???

幕間




いつか遥か昔の____どこか遠い所に_______とある少女がいた。


ボロボロのマントを羽織った彼女が立っているのは、同じようにボロボロな家の前。


そして、彼女はその手でドアを小さく叩いた。


「あの…」


彼女はマントを引き上げ、顔を隠すようにして言った。


「……ご飯を…ご飯を、少しだけ…分けてもらえないでしょうか…」


だが、開いた扉から現れたのは、拳だった。


「バケモンは出て行け!

お前みたいなバケモンにやる飯はない!」


住人の怒号に、彼女は逃げ出した。


殴られた頬の痛みを堪えながら……彼女は隣の家のドアを叩く。


何度も、何度も。


殴られ、蹴られ、貶され________


やっとのことで手に入れた食べ物は、わずかな米と、野菜の端切れ______それは丸で、残飯のようだった。


だが、彼女は大事そうにそれを抱えて歩く。


まるで、それが煌びやかな御馳走であるかのように。


白い裸足を傷つけながら進んだ森の先にあったのは、洞窟。


「ただいま、ご飯もらえたよ!」


彼女は満面の笑みで中の少年に呼びかけた。


少年は、パッと彼女に駆け寄る。


_____彼らの目は、他と違う。


彼らの存在は、他と違う。


それでも二人は、互いにこの世界での唯一の理解者だった。


「おかえり、お姉ちゃん!」


彼は、笑って彼女を迎える。


そして、その笑顔は少女も笑顔にして見せた。


少女は、少年の____弟の名を呼んだ。


「一緒に食べよ、夜咲ヨザキ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る