第6話 クラヌス攻防戦
天の川銀河・中央星域ラデマント方面α589宙域。
近くに赤色矮星が存在するこの場所で、天の川銀河諸国同盟艦隊は集結をはかっていた。近くの岩石惑星には橋頭保としての建造物が急速に作られ、いくつもの移動型コロニーが立ち並び、一種の活況を呈していた。
そのコロニーのなかでも一番巨大な葉巻型コロニーの会議室では喧々諤々の討論が行われていた。
それというのも先日のシリウス王国艦隊の救援に向かった先での撤退と、不確定ながら同盟の盟主を務めている通商連合共和国の首都である交易要塞コロニー『オリビ・アンテ』が壊滅した情報が齎されたからだ。
これにより盟主の権利がないとレンネンベート帝国を中心とした通商連合共和国ともともと対立していた王権連盟の諸国が主張。これに対して、通商連合共和国とシリウス王国を中心とした通商自由圏同盟諸国が猛反発。
同盟会議は紛糾し、方針を決定するどころの騒ぎではなくなった。
特使としてこの会議に参加していたアンネマリー・フェルラ・ヴァル・ラクール王女はその様子を見ながら沈思していた。
(そもそも戦力でアマテラス銀河連合に勝てるはずがない・・・・地方艦隊の一部を派遣しただけで36億隻以上この銀河を包囲している。対してこちらはせいぜいかき集めても4500万隻が関の山。補助艦含めても一億隻はいかない。科学的にこちらが優勢ならまだやりようがあるけど・・・・実際は一万年以上の技術の開きがある。どうあがいても無理よね。)
そこに隣でアンネマリーの補佐官をやっている女性貴族から声がかかる。
「・・・殿下?」
「・・ハクスエール伯爵夫人、なんでしょう?」
「沈思されているのはよいのですが、そろそろ決をとることになったようです。どちらの勢力に決を出しますか?」
(・・・どちらに出しても我が国に利がないのよね。前例踏襲なら王権連盟のほうだけど・・・。あそこを盟主にするとうちが矢面になるし・・・・お父様から一応許可はえてるしね・・。)
アンネマリーは隣のハクスエール伯爵夫人に耳うちをする。
そしてハクスエール伯爵夫人が緊急動議の発案を会議机のコマンドで発信。
議長役をやっているベートンワース商会の会主であるラドルン・ベートンワースが緊急動議発案があったことを宣言する。
「・・ええ!これよりラクール王国による発案内容を説明します。賛成国家のみでアマテラス銀河連合に和平を申請する・・・・・との案です。」
その場が一瞬静かになり、また騒ぎになる。
「裏切りだ!!」
「・・・あちらが和平を受け入れるわけがなかろう!」
「無謀すぎる!」
ヤジがとぶが、そこにアンネマリーは発言許可を議長に求め、議長が許可を出す。
「静粛に!静粛に!!これよりラクール王国の主張を伺います。」
アンネマリーが立ち上がると、声を出した。
「議長、発言の許可をありがとうございます。・・・・まずこの提案の理由をご説明すると、相手国であるアマテラス銀河連合との戦力差が艦艇数だけで36対1で我々が1であることです。また科学力についての評価を加味すると約2500対41となります。評価基準についてはシトラスの戦力評価基準2354号を用いています。」
そこに一人の男性が発言の許可を求めた様子だった。
「戦力差についてはそうだろう。だが、シトラス・クラヌスを落とせば、彼らはこれまで通り不干渉をとるのではないか?現にこの800年以上の間不干渉だったのだ。」
しかしアンネマリーはそれをすぐに否定する。
「そもそも不干渉だったのは、セツ・サダ・セレナ・グレンデルトによるアマテラス銀河連合による統治がつづいているとの偽装工作が行われ続けていて、それにアマテラス銀河連合が気づいてなかったからです。しかしながら、監査管理官が派遣され、偽装工作は露見しました。この状態で彼らにとって我々は叛乱勢力にすぎないことも露見したと同義です。」
男性がそれに対して、さらに反論する。
