斜陽 / 太宰治

 太宰治さんの人生についてなんとなく調べていたら「近所で噂になるほど豆腐を食べていた」とか「芥川龍之介が好きすぎてノートに芥川龍之介とたくさん書いていた」というエピソードがあり、気になったので図書館にあった太宰の本のなかで一番読みやすそうだったのを借りました。

正直昔の小説って言葉遣いが古くて入りにくいから苦手だったんですが、この「斜陽」は最初から最後まで入り込みながら読むことが出来ました。嬉しい!


 まず16ページにある「悪漢は長生きする。綺麗なひとは早く死ぬ。お母さまは、お綺麗だ。けれども、長生きしてもらいたい。私はすこぶるまごついた。『意地悪ね!』と言ったら、下唇がぷるぷる震えて来て、涙が眼からあふれて落ちた。」という文章にとっても優しい気持ちになりました。

太宰治自身が真面目で純粋で優しい人だったのかなと思いました。


 それから31ページで東京から田舎に越してきて「『空気のせいかしら。陽の光が、まるで東京と違うじゃないの。光線が絹ごしされているみたい。』と私は、はしゃいで言った。」という言葉遣いにとっても魅力を感じました。

光線が絹ごしされている、なんて普通の感性じゃ言葉に表せない気がします。


 あと、202ページに「姉さんは美しく(僕は美しい母と姉を誇りにしていました)」という文章があるんですが、どんなに麻薬中毒になったり女遊びをしてみたり酒に入り浸ったりしても本当は家族を誇っていた弟の愛にすごく感動しました。


 太宰治は自分が生まれるずっと前の時代の文豪なのに、小説を通すとなんだか近くに感じる気がします。

百人一首などもそうですが、千年前や百年前の時代の気持ちが言葉になって今、高校生として生きている自分のもとに届いてるって考えるとすごく素敵で、その間に戦争とか天皇が交代されたり時代がどんどん変わっていっても誰かが誰かに恋をしたり、「自分はなんで今生きているんだろう」って考えたりすることは同じなんだって考えると嬉しくなります。

 本当に、小説って素敵だなぁと思いました。


2019.4.16.

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