第27話 さよなら、故郷。ただいま、マイホーム
「じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
ゴールデンウィークも終わりが近づき、俺と叶は今日家に帰る。結局、両親は仕事が長引いたので来ることが出来ず、いまさっき電話で少し祖父母と話していたらしい。玄関まで迎えに来てくれた祖父母は笑っているが少し寂しそうだ。ちなみに白川さんはというと、仕事のため昨日の夜に出発し、もうここにはいないのだとか。あの人のことだから出発する前に俺に何か言いに行こうとしたけどそうする前に、マネージャーさんに捕らえられたのだろう。
「じゃ、ばいばい。また時間があったら顔出すよ」
そう言うと、叶も隣でコクリ、と頷いた。「また来る」という言葉が少し嬉しかったのか、祖母は顔をほころばせる。祖父も俺と叶の頭をガシガシと撫でてくれた。その手の皮膚は、長年色んなことをしてきたせいで固くなっておりちょっとだけ痛かった。
結局バス停まで送ってくれた。バスが出発する時、2人を悲しませないように俺は窓から少し顔を出して、滅茶苦茶に笑って手をブンブン振って別れを告げた。その様子に2人とも笑顔になる。
姿も見えなくなり、俺が窓から顔を戻すと、叶が俺を見ていることに気がつく。
「律、祖父母孝行だね」
親孝行って言葉は聞いたことあるが、祖父母孝行という言葉は初めて聞いた。
「でも、いつもこうして別れるからなぁ。別に孝行って言う程じゃ」
「おじいちゃんもおばあちゃんも、2人とも嬉しそうだった。だから、十分孝行してる」
「そうかな」
「うん」
そういうやいなや、彼女は俺の頭をよしよしと撫でる。
「えっ……何を?」
「お姉ちゃんが、律を褒めてあげる」
…………???
なでなで
「ナニヲシテルノ?」
「りっちゃんはお姉さんキャラでやればイチコロだって、千栞が言ってた」
「一体何を吹き込んでんだあいつは……」
というか、ライバルなのに何を結託してるんだ。お姉さんキャラ……意外と悪くなゲフンゲフン!
────────────────────
「ただいまー」
スーツケース片手に家の扉をガチャりと開く。まだ5月とはいえ日差しが少し厳しい。うっすらと書いた汗をかいた額を手の甲で拭いながら家の中に入る。リビングから冷房の冷たい風が俺たちを包み込んだ。
「おう、律。叶ちゃんもおかえり」
珍しく父さんが家にいたようで、リビングから出てきて俺たちを迎えてくれた。だが、スーツを着ている。
「仕事?」
「ああ。今日は本当は休みだったんだけどな。急に会社から呼び出されてしまった。悪いけど、夕飯はこのお金でどこかに食べに行って来なさい」
お父さんはそう言うと財布から3000円を渡してきた。夕飯代にしては気持ち多い気が……まぁ多く持っておくには越したことはないのでありがたく受け取っておく。
「じゃあ、父さん行ってくるからな」
「「行ってらっしゃい」」
………ガチャリ
コツ、コツと玄関前の階段を降りていく音が段々と遠ざかって行ったのを確認すると、俺は肩をすくめる。
「仕事で忙しいのもわかるけど、たまにはゆっくり話したいものだな」
「……うん」
叶も同意見のようで、微妙に表情を暗くする。
「まぁ、なんだ。ちょっと遅い昼ご飯でも、食べますか」
「うん」
そんな会話をしながら、俺たちはリビングに戻る。そしてドアを開けると。
「~~♪」
ジュージューとキッチンで何かをしている、見覚えのある背中が視界に入る。
「あっ、りっちゃんに叶さん!」
昨日の夜……先に去ったはずの、もう会うことはないと思っていた……白河さんだった。
「なんで
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