「それはいささか悲観論にすぎるのではないか?」
その言葉にアンネマリーは呆れる。こんな状況で事実の確認よりマウントをとることを相手は選んでいる。悲観論であろうが楽観論であろうがそれは問題の本質とは違う。議論のすり替えにすぎない。
「・・楽観論や悲観論の是非についてはいまの議論とは別問題ですので、それはまた次の機会にいたしまして、私としてはここで和平を申し込み、我々の国家の縮小解体すらも受け入れるのが、我々の治める国民への誠意であり責任と存じます。」
男性が声を上げる。
「誠意!誠意で国民がまとまるのか!!国を解体してしまえば我々がアマテラス銀河連合から独立してから築いてきたものがすべてなくなる。そんなことが認められると?」
「・・・そもそも独立が間違いだったと存じます。国民の最大限の幸福実現を考えるなら、独立は無駄な作業だったと言わざるを得ません。」
「だが、あなたの国も独立したのではないのか?それを否定すると?」
「残念ながら我が国が星間国家になったのは、シトラスの請求によるものです。我が国が求めて戦争で領土を増やしたなどと考えられるのには怒りを禁じえません。原因がセツ・サダ・セレナ・グレンデルにあるのですから!」
「馬鹿な!!」
その男性の声にアンネマリーは苦笑いだ。
「度重なるシトラスの請求がなければ、我が国はアマテラス銀河連合の保護国家として適法だったのです。」
アンネマリーはシトラスというよりセツ・サダ・セレナ・グレンデルの悪辣さにいまさらながらに気づく。矢面を他の国家に担わせつつ、その国家の対立国家をつくりバランスをとることで自分の独裁政治を維持していた。転生という技術を独占し、それにより各国家をコントロールする。
ラクールは対立軸のために星間国家にされたのだと確信した。
「・・なお、この決議が否決されても、それに賛成の方は5021会議室に会議後にお集まりください。我が国としてもこの天の川銀河の政治的混迷に終止符をうつ政策を真剣に考えております。以上、ラクール王国からの発言でした。」
またざわざわとするが議長が声を上げた。
「会議規則により、盟主を通商連合共和国が継続、盟主をレンネンベート帝国に交代、盟主をラクール王国に交代し和平を求めるの三択にて決をとりたいと思います。」
決の結果は通商連合共和国が継続に23カ国、レンエンベート帝国に交代が19カ国、ラクール王国に交代し和平を求めるが14カ国、棄権が5カ国となった。意外とラクール王国に票が入ったことにアンネマリーは内心驚いていた。
決議が終わった後、作戦策定となったが、基本的に主力をシトラスに向かわせる方向で決議は決まった。
会議終了後、アンネマリーは退席しようとしていると、レンネンベート帝国の特使であるヴェル・ウェルト・ヘイマン伯爵がやってきた。
面倒なはなしになるなと思った。
「王女殿下、何故ですか!あなたが緊急動議を出してなければ我が国が盟主になっていたのに!!」
ほらやっぱりと思った。しかし、反論は用意してあった。
「・・・戦後を考えると、勝とうが負けようが盟主は立場が不味いのですよ。勝ったとしても再出兵でアマテラス銀河連合はかならず盟主をさきに滅ぼしにくるでしょう。負ければいわずもがなでしょう。」
アンネマリーの言葉にヴェルは苦湯を飲んだような顔をした。
「・・それは・・。」
「われわれ王権連盟は戦後の身の振り方を考えねばなりません。いずれ保護国として認められても、王家は解体される日が来ます。それが連合規約に書かれていますからね。しかし、保護国としてみとめられていた場合とそうでない場合に国の扱いが変わります。いずれの事を考え、王権同盟の王族はアマテラス銀河連合の管理官学校を卒業すべきでしょう。保護国でない場合転生が行われない場合がほとんどです。今まで、シトラスに我々王侯貴族は献金を引き換えに転生処理を行ってもらってましたが、それが不可能になるのは確実です。」
