水を抱く / 石田衣良
石田衣良さんの小説を読んでみたかったので表紙がきれいだった本を選んだらこの小説で、読んでみました。(ちなみにハードカバーの表紙を手掛けたのは蛯川実花さんだそうです。とっても素敵ですよね)
途中まで読んでいたら官能的で生々しい描写があるのですが、最後のほうまで読むと切なくて儚くて素敵な小説だなと思いました。「官能小説読みたいわけじゃないんだからこんなに性描写あると無理」と思って読むのをやめたりせず、最後まで読んでほしい一冊だと思いました。
高校生の私には少し早かったかもしれませんが、損をした気持ちになることは一つもありません。少しだけ背伸びをして大人になったような気持ちでこのレビューを書いています。石田衣良さんの小説は私を大人にしてくれる気がしています。
「かわいい子なら、ボーイフレンドがいるのはあたりまえでしょう。もう二十歳をすぎてるんだしさ。でも最近のアイドルや声優のファンって、処女じゃなきゃ絶対に許さないって感じだから。勝手に清純イメージを押しつけて、誰かとつきあったとか、恋人がいたというだけで、猛烈なバッシングをして相手を葬り去ってしまう。草食男子っていったん攻撃的になると、ほんと恐ろしいよね。なんかそういうの苦手だなぁ」というヒロインの言葉があるのですが、欲望のままに生きようとしていたナギの性格が現れていてとても好きでした。
この小説の登場人物はナギが一番すきです。明るくてどこか妖艶で、大人びていて…しかし本当は寂しいし、切なく、辛い。人間には誰にでも二面性があるのだということを教えてくれます。
しかし今にもどこかへ行ってしまいそうなナギをずっと想っている主人公の俊也も素敵な男性だと、私は思います。傷だらけの自分さえ受け入れてくれる人ってきっとそんなにいないと思いますし、一途なところも素敵ですよね。
小説というのは読めば読むほど他人の人生から知識を得たように成長していくような気がしています。石田衣良さんの小説はまだ高校生の未熟な私を、一歩だけ大人の妖艶でディープな(飲み物で例えると赤ワインのようなイメージ)世界へ連れて行ってくれたような感覚になりました。
2019.4.29.
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