第26話 非合法コロニー
天の川銀河南東域下底方面αセクター宙域・ブロマシー恒星系小惑星帯。
宙賊スペースアーツコロニー。
このコロニーは宙賊スペースアーツが所有する、アマテラス銀河連合的には非合法な居住コロニーだ。非合法な薬物から、奴隷、果ては禁止兵器までもが取引されている。
コロニーの商業区域は区画整理されたアマテラス銀河連合のコロニーの商業区と違って道が複雑に入り組み雑多な様子だが、活気に沸いていた。
ここでは複数の国家の通貨が使える店が多い。ただ、やはり一番使われているのはエネルギールート貨幣だ。
エネルギールート貨幣はアマテラス銀河連合の造幣局支局で発行されるエネルギー結晶体通貨だ。まとまった金額を宇宙ネットワークにつながれていない場所で決済する際に使われる。
それ自体もエネルギージェネレーターにつなげはエネルギーとしても使える。
エネルギーを直接やり取りしているようなものなので、宇宙を飛び回る宙賊にとってはありがたい通貨でもあった。
一番宙賊を狩っている国家の通貨が宙賊に一番使われているというのはすごい皮肉だ。
ここには宙賊以外や闇の商人以外にも鉱石バイヤーや、盗掘者たちも集まっている。
アマテラス銀河連合では鉱石の採掘には許可証がいる。許可証に書かれた範囲の宙域でしか採掘ができない決まりだ。
しかし、宇宙を飛び回って有力資源を掘り当てる山師達にとっては申請は面倒な作業である。ただアマテラス銀河連合は発見者の優先権を認めているが、先ごろまで天の川銀河で勢力を誇っていた自由通商圏同盟つまり、通商連合共和国の勢力下では、発見しても、上のほうの商会に横取りされるか、安く買いたたかれるのが落ちだった。
そのため山師のほとんどが天の川銀河では盗掘者として従事していることがほとんどだった。
そういった山師たちにとって鉱石を資金に変えられるこの手の非合法コロニーは生命線といってよかった。
ワンダラーズ商会もそういった非合法山師の商会のひとつで、このスペースアーツコロニーに店を構えていた。店の入り口から奥までカーボンナノファイバー製の箱に山のように鉱石が分別され値段がつけられている。むろん、ここにあるのは見本みたいなものだが、奥のほうにはブラックホールの影響下でしかとれないような重鉄鉱石や重炭素鉱石などの貴重な鉱石もおいてあった。
店は鉱石でごみごみしていて、一言でいえば汚らしい。
商会長のワイオン・テドラスは店の奥でディスプレイに出した電子新聞を読んでいた。
そこに一人の男性が店に入ってくる。
「おやっさん!今帰りました!!」
元気にそう叫んだ男性にワイオンは声がでかすぎると文句をいいつつ、結果を聞く。
「レアメタルの類がそこそこ・・・内情はこれです。」
バインダーに挟まれた電子ペーパーを男性は差し出す。
「ふん・・まあ、そこそこの稼ぎにはなったな。坊主の様子はどうだ?」
「しっかり仕事をしてまさぁ。チーフオペレーターに将来できるやもしれやせんね。」
「ならいいが・・・。ところでワッツお前、このニュースをどう思う?」
「ん?ニュースですか?」
ワッツにみえるように空中のディスプレイをワイオンは回転させる。それを眺めていたワッツが顔をしかめた。
「・・こいつぁ・・ちょっとまずいきがしやすぜ?」
ワイオンが予想外の反応だったのか若干不可思議な顔をした。
「わしはここにこもってばっかりだから、バンデットどもの状況はお前ほど知らんが・・・。」
「バンデットがどうこうという状況じゃないですぜ。アマテラス銀河連合の司法執行部隊ってのはほかの宇宙じゃ恐怖の代名詞みたいなもんでさ。目を付けられば、老人も子供の関係なく殺される。コロニーは砲撃で消滅させる。」
「殲滅兵器のジョカ対策の特務部隊というはなしだったが・・。」