「・・・転生処理のことを失念しておりました。敵対したままでは行われない・・・・・。国家運営に直接その件は響きますね。・・・・・・・言葉を翻すようですが我が国も和平派に入れて頂けませんか?」
アネンマリーはにっこりうなづいた。
「もちろんです。」
アマテラス銀河連合・中央次元中央星系・首都星『ミネアリア・テラス』官庁街内務省戸籍管理局。
第5088次元ミドルオールドスペース部スペースラングウェイ課天の川銀河係係員執務室。
「うえぇ・・・・・終わらないよう・・・・。」
係の職員たちが情報システムディスクに座りながら、政府用システムにアクセスしそこで思念により作業を行っていた。自己の精神体とシステム接続することで思考でシステムを動かしているのだ。
「もたもたしない。転生管理局に送る資料どんどんしあげるよ!」
「ネッソン係長・・・・うらみますよう・・・・。」
「何事言ってないでシステム動かす!」
泣き言を言っていた女性職員が声を上げる。
「あ~~~これ・・・監査局から調査指示があった例のコピー体の戸籍じゃないですか?」
「なぬ?こっちに送って!」
「了解。送りました。」
「ふむふむ・・・確かにこれだね。精神情報自体すでに抹消処分が下ってるから消すとして・・・。問題はこれ例の人間牧場の星系にコピー体が多くない?一人だけじゃないよ?」
女性職員どころかほかの男性職員たちも悲鳴を上げる。
「うぇ~!きょうも残業?ねぇ?係長?」
「俺はかみさんとデートのやくそくがぁ」
「私は旦那と結婚記念日なのよ!!」
係の職員の達の悲鳴をよそにシル・ネッソン係長は非情の一言を発する。
「みんなが残業すること向こうに連絡いれとくね。」
「係長!!鬼、悪魔!!」
その悲鳴の中ひとりの男性職員が口を開く。
「天の川銀河の旧保護国の扱いどうします?」
「そっちは保留かな。情報のかんじラクールとかこっちよりみたいだし。」
「了解。」
「敵対しているところはのきなみ精神体抹消だけどね。」
「転生が特権階級の特権化してますよね・・・これ。」
「一番ダメな転生管理のパターンだね。」
「政治的空白は発生しませんか?」
「それはすでに内務長官の裁可ずみだから大丈夫。」
「まぁ、今まで好き勝手やった連中がどうなろうとしったこっちゃないですけどね。転生局の転生のバーチャル空間にシリウス国王一行が現れて騒ぎになってましたけど・・・・。」
「あれは指名手配になってる宙賊の親玉だから抹消になったよ。」
「あっちの転生業務こっちに集約するってはなしありましたよね。正直勘弁してほしいんですけど・・・。」
「議会ではすでに可決目前だよ。転生業務を地方局から取り上げるってさ。今回の件はやっぱり深刻だよ。」
「ジョカでしたっけ?」
「転生者登録しようとするジョカ因子保因者がいてエラーで弾かれてる事がふえてるのよね。記憶を残すと肉体のジョカ因子がなくても破壊活動をすることが確認されてるからね。ジョカ対策課で対応してもらうしかないかな。」
「にしてもこの通商連合共和国とやらとシリウス王国は殺意多すぎですよ・・・・アマテラス銀河連合標準人類乙A型を標的にするようなジョカをつくるとか・・・・。」
「権力が星を超えると時々こういう勘違いした権力者が生まれるのは時の流れだよ。それが淘汰されたさきにうちの国もあるわけだしね。」
「そういや・・・イサ君がいまうちのところの三権のトップの執行官やってるけど・・・大丈夫かなぁ。」
シル係長は一瞬考えた素振りだったが、首を振る。
「まあ、ゼロからつくるのは得意だからね。ダメならライネールがならすんでないの?」
「中央官庁に務めているような管理官で文句言う馬鹿はいないでしょうけど、地方銀河の三段の十二等くらいのひくーい行政管理官あたりが文句つけてきそうで心配です。」
