなり苦笑いをしていた。

『クマノクスビ家は古い家だけど、そこまで偉そうに言える家じゃないよ。たぶんアマナギの名前にひかれてきたかもしれないなぁ・・・・これは俺のミスだ。』

 イサによるとアマナギ家は、現在のアマテラス銀河連合で、銘氏年鑑にのるくらいには有力な家になっているそうだ。それはどちらかといえばイサとラナンの子供たちが活躍した結果だ。それでもイサの活躍も否定はできない。

『ヤゴコロオモイカネの名前を継いだ奴があんまりいなくてね。長すぎていやなんだとか。第十二段管理官としてそれなりに仕事を続けているとこんなもんだな。とりあえず、こっちから管理官事務局に連絡して対処してもらうよ。すぐに効果がでるかはわからないけどそれまでは我慢してほしい。』

 イサにそういわれてフェンラールはひとまず安心した。シロのほうもほうと胸をなでおろしている。



 数日後、カイエ・クマノクスビに停学半年の通知が学校の掲示板に張り出されていた。それを見たらしいカイエが茫然としているのを遠くからフェンラールとシロは気づかれないように見ていた。

「フェル、あれ大丈夫かな?」

「シロ君、気にしないでいいと思うよ。」

 フェンラール達は一言そういいあってから校舎へ急ぐ。この校舎がある場所は、11級から5級までの管理官学校の合同校舎となっている。5級から初段まででまた別の大陸に校舎がある。

 したがって、グループ寮も五級以上にあがれば、その大陸で確保する必要がある。

 十級だけでも一カ月くらいは最低かかる予定だが、一応四学年ほどが一つの級に存在している。飛び級制度があるため、その学年の科目試験さえ合格すれば上の学年になれるし、所定の単位を集めれば卒業試験を即日で受けれる。

 中には四日で一学年から四学年に進級した猛者もいるらしい。これはもちろん上の学年の科目試験も下の学年であっても受けれるかためだ。

「三年で八段まで上るって、いまさらながらイサさんの行動は凄まじいね。」

 ピーリンがフェンラールの慨嘆に応える。

「・・まあご本人はシリウス王国への復讐心を糧にしたっておしゃってましたね。」

「家族かぁ・・・いま私はシロ君がいるけど・・・・幼いころから付き合いのあった相手を亡くすというのは想像以上に厳しいのだろうね。しかも戦争で・・・・。それなのに私たちに親切にしてくれるって妙な感じだけど・・。」

「復讐は最初だけだったんじゃないですかね。それに大本にご自身でトドメさされてますし。」

「偶然とはいえ・・・セツ・サダ・セレナ・グレンデルトにね。あのババアは私にとっても仇だからなぁ。複製体は別人とはいえ、その残滓すら残したくないのが本音だよ。」

「広域宇宙警察があちらこちらでセツの複製体と複製体製造装置を摘発してますから・・・たぶん最後はソル星系が残るでしょうね。」

「うへぇ、元の職場だけど戻りたくない場所だね。」

「管理官学校を卒業してから、おそらくそっちがらみの任務に駆り出されるのではないかと予測してるのですけど・・。」

「木製コロニーとか土星ののコロニーとかあの辺のいけ好かない連中に思知らせてやりたい。けど・・・面倒なんだようなぁ・・・。」

「卒業後に上級士官学校に入るという選択肢もありますね。」

「それはパス。フリーの運送屋をしばらくは続けたい。」

「そういわれるとは思いましたよ。」

 会話しているうちに教室に教官がはいってきて今日の授業の説明を始めた。

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