第26話 彼女の料理は……

「う、うーん……」


「あ、良かった気がついた!」


 一瞬何が起こったかわからず、周りを見る。どうやら俺は寝室で布団に入っているようだ。叶も同じように寝かされている。


「一体、何が……」


「だ、大丈夫?フレンチトーストを食べた途端に顔が真っ青になって、2人とも気絶しちゃったんだよ」


 そう言われた途端、一気に記憶が蘇ってくる。


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 パクリ。


「「んぐぅ!!!???」」


 あ、ちょ待って何この味やばい。あ、甘い、いや辛い!?待って苦味も混じってヘドロみたいな異臭そしてその後にガツンとくるこのガリッとした食感に加えて冷たさが押し寄せて……!!!??


 あ、これ死んだわ。


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「あー、思い出した」


 今もちょっと頭が痛い。あの味は本当にこの世のものとは思えない。頭を擦りながら布団から出る。だが立った時に少しふらついてしまって、慌てて白川さんに支えられる。


「あ、あのさ……いつもあれ、作ってるの?」


 恐る恐る聞いてみた。多分あんなの作ってたら家族とかマネージャーさんとか何回かは絶対に死んでいる。


「いや、フレンチトーストは初めて作ったんだ。りっちゃんに食べて貰えると思ったら張り切っちゃって、色んなもの入れたんだ」


 そこはいつも作ってるやつが良かったなあ……。と、そんな切実な願いは彼女に届くはずもなく、俺はただただため息をつくだけになった。ちなみに叶の方はというと、まだうなされていた。うーん、うーん、と苦しそうな表情を浮かべている。可哀想に。俺は水で濡れたタオルを持ってきてやると額に浮かんでいる汗を優しく拭ってやる。


「私の料理……どうだったかな?」


 白川さんが恐る恐るといった様子で聞いてきた。まずいと言ってやろうか、大声で。まあでもそんなド直球に言ってはさすがに人間性のモラルが問われてしまうので、代わりに遠回しに伝えることにした。


「珍味で少なくともこの世で食べられる代物ではなかったよ、とだけ言っておく」


「そ、そっか……あはは、なんかごめんね」


 て、待って。おばあちゃんは大丈夫だったのか?慌ててリビングに様子を見に行くと、緑茶を飲みながら祖父とほっこり談笑していた。おじいちゃん、起きてたのね。


「お、おばあちゃん?体とか大丈夫?」


 そう尋ねると、おばあちゃんは優しい笑みを浮かべた。大丈夫ってことだろう。どことなく強者の波動を感じた。長年生きていると慣れるものなのか……(※慣れません)


 次の日、朝起きた俺は体がすごく軽かった。どうやら彼女の料理は漢方として使えるみたいである。……普通の漢方の方がいいな、うん。




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