「そこはほら、階級差でごりおしでしょ。面倒ならくびきっちゃえばいいし。その権限は彼にはある。」
「あいつにそれができるかなぁ。」
「やらなきゃ仕事にならないわよ。さぁ、おいこみおいこみ!」
こうしてミネアリア・テラス官庁街は日が暮れていった。
天の川銀河歴10459年二月四日、この日、天の川銀河中央星系クラヌスの恒星であるラートリオンとやや離れた場所の銀河中央ブラックホール方面から多数の天の川銀河諸国同盟の軍用艦船が現れた。セツの政変から一年弱でこのような戦争になるとは天の川銀河のほとんどの者は考えてなかった。
ラートリオン方面から1270万隻余り、ブラックホール方面から約2000万隻余り。
威容をほこる軍艦たちだったが、すでに恒星までの重力トンネルで出現した軍艦たちは足止めを余儀なくされていた。
それというのも進行方向に多数の防衛要塞の布陣がなされており、それ以外の場所にいこうにも恒星の周りには多数の移動機雷が設置されていた。
一方、外縁部から侵入した艦隊は外側の外縁惑星の攻略に入るべく降下艇をすでに準備していた。
そのころのイサは地下指令所で状況を眺めつつ、せっかく手に入れた要塞砲をどのタイミングでうつか、精密な演算を繰り返していた。
「・・やはり、外縁部の数が多いほうに打ち込むべきだな。」
後輩のラナンが肩をすくめてた。
「はいはい・・・おすきにどうぞ。ライネール先輩はイサ先輩に甘すぎる気がする・・・・・。」
それを聞き流しながら、演算結果が出て、作戦を各部にイサは伝えた。
正面のモニターには外縁部に現れた艦隊が主に貿易自由圏同盟の艦船であることが解析から表示されていた。
一方足止めをうけている恒星系からの艦隊はラクール王国ら王権連盟の艦船であることが分かった。そして王権連盟からは和平の申し込み、それも国家の分割や再保護国化のロードマップの提示すらされていた。そのうえ、王権連盟としてはアマテラス銀河連合にこの和平案を受け入れてもらえるなら、保護国として叛徒と戦う用意があるとまで述べていた。
「さてどうしたもんかな?とりあえずこの特使代表であるアンネマリー・ラクール王女殿下とやらのところへ連絡艇をだすか・・・・。こっちにきてもらわんことには話し合いのしようもないからな。」
そして三時間後、アンネマリーは地下シェルターの会議室の一つでイサと顔を合わせていた。
「この度は、我々と交渉をして頂いて誠に有難うございます。この季節・・・」
アンネマリーは雑談に入ろうとしたがイサがとめる。
「・・・失礼だが王女、我々には時間がない。」
イサはあえて殿下の称号を付けなかった。アマテラス銀河連合では基本的に保護国の王族であっても敬称を付けない決まりだからだ。
「わかりました。イサ・ナギ・ヤゴコロオモイカネ管理官閣下。」
それから建設的な意見交換ができたとイサは思う。王政の星間国家をソフトランディングで解体して保護国として最大限の一星系国家に落とし込み、そのほかを銀河連合の直接統治領域にするという方向性できまった。
この時点で恒星系に現れた艦隊1300万隻は撤退することに決まった。
ただし総特使のアンネマリー王女やヴェル伯爵ら一部の特使はそのまま外交官として留まることになった。
一方、和平派の戦線離脱をうけて、通商自由圏同盟艦隊の幕僚部は裏切り行為に気炎をあげ、戦勝後に裏切った国家を滅ぼしてやるとまでいう始末だった。
そしてアマテラス銀河連合と天の川銀河諸国同盟は互いに降伏勧告を出して、天の川銀河歴10459年2月11日未明、外縁惑星カナタスへの天の川銀河諸国同盟の強襲降下から先端が開かれた。
天の川銀河諸国同盟は強襲降下をはかったが、そこにはエネルギー位相変換で姿を隠していた二十四の防衛惑星が配置しており、その戦いは一方的だった。
惑星軌道上よりうえのあたりに半重力フィールドシールドが張られ、天の川銀河諸国同盟の侵入も攻撃もそらされ、その上一方的に砲撃をくらえられた。
