第21話 アイドル、現る♡
「りっちゃん大丈夫!?熱はもう大丈夫なの!?久しぶりに会えると思ってワクワクしてたのに急に熱出したって言うから私心配で心配で……!」
ものすごい至近距離で謎の少女が早口にそう言う。しかも叶よりも大きいであろうたわわなそれが押し付けられながら。
「待って、待って1回離れて……!」
これあれだから!多分こんなシチュエーションになったらお約束であれがきちゃうから!
「律、どうしたの大きい声が聞こえたけ……ど……」
居間からヒョコッと顔をのぞかせた叶は、顔を凍りつかせた。……やばい。見事に速攻でお約束フラグが回収されてしまった。
「あなたは……誰!いきなり来たと思えば律に抱きついて……!」
顔をしかめながらこっちに近づく叶。
「え?えっと……」
「とにかく離れてっ!」
「ええ!?わっ……ちょちょちょ!」
叶に無理やり引き剥がされるようにして、少女は俺から離れた。
それと同時に叶が俺と少女の間に割って入る。
「律は病み上がりだから、いきなり訳の分からない行動をしないで」
「あっ……そうだよ、ね。私、久しぶりにりっちゃんと会えて嬉しくてつい……」
その言葉に叶はピクリ、と眉を顰める。
「えっと……さっき、小さい頃いっぱい一緒に遊んだって言ってたけど」
今の言葉は語弊かもしれないが、一応現恋人の叶にとっては不快なものかもしれない。
俺は慌てて話題を振る。
「うん、遊んだよ?」
え待って全然覚えてないんだが。
……いつだ?俺の近所?いやだったらここにはいないはず……ということはここら辺に住んでいるのか?と、そこにおじいちゃんがやってくる。
「おお、
「はい、最近は風邪ひいてないです!おかげで歌の仕事の方も順調です!あ、あとその名前は芸名の方です」
「千栞……歌の仕事……?なんかどこかで聞いたことあるような……」
しばしの沈黙。
「もしかして……前にいろはが話してたあのミリオンヒットを記録した
「白柳千栞」……!?」(※第3話参照)
驚きながらも改めて顔を見てみる。
「た、確かに言われてみれば……似てる気が、する」
でも、それでもなんで人気アイドル(?)がこんなところに?俺の疑問は増えるばかりだった。
「思い出して欲しかったのは別のところなんだけど……。まぁ、いいや!もう覚えてないみたいだから言うけど、私の本名は「
「いやだから急にんなこと言われても……それで思い出したら苦労しないぞ」
「ええ何でよ!思い出してよ!あ、ちょっと待っててね。頭叩けば思い出すかも!」
「おい待て玄関のそばにある薪を持つなそして俺に向けるな!」
「えーでも思い出すには強い刺激が必要だっていつしか番組で言ってたもん!」
「うん精神的な話だろ!?物理的にやるわけじゃないからね!?」
「ものは試しに、って言うからさ!」
「嫌だよ試したくねぇよ!とりあえずお前は帰れ!」
「ひ、ひどいよ!私泣いちゃうよ!?心の中涙でいっぱい!」
「俺は恐怖で心がいっぱいなんだよ!」
「あ、ちょっと、まっ……!ね、ねぇりっちゃん!」
パタン、ガチャリ。
「あー、りっちゃんが鍵かけた!私ただお見舞いに来ただけなのにぃ!」
白川(さんってつけた方がいいのかなこれ)はバンバン扉を叩く。
「律……アイドルって……怖い」
そして叶はというと、ちょっとズレた誤解をしてしまうのであった。
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