ときめき小説愛好記録
鞘村ちえ
高校生からの愛好記録
重力ピエロ / 伊坂幸太郎
以前友人にこの本をプレゼントで貰ったのですが、なかなか読む機会をつくっていなくてやっと読めました。
軽い気持ちで読み始めたらこの本が扱っている題材の重さに押しつぶされそうになったので、一回閉じてもう一度気持ちを整えて読みました。
家族の抱えた辛い過去がところどころ回想されるシーンなどとても自然に読めて、「え、いま回想?リアルタイム?」みたいな混乱が起こらなくてとても読みやすかったです。
強姦や放火・殺人などの犯罪が多く出てくるので高校生以上になってから読むのがいいかもしれません、重くて難しいことだと思います。
きっと大人になっても犯罪に対する完全な答えみたいなものは出ないんですけど、この小説は読むのに適した年齢があると思いました。小学6年生の妹にこの小説をおすすめすることは無いでしょう、きっと私は宗田理さんの「ぼくらの七日間戦争」あたりをおすすめします。小説にはそれぞれターゲットとされている年齢があると思うのですが、この小説はかなり大人かもしくは高校生や大学生などの若い世代かなと思いました。
私はいま高校2年生ですが、この小説を読んでとても面白いなと思ってしまったことに少し悩んでいます。こんなに重い題材を扱っている小説を読んで面白いと思ってしまうんだな、それが小説なんだなと思っています。
幼稚園生にしてとても高級な寿司屋の寿司を美味しいと思ってしまうような感覚というか、でもそれとはまた違っていて…私のいまの語彙力ではこの感覚を言葉にして伝えることが難しいです。
私は伊坂幸太郎さんの本を読むのは本作が初めてだったのですが次は「ゴールデンスランバー」を読みたいなと思っています。
そうだ、私はこの「重力ピエロ」という小説を自分に子供が出来たら再読したいなと思いました。春を産んだ母親の気持ちや、自分が癌になったときに子供たちにどう向かうかなど、実際に大人にならないとわからないことが多いからです。
伊坂さんの匠な言葉遣いで人生経験の少ない私でも内容をつかむことは出来ましたが、気持ちを更に汲み取ったらまた違う一面が見えると思うからです。
この小説に出てくる春はとても大人だなと思いました。こんなに自分のことを達観している人はなかなかいない気がします。犯罪者にはなりたくないですが、春のように自分のことを客観視できるようになりたいと思いました。
しかしこの小説の語り手は「私」である兄の泉水なので、こんなに弟のことを素敵に想える泉水のほうが魅力があるのかもしれません。春のしたことは悪いことである一方、この小説の読了後にあまり嫌な気持ちが残らないことが凄く特徴的だなと思いながらこのレビューを書いています。
2019.4.6.
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