二時間くらいで相手の強襲降下艦や強襲降下艇の三割が壊滅していた。
この時点で天の川銀河諸国同盟軍による外縁惑星の前線基地化は見送られることとなり、クラヌスへの全力攻撃に切り替えられた。
イサはその様子を見てニヤリと笑っていた。ついに待ちに待ったロマン砲が撃てるからだ。
「先輩、ロマン砲のことなんですが・・・なんでエネルギー充填式にしたんですか?そこまでエネルギーぶっこむ必要性はないはずですが・・・・・。おまけに待ち時間三分とかありえない量のエネルギーだし・・・・・。」
ラナンが心配そうだがイサはとりあわない。
「エネルギー分配は大丈夫だ。破壊領域外を破壊しないように防御フィールドにほとんどつっこむ。エネルギー充填はロマン砲の華だろ?」
「私にはわかりませんよ。わざわざ0.2~0.3秒で打てるような攻撃を時間をかけるなんて・・。」
「それじゃいってみるか!要塞砲要塞AIネールセン聞こえるか?」
『感度良好、ネールセンではなくニールセンです。』
「砲弾種は水、エネルギー充填を開始。」
『アイアイ!充填コンデンサーにエネルギー充填を開始します。各防御衛星のリンク良好、エネルギー分配開始。カウント始めます180、179、178、』
「標的は敵艦隊中央・通商連合共和国総旗艦レインヘイナス。」
『・・25、24』
イサは各地の防御衛星の状況をモニタしつつカウントを聞いていた。
『3,2,1、0、エネルギー充填完了!!』
イサは右手を挙げて前におろしながら叫ぶ。
「撃て!」
『発射!!』
画面が一面白くなる。宇宙ではいっきに殺到してくる光の塊にだれもが茫然としていた。
「星系統括AIノーラ、敵艦隊状況とこちらの被害の報告を!」
イサの言葉に星系統括AIのノーラが表示された女性の顔がややひきつった様子で答える。
『・・・て・敵艦隊の約8割が消滅。残る二割も何らかの障害を発生させてる模様。こちらはいくつかの防衛要塞がやや負荷が大きかったようですが、回路に不都合はないようです。失礼ながら・・・・これは砲というより領域破壊兵器ですね。聖域とでも名付けてはいかがですか?』
その声にイサは渋い顔だ。
「攻撃が直撃してない場所まで破壊しちゃってるなぁ・・。敵の艦隊に大穴あけて、これは使うものではないなとかいってみたかったのだけど・・・・。ここまでなると冗談をいう空気じゃないね。」
ラナンがあきれ顔だ。
「そりゃあれだけエネルギーぶっこめば衝突したときに核融合おこすだろうし、それが連鎖していくのも当然ですよ。やりたいことをするなら・・・もっと砲を弱くしないとだめですね。」
クラヌスの管理官ビルシェルター、会議室。
「・・・・筆舌に難いですね。」
「あれが我々にむいていたかと思うと・・・。」
アンネマリー王女とヴェル伯爵は部下とともに茫然としていた。伯爵が部屋の中にいたアマテラス銀河連合の係官に口を開く。
「今回の攻撃の多面的な映像情報や数値的な分析情報は頂けるだろうか?もし頂けるならそれを本国に持ち帰って説得材料にしたいのだが・・。」
「少々お待ちください。」
係官がシステムに接続して交渉をはじめたようだ。三分ほどして、
「許可がおりました。イサ執行官から直接もらえるそうです。記憶媒体はお持ちですか?なければご用意します。」
ヴェルが付け加えて要求を出した。
「できればそちらの記憶媒体や再生器具も用立ててほしい。」
「それは構いませんが、市販用のものになりますがよろしいですか?」
「ああ・・構わない。」
係官が用意するように連絡している間、特使団の面々は口数が少な目だった。
シェルター指令所ではイサが残存の天の川銀河諸国同盟の艦艇からの降伏申請と救助依頼の対処に追われていた。
天の川銀河・中央星域ラデマント方面α589宙域。
天の川銀河諸国同盟駐屯基地。
「・・・艦隊が全滅・・・・。」
「ああ・・・・お仕舞いだぁ・・・。俺たちの国は終わりだ・・・・。」
基地のあちらこちらで悲観的な声か聞こえた。それを横目でみながら一人の男性が歩いていた。
「ふん!なにがお仕舞いだ!ここからが勝負どころだろ!!」
それを聞きとがめたのか一人の士官らしき女性が食って掛かった。
「これから勝負だって?王権同盟やその周辺の連中はあちらについてしまったし、いまさら勝負になるものかね?」
男はそれを鼻で笑った。
「わかってねぇなぁ。王権同盟が向こうについたてことはだ、アマテラス銀河連合の連中はそいつらを守る必要がでてくるわけだ?意味わかるか?アマテラス銀河連合を相手にできなくても旧シトラス統治下の国と科学力にそんなに差はねぇ。つまりそいつらを標的にすればいいんだ!」
そこにさらに別の男性が加わった。
「それはいいとして艦隊をどうやって再建する?交易都市はおとされて、対岸域の宇宙にはいけなくなっている。実質うちらの領域は南方の下方領域だけだ。それに本国のほうに艦隊が差し向けられて軒並み首都惑星が壊滅しているという情報が届いている。ま、国王が死んだあんたのところが喚いたところで何か変わるか?」
言われた男性は顔を赤くした。相手の男性に殴りかかる!
「いわせておけば!!」
しかし、相手の男性もさすがのことながら首を横に倒してよけると、膝蹴りを相手に入れた。ぐほっという声を出してシリウス王国の男性が蹲る。
「その程度か・・・・口先だけの奴が!」
男性はシリウス王国の男性に唾を吐きかけるとそのばから歩いて離れていった。
シリウス王国の男性は、
「まて!てめぇは死ね!!」
そういってレーザーガンを取り出すと男性にうとうとした。
しかし、シリウス王国の男性にさっきの女性が体当たりをして銃を手元から落とした。シリウス王国の男性が女性の長い髪をにぎって引っ張る。
「このくそアマがぁ!!」
しかし、さっきの男性がもどってきて、シリウス王国の男性の顔に蹴りをはなった。シリウス王国の男性がふっとび、女性の髪の毛をはなす。
「・・・銃を構えるまでしたんだ。宇宙のおきてを知らんわけではないだろう?」
そういって落ちていたレーザーガンを拾い上げてシリウス王国の男性に容赦なくうちはなった。額にレーザーが命中しシリウス王国の男性は即死した。
「さてと、後始末が多変だな。」
そう男性が息を吐いた。
「同盟に参加したのは間違いだったな・・・。」
「・・・大丈夫ですか?」
女性の声に男性はうなずいた。
「・・名乗り遅れたがテーベス王国皇太子のマーク・トレンダー・テーベスだ。」
「わ、わたしはユリアナ共和国の外交官のテイニー・ラビットソンズです。」
「通商自由圏同盟のかたか・・・・。うちは非同盟諸国のひとつだからあんまりなじみがないかもしれないな。」
「うちの本国は昨日の時点でアマテラス銀河連合に併合されてます。だから身の振り方を考えなくてはいけなくて・・・。」
マークは頭をかいた。
「ま、その辺はうちも似たようなもんだ。まだ併合はされてないがすでに占領済みだ。いまのところここに物資は豊富だが・・・・・いつかは枯渇する。要はどこに逃げるかだな・・・。」
「わたしとしてはアマテラス銀河連合に行こうかなと・・・・幸いここからクラヌスへ飛べる赤色矮星がありますし・・・。ただうちの残ってる船は小型船なんですよね。」
「小型船でいくのはきつそうだが・・。賊になって暴れてるやつはまだいないからいまのうちにうちの船でクラヌスへいかないか?」
「・・・・よろしいのですか?」
「ああ。どの道、親父からアマテラス銀河連合中央次元にむかえって指示だしされてるんだ。」
「それではお願いします。私のほかに三名同僚の女性がいますが、よろしいですか?」
「ああ、かまわないさ。」
二人はそういうとそこから廊下を歩いていった。
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