おやっさん、ちょっと遮音スクリーンうごかしますぜとワッツは机の上に転がってたガジェットのひとつをさわる。
「あっしはアマテラス銀河連合のほうから流れてきた山師ですからね。ジョカっつうやつはやばい兵器なんすよ。」
ワッツが事細かにジョカに詳細について説明する。ワイオンはジョカが取り締まられる理由はわかったが、それがどう危険と結びつくのか疑問お顔だ。
「・・・いっちゃなんですが、通商連合傘下の連中が奴隷としてそういう不可逆な加工をした人類を売りさばいているのは主知の事実です。んで、それはここでも扱われている可能性が大きい。」
ワイオンはワッツがなぜ遮音スクリーンを立ち上げたか理解した。この界隈には通商連合共和国傘下の宙賊が結構いる。下手なことをいって目を付けられるのは避けたいところだ。
「さらに最悪なのは司法執行部隊というのはすべてAIによって運用されている。あるのは認可か死かどちらかで交渉ができやせん。」
「・・・・コロニーを捨てるべきか?」
「早いうちがいいとおもいやす。」
「わかった。若い連中には商売で外に行くから長いことかかるとだけ伝えろ。」
「行先にあては?」
「・・・アバーヌスのコロニーだ。前から取り引きがあるし、いまコロニーの再建中とかで資材運搬に紛れ込める。」
「わかりやした。すぐに準備にかかりやす。」
スペースアーツコロニーの構内ドッグで一人の少年が不平をたれていた。
「せっかく休みがとれるとおもったのに・・・・すぐにしゅっぱつだなんてさ・・。」
周りの大人たちは肩をすくめるばかりだ。
「おやっさんの決定だから仕方ないだろ?それよりレアメタルの積み込みは終わったのか?」
「とっくに換金率が高いレアメタルの積み込みはおわってます。しっかしこれだけのレアメタルを買うとか、おきゃさんはずいぶん御大尽なかたなんですね?」
「シロそういうな。今度行くコロニーは大都会らしいぞ?むこうで羽を伸ばせると思えばべつにかまわんだろ?」
「え~!」
そこにワイオンがやってきてげんこつをシロのあたまに落とした。
「ぴーぴーなくひまがあったらふねにさっさとのれ!」
シロがあたまを抑えて蹲る。
それをワイオンが首根っこの宇宙服を掴んで宇宙船へ放り込む。
シロのほうも投げられて、すぐに足で宇宙船の廊下の壁に着地する。
「おやっさんひでーよ!」
「うるさい!事情はせつめいしてやるから・・・さっさといくぞ!」
なんだよ急にといいつつシロも宇宙船のコックピット区画へ向かった。
「あそこがSAコロニーだけど・・。私の案内でよかったの?」
フェンラールの言葉に丈夫そうな服を着た男性が頷く。
「ああ。執行官閣下の紹介だから最初から疑ってはいない。」
「でも気を付けてくださいよ・・あそこのコロニーはよそ者に厳しいから・・・。」
男性は苦笑しながら頷く。大丈夫だ。うちのチームはそういうことに慣れていると返し、格納庫の小型船に乗り込む。小型船は民間船だが、一世代まえの作業船のようだった。
プリウム一世がいまいるのはスペースアーツコロニーから少し離れた小惑星の側で、小惑星に隠れるように船をよせていた。
開拓事業がひと段落したフェンラール達だったが、中央次元宇宙に戻ろうかと思って、あいさつに訪れたクラヌスで、直接イサにとある一団の民間コロニーへの案内を依頼されたのだ。
最初は乗り気でなかったが、どうもブラックマーケットの調査らしい。フェンラール自身は該当コロニーに寄るなとのことだったので、昔のあまりよろしくない知り合いに会う可能性がなくなり依頼を了承したのだった。
小型作業船が離れるのをみはからって、プリウム一世も動き出した。
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