第24話 文明を取り締まる立場の人々

 アマテラス銀河連合・中央次元中央宇宙・宇宙警察本星アーネリア・テラス。

 広域宇宙警察本部・ジョカ対策課3050大会議室。

 会議室には紺色の詰襟制服をきた男女が円周のような会議室にずらっと並んでいた。

「ウガタ課長、報告します。天の川銀河執行官イサ・ナギ・アマナギ・ヤゴコロオモイカネ第十二段管理官よりの報告でジョカの脳髄を利用した複製人格保存転写システムが少なくても七つの移動型ステーションで発見されたとのことです。」

 一人の女性の報告に、その場がどよめいた。

 一人の男性が思わず口に出す。

「ナガサキ係長、それは本当かね?だとすれば悪夢に等しい。」

「タナベ係長、残念ながら事実です。ミドルオールドスペースであるラングウェイ宇宙内においてある程度の拡散は予測されています。現時点では天の川銀河内に収まってはいますが・・。すでにジョカが問題のテネル銀河に密輸された事案でわかる通りジョカそのものの拡散がさらなる災害をもたらす可能性を秘めております。」

 そこで正面に座っている男性が手を上げる。その場が静まっていく。そしてゆっくりとその男性が立ち上がる。

「諸君、聞いての通りだ。この事態は統合次元宇宙全体に関わる重大事だ。我々広域宇宙警察は天の川銀河にジョカ殲滅自動化艦隊の投入を行う。事態は一刻の猶予もない。すでにイサ執行官からの許可は得ている。担当部署のものは行動にはいってくれ!」

 会議室の全員が椅子から立ち上がり敬礼とともに一斉に返事をかえした。

「「「はい!」」」

 そして会議室から慌ただしく出ていく。

 そんな中、ナガサキ係長と呼ばれていた女性が課長に近寄る。そしてみみうちをする。

「イサ執行官からはソル太陽系は除くようにとのことでしたが・・・・。」

「・・その件か。正直執行官が何を考えているかはわからん。一応星系処分の申請は出しておいたが・・・。おそらくけられるだろう。」

「やはり執行官の出身惑星だからですか?」

「・・・色々面倒な事実があるんだよ。すくなても執行官は時間的猶予が欲しいとは言っていた。・・・にもかかわらず監査局が星系処分にうしろむきなんだよなぁ。」

「監査局が?」

「どうも今回のヤマは裏切り者につながる可能性がある。わざわざ監査局がソル太陽系を泳がせておく理由はそれしかない。」

「しかしジョカの策源地のひとつでしょう?」

「完全ではないが星系の封鎖は行われている。それも軍によってな・・。わざと重力ネットワークトンネルの通行を許可している。」

「となると・・・・」

「このヤマの最大の相手は通商連合共和国と名乗る財閥組織だ。金の流れが不自然すぎるんだ。」

「エネルギールートの生産が可能な施設を抑えている可能性があると?」

「ああ。ただし、かなり昔の旧式貨幣だ。現代式貨幣はソル太陽系の文明居住区じゃ通用しなかったそうだ。となるとだ、旧式貨幣の生産可能な施設がセキュリティホールを抱えてて・・・・そのホールをジョカの脳髄を利用したブレインジェムによる光場演算システムでクラッキングをうけている可能性が高い。」

「となると・・・・・一番の可能性はソル太陽系の恒星太陽に複数ある移動型ステーション施設・・・・。」

「そこだけの生産量では奴らの経済規模を維持はできん。どこか別の恒星系の大規模施設がクラッキングで侵食されている可能性がある。金の流れを止めんことにはジョカの密造はとまらんよ。」

「なるほど・・。」

「・・予想以上に今回のヤマはでかい。足をすくわれんようにきをつけろ。」

「わかりました。」

 女性がでていくと課長であるイブスキ・タテワキはつぶやいた。

「遥かなるナロンギデア・・・・失われた故郷か・・・・。奴らどこまで腐ってやがるんだか・・・。イサの小僧も足をすくわれなきゃいいが。」

 イブスキは首を振ると籍を再びたち、居室のほうへ向かう。

「正直おれにとっては消し去りたい過去だが・・・。故郷を立て直すか・・・。どちらにせよあの腐りきった連中をどうにかしないとな。」





 天の川銀河中央星系惑星クラヌス。

 新管理官ビル、五階廊下。イサ歩いていると後ろからラキが走ってくる。そしてラキが非友好的なセリフをイサにいう。

「イサ先輩、強制司法執行艦隊の受け入れをしたって本当ですか?」

「したな。」

「現時点でそれをするってことは・・・受け入れた文明のいくつかが滅ぶ危険性がありますが?」 

 イサはため息をつく。

「・・・・仕方ないだろ。ジョカの脳髄を利用したブレインジェムによる精神体複製転写システムが発見された以上、放置はできない。」

「の割にはソル太陽系は除外したようですが?」

「あそこはめんどい・・・・・本当に面倒なんだよ。ラキ、ちょっと耳を貸せ。」

 ラキの耳元にイサが手を当てて何事かを言う。

「はぁ!マジですか!!」

「声がでかい・・・。監査局本局から情報が回ってきてるんだ。表向きは俺の個人的な理由ということにしとけ・・・・実際そういう理由もあるしな。」

「泥被るの好きですね~~。」

「やかましいわ